みじかいの

 
 ランスロットは意地悪だ。

「今、俺が入ってるの、わかるよな? あんたの中、こうして……もっと奥まで……」
 そうやって言葉にされたら嫌でも意識する決まっている。圧迫感だけでも充分なのに、同時に耳から入ってくる情報は過剰だ。自分がどんな状況なのか把握せざるを得なくて、何故か僕の体は余計に感じてしまう──そしてランスロットは僕がこうなることを知っている。
「ほら、一番奥だ。気持ちいい所……ここをグッと……はは、すごく締まった。ああ、たくさん突いてやるからな」
 しかも僕の耳元にぴったりと唇を密着させて、こんなことをずっと囁いてくるのだ。ランスロットの声以外、物音も何も聞こえないように。僕の頭の中がランスロットで塗り潰されていくみたいな感覚に陥る。
「気持ちいいか?」
 うん、きもちいい。自分も言葉にするとそれがどんどん膨らんでいって、目の前には満足そうに微笑むランスロットの顔がある。微笑んでいるけれど、何て言うか、男の人の顔だ。
 合間にちゅっと耳にキスされたり、音を立てるくらい執拗に舐められたり。耳が弱いらしい僕はもういっぱいいっぱいだ。
 けれど、僕にもわかってきたことがあって──耳元に触れる息の熱さだとか、呼吸の荒さとか、激しくなると声に余裕がなくなることだとか。僕だけじゃないんだなぁと思うとなんだか嬉しくて、大きな背中に手を回す。するとランスロットは何か堪えるように低く唸った。
 ランスロットがそんな自分に気付いているのかはわからないけれど、どうやら僕はこのときどうしようもなく彼に寄り添いたいと思うらしい。ただ僕はもっと余裕がないから、この衝動をどうしたらいいのかわからなくて。

 このことを伝えたら、やたらとランスロットが甘えてくるようになったのは暫く経ってからの話だ。
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