五悠ワンドロ
ここ最近、朝と夜はとてもよく冷える。だからというわけではないのだけれど、虎杖が五条の部屋で、更に言うならば五条のベッドの上でぴたりとくっついてくれる、という状況が多く見られるようになった。付き合い始めてからしばらく経つ。付き合う前から距離感がバグっているとはよく言われたものだけれど、関係性が変わってから照れて少し距離を置かれたことも今となっては可愛らしい笑い話。心の整理がついたらしい虎杖が自ら手を伸ばしてくれるようになってから、ほんの少しだけ、以前よりも多く、長く触れ合うようになった。
子ども体温だ、と言うと怒るのだが、眠っている虎杖は特に温かい。本当は早く起きた者の責務として朝食の準備でもしてやれば良いのだろうけれど、どうしたって離れ難いので何をするわけでもなくくっついたまま微睡んでいることが多い。軽く頬を突くくらいでは起きてこないことは学習済みなので、突いてみたり、撫でてみたりとやりたい放題である。ごく稀に宿儺がうんざりとした眼差しを向けてくるのだけれど、知ったことではない。お前は一生眠っておけ。
今日の天気予報は、昨日の時点では曇り時々雨だった。潔く雨が降ってくれたらまだ諦めがつくのだが、中途半端はやめて欲しいといつも思う。耳を澄ませても雨音はしないが、カーテン越しの空はどうも暗そうだ。おとなしく室内でゆったりと過ごすか、降ったならばそれも楽しむつもりで観光に繰り出すか。
「ゆーじはどっちがいい?」
何の夢を見ているのやら、眉間に寄った皺を伸ばすように指先でそこをなぞる。答えを求めるわけでもなく、ただ話しかけたくて問いかけてみるとタイミングよく唸り声をあげられたものだから小さく笑う。覚醒が近いのだろう。これは家でのんびりコースか、元気に外出コースか。
昨日は任務のせいで遅かったし、ゆっくりと眠らせてあげたい。ただ、虎杖はせっかくの休日を眠って過ごすことがもったいないと考えるタイプなのだ。他人には「疲れているだろうから休んでていいよ」と言うくせに、自分に対してそれをされると口を尖らせる。「そういう気遣いは嬉しいけど、どうせなら起きて一緒にいる時間を楽しみたかった」なんて言葉に貫かれてしまってからは、ある程度の時間になったら起こすようにしている。ただし、今はまだ勝手に定めたデッドラインに到達していない。つまり、虎杖が自力で起き出してこない限りは存分にその寝顔を楽しんでいたって文句は言われないのである。言わせない、の方が正しいか。流石に寝かしつけるような動きをすれば怒られるのだろうけれど、朝は寒かろうと布団を肩まで掛け直し、ぴたりとくっついてその表情を眺めながら動きを止める程度であれば問題あるまい。
んんん、と小さく唸った虎杖の眉間から皺が消える。カウントダウン、さん、に、いち。
「……せんせ?」
「おはよ。まだ寝てていいよ」
ゆっくりと瞼を上げた虎杖は弱々しい朝日から逃れるように布団へと潜り込みながら、未だよく頭が回っていないらしく言葉になりきらない声を上げている。
「こらこら、それじゃ窒息しちゃうでしょ。こっちおいで」
布団に潜り込んだまま丸くなろうとした虎杖の肩に腕を回し、五条はぐいと自身へと引き寄せる。胸元に頭がくるように、虎杖が眩しくないようにと体勢を整えてやれば完璧だった。全ては虎杖の望みを果たすためである。
「今日はサンドイッチでも作ろうか」
「んー、」
「ハムにする? ベーコンにする?」
「はむ、べーこん……」
「欲張りだなぁ。いいよ、両方使っちゃおう」
こんな穏やかな時間がいつまでも続けば良い。残り二十分のリミットを残念に思いつつ、小さく寝息を立てはじめた額にそっと口付けた。夢の続きが良いものでありますように。
子ども体温だ、と言うと怒るのだが、眠っている虎杖は特に温かい。本当は早く起きた者の責務として朝食の準備でもしてやれば良いのだろうけれど、どうしたって離れ難いので何をするわけでもなくくっついたまま微睡んでいることが多い。軽く頬を突くくらいでは起きてこないことは学習済みなので、突いてみたり、撫でてみたりとやりたい放題である。ごく稀に宿儺がうんざりとした眼差しを向けてくるのだけれど、知ったことではない。お前は一生眠っておけ。
今日の天気予報は、昨日の時点では曇り時々雨だった。潔く雨が降ってくれたらまだ諦めがつくのだが、中途半端はやめて欲しいといつも思う。耳を澄ませても雨音はしないが、カーテン越しの空はどうも暗そうだ。おとなしく室内でゆったりと過ごすか、降ったならばそれも楽しむつもりで観光に繰り出すか。
「ゆーじはどっちがいい?」
何の夢を見ているのやら、眉間に寄った皺を伸ばすように指先でそこをなぞる。答えを求めるわけでもなく、ただ話しかけたくて問いかけてみるとタイミングよく唸り声をあげられたものだから小さく笑う。覚醒が近いのだろう。これは家でのんびりコースか、元気に外出コースか。
昨日は任務のせいで遅かったし、ゆっくりと眠らせてあげたい。ただ、虎杖はせっかくの休日を眠って過ごすことがもったいないと考えるタイプなのだ。他人には「疲れているだろうから休んでていいよ」と言うくせに、自分に対してそれをされると口を尖らせる。「そういう気遣いは嬉しいけど、どうせなら起きて一緒にいる時間を楽しみたかった」なんて言葉に貫かれてしまってからは、ある程度の時間になったら起こすようにしている。ただし、今はまだ勝手に定めたデッドラインに到達していない。つまり、虎杖が自力で起き出してこない限りは存分にその寝顔を楽しんでいたって文句は言われないのである。言わせない、の方が正しいか。流石に寝かしつけるような動きをすれば怒られるのだろうけれど、朝は寒かろうと布団を肩まで掛け直し、ぴたりとくっついてその表情を眺めながら動きを止める程度であれば問題あるまい。
んんん、と小さく唸った虎杖の眉間から皺が消える。カウントダウン、さん、に、いち。
「……せんせ?」
「おはよ。まだ寝てていいよ」
ゆっくりと瞼を上げた虎杖は弱々しい朝日から逃れるように布団へと潜り込みながら、未だよく頭が回っていないらしく言葉になりきらない声を上げている。
「こらこら、それじゃ窒息しちゃうでしょ。こっちおいで」
布団に潜り込んだまま丸くなろうとした虎杖の肩に腕を回し、五条はぐいと自身へと引き寄せる。胸元に頭がくるように、虎杖が眩しくないようにと体勢を整えてやれば完璧だった。全ては虎杖の望みを果たすためである。
「今日はサンドイッチでも作ろうか」
「んー、」
「ハムにする? ベーコンにする?」
「はむ、べーこん……」
「欲張りだなぁ。いいよ、両方使っちゃおう」
こんな穏やかな時間がいつまでも続けば良い。残り二十分のリミットを残念に思いつつ、小さく寝息を立てはじめた額にそっと口付けた。夢の続きが良いものでありますように。
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