捨て猫の夢
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晩ご飯を食べ終わり、片付けをすませ、俺は風呂に入っていた。
猫たちはササミを完食し、いそいそと寝床に戻って行った。白猫も目は見えそうにないが、ハチワレに付き添われて自分で戻ることができた。
なんて甲斐甲斐しいんだ、ハチワレ。
ご飯を片付けながら、ふとトイレがいるなと思い当たり、母にダンボールと新聞紙をもらって簡易的なトイレを設置した。
そこでするかは分からないが…ないよりはマシだろう。
風呂から上がると、母が洗濯をしてくれていて、俺と虎杖の制服を乾燥機にかける所だった。
制服って乾燥機かけても大丈夫なのか?
と思ったが、母は大丈夫大丈夫〜とポンポン放り込んでいた。
虎杖、制服ダメにしたらごめん。
俺はパジャマ変わりのTシャツとスウェットを着て、髪を乾かす。
そして、母が用意してくれた客用の布団を抱え、部屋に戻った。
中に入ると、虎杖は猫たちの横で同じように丸まって寝ていた。
虎杖も猫みたいだ。
ふふっと込み上げる笑いをおさえつつ、そっと虎杖に近づく。
虎杖は俺が戻って来たことな気づく様子はなく、すやすや眠っている。
そっと虎杖の隣に座ると、すぐに起こす気にはなれず、じっと観察してみる。
今日初めて会ったばかりなのに、こうしてうちに泊まることになったのは、虎杖があまりにも人が良さそうで、優しく笑うやつだからだろう。
母も何も疑ってなかった。
ずっと前から友達だったかのような気安さがある。
顔は年相応の、俺と同じ高校生なのに、風呂上がりに見た体つきは、大人顔負けの筋肉だった。
何かスポーツか、あるいは格闘技か。
俺も鍛えてみようかな…
そっとお腹をさすってみる。
あるのはペラペラの体。
ちょっと悲しくなった。
「んー」
横向きに丸まっていた、虎杖が大きく寝返りを打つ。
硬い床に寝ているんだ、寝苦しいのだろう。
さっさと起こして、布団を敷いてやろう。
肩を掴んで揺すろうと手をかけたその時。
「ケヒッ」
変な、笑い声のような、不気味な声。
虎杖の目の下、模様の様な所が、まるで口の様にニヤリと開いた気がした。
そういえば、虎杖の両目の下にあるこの模様の様なものは何なのだろう。
何となく嫌な雰囲気だ。
しかし、どうしても気になる、目が離せなくなる。
心のどこかてやめた方がいいと警鐘を鳴らすのに、触れようとする手が止まらない。
もう少しで、俺の手が虎杖の模様に触れようとした、その時…
「シャー!!」
ビクッ
「んあ?」
猫の威嚇の声にハッとして、手を引く。
鳴き声に虎杖も起きたようだ。
鳴き声の方を見るとハチワレが毛を逆立てて、虎杖を見ている。
「あー、悪い。寝てたわ… 苗字?どうかしたか?」
起きた虎杖が、不思議そうに俺を見ている。
ふと、ハチワレを見るともう興味をなくしたように、白猫に寄り添って寝ていた。
「あ、いや…。布団、持って来たから起こそうと思って」
「あ、そうだったの?ありがとな」
テーブルを端に寄せ、布団を敷く。
「色々とありがとな、苗字」
「いや、こちらこそ、ありがとう」
「へへっ、じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ…」
虎杖が布団へ入るのを確認すると、電気を消す。
俺の心臓は未だに、ドクドクと早鐘を売っていた。
さっきのは何だったのか…
気のせいか…
隣で早くも寝息を立てる虎杖が気になり、なかなか眠れなかった。
─────────
雨が上がり、カーテンの隙間から月明かりが見える。
月明かりに、ベッドの脇に座る男の横顔が照らし出される。
それは、虎杖…ではなく、醜悪な、凶悪な笑みを湛えた横顔。
「ケヒッ」
宿儺は、ベッドに眠る苗字 の顔を眺め、ニヤリと笑うのだった。