捨て猫の夢
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「そういえば、猫大丈夫?」
虎杖に言われて、ハッとする。
ダンボールの中を見ると白猫をあらかた舐め終わったのか、ハチワレが自分の体を舐めていた。
白猫はすっかり乾いているようだ。
猫って舐めてキレイにするんだな。
俺と同じように虎杖もダンボールを覗き込む。
「大丈夫そうだな」
「うん、とりあえず。でも、白猫の方目ヤニみたいなので目が開かないんだ。ハチワレの方も鼻水出てたし。明日病院行ってみるよ」
「そっか。明日…学校終わってから?」
「うーん。そうだな、朝様子みて大丈夫そうだったら夕方行くつもり。母さんも仕事あるだろうし」
明日はバイト休みの日でよかった。
朝様子みて調子悪そうだったら、学校は休もう。
そんなふうに考えていると、虎杖がじっと俺を見ていた。
「俺も一緒に言っていい?」
「え、いいのか?ありがとう。じゃ、4時半くらいにうち来てよ。それなら学校終わってるだろ?」
「んー、多分!大丈夫」
「あ、部活とかバイトとかあった?」
少し悩んでいる様子の虎杖に、そういえば公園のトイレで会った時に、仕事がどうとか話してたのを思い出す。
「いや、多分平気。4時半な!了解!」
「じゃ、動物病院探しとく」
何だか嬉しそうな虎杖に、俺も何となく嬉しくなる。
いや、病院に行くんだから喜んでる場合じゃないけど。
そうだ、その後ホームセンターに行って色々と買わなきゃな。
虎杖は荷物持ち、決定。
俺は勝手に病院後の計画を立てる。
トイレとかご飯とか、色々必要だもんな。
そう考えて、ふと思い当たる。
「あ、ご飯」
「え?」
「こいつらにご飯あげてないわ。え、猫って何食べるんだ?そもそも子猫って食べられるんか?ミルク?…牛乳でいいかな?」
ブツブツ言いながら部屋から出て、キッチンへ行く。
とりあえず、お皿に水と温めたミルクを入れたもの2つを用意すると2階へ戻る。
部屋には虎杖がハチワレとじゃれ合っていた。
いや、ちょっかいかけて引っ掻かれるの間違いか。
手を引っ掻かれたのか、いててっと手を摩っている。
「何やってんの」
「はは、俺嫌われてるかな?」
「いや、いきなり懐くわけないだろ。俺もさっき引っ掻かれた」
そう言って、ダンボールの横に水とミルクを置く。
ハチワレの方は元気そうなので、先に白猫を抱き上げミルクの前に座らせてみる。
ハチワレがどこ連れてく気だ!と言うように抗議しているが、とりあえず無視だ。
白猫は開かない目のままふらりと起き上がり、ふんふんとミルクの匂いを嗅ぐ。
お、飲むか?
虎杖と俺は固唾を飲んで、見守る。
白猫は、しかしミルクは飲まず、隣の水をぺろぺろと飲んだ。
ミルクは失敗だったが、とりあえず水を飲んでくれてよかった。
やっぱり、人間の…というか、牛の乳じゃダメか。
しばらく白猫が水を飲む姿を見ていると、ダンボールの中で抗議していたハチワレが痺れを切らしたのか、ぴょんと飛び出してきた。
そして、白猫の横で水を飲み始めた。
たまに白猫の鼻についた水をハチワレが舐めてやっている。
「ふふっ」
何とも微笑ましく、思わずにやけてしまった。
虎杖も嬉しそうに眺めている。
その時、トントンとノックの音がしてドアが開く。
そこにはお盆を持った母が立っていた。
お盆の上には丼に親子丼が2つ、コップにお茶、そして何故かお皿に茹でたササミが乗っていた。
母はお盆をテーブルに置くと、ササミの乗った皿を俺に渡してきた。
「魚とかなかったから、ササミ茹でてみたんだけど…食べないかな?」
「え、猫ってササミ食べるの?」
「んー、何か調べてみたら食べるらしいけど…小さいからムリかな?」
「どーだろ」
俺は受け取ったササミを小さくちぎって、白猫の鼻先に持っていってみる。
白猫はふんふんとササミの匂いを嗅ぎ…
「あ」
「食べた!」
「食べたね」
虎杖と母が嬉しそうに話す。
虎杖にもササミを渡すと、少しちぎって今度はハチワレにあげてみている。
すると一瞬警戒して避けたが、しばらくしてパクっと食べた。
「お、こいつも食ったぞ!」
「ふふ、よかったね。これでちょっとは懐くんじゃない?」
嬉しそうな虎杖に思わず笑った。
「よし、猫もご飯食べたし、あんたたちも食べなさい。えーと」
「虎杖です、虎杖悠仁。すみません、何も言わず風呂まで借りて、ご飯まで…」
「ああ、いいのいいの。気にしないで。ところでもう遅いし泊まってくわよね?後で布団準備するわね、名前が」
「俺かよ」
「え、いいんすか?あざっす!」
「虎杖くん、元気ね。あ、名前はご飯食べたらさっさと風呂入りなさいよ。風邪ひくわよ」
「へーい」
俺の頭にポンと手を乗せて、よいしょと立つ母。
おい、俺を台替わりにするんじゃない。
さ、呑み直すか〜と呟く母に、まだ呑むのかよと呆れつつ声をかける。
「ありがと、母さん」
「はいはーい、明日ちゃんと病院つれてくのよー」
と言って、部屋から出ていく。
階段を降りながら、「名前はトムとジェリーかしらねー」なんて言ってる。
いや、トムとジェリーは猫とネズミだろ。
心の中でツッコミを入れると、隣で虎杖が笑っていた。
猫たちはササミが気に入ったようで、もっとと言うように指を舐めてきた。ザラザラしていてくすぐったい。お皿に細かくして置いてやると、2匹仲良く食べている。
俺たちも母の親子丼を食べていた。
虎杖は「晩メシ食い損ねたからありがてえ〜」と話していた。
そういえば、泊まることになったけど、虎杖って寮がどうとか言ってなかったか?
「なあ、虎杖。お前うちに泊まっても大丈夫なのか?」
「ん?んー多分?」
「寮なんだっけ?連絡とかした方がいいんじゃない?」
無断外泊とか怒られそう。
寮生活したことないから分からんけど。
「んー、一応出てくる時に伏黒には言ったから…うん、伏黒に電話しとくか!」
1人ブツブツ話すと、スマホを取り出しどこかに電話する。
すると相手はすぐに出た
「あ、伏黒?」
『おい、虎杖!お前どこに…』
「あー、今友達の家で…あー?うん、一般人かな?あ、でさ、今日泊めてもらう事になったから」
『はあ?お前、どーゆー…』
「明日の朝には戻るから!じゃ、よろしくな!」
『は?いや、お前…ちょっ…』
ブツッ
「……」
「よし、これでOK」
「いや、何か全然OKじゃ無さそうだったけど」
漏れ聞こえた電話の向こうのふしぐろさん?は怒ってなかったですか?
「ふしぐろさんって…」
「ああ、俺の同級生で隣の部屋のやつ」
え、いいのか?それで
普通寮母さんとかじゃ…
と思ったが、虎杖はもう残りの親子丼をかき込んで、元気よくご馳走様でした!と手を合わせている。
とりあえず、ふしぐろさん?のために、せめてうちの住所を送るよう虎杖に提案するのであった。