この先も、貴方だけを見つめる。

 想い人の美しい髪色のような青空に、キラキラと降り注ぐ陽光。アベルが願った空模様。

 八月三十一日にどうしても君と行きたい場所がある。その日は空けておいてほしい。とアビスに告げた。

 待ち望んだ日を迎え、アベルが最愛の人を連れた場所は広大なひまわり畑。自分達の背丈よりも大きなひまわりが何千本と咲いている。この煌めいた世界に、アビスは珍しく子どものようにはしゃいでいた。こんな素晴らしいもの初めて見た。心の弾みが止まらない。アベルはその様子を見てよりアビスへの愛おしさが増す。

 暫くはしゃいでからふと気付く。アベルは何故ひまわり畑に行きたかったのか? ひまわりが好きという事も聞いた事が無い。これまで一緒に出掛ける事はあったが、花畑は今回が初めてだ。それに何故日付を指定したのか……。

「アビス、おいで」

 アベルは全方位ひまわりに囲まれる場所で、両の腕を広げる。アビスはその腕に優しく包まれ、今日ここに来た理由を尋ねた。

「ラブから聞いたんだけどね、今日は僕達の真ん中バースデーらしい」

 ラブは交際後も卒業後も、アベルにお膳立てをしていた。おすすめのデートスポットや恋人との過ごし方、そして今回の真ん中バースデー。二人の誕生日のちょうど真ん中の日の事と教えてもらった。「この日に二人でデートに行く事をオススメしますの〜。せっかくの記念日だから気合いを入れてくださいね!」とアドバイス付きで。ただデートプランを考えたのはアベル。図書館で花図鑑を見たりと試行錯誤していた。

「え! 真ん中バースデー?! 今日は某国で野菜の日らしいですので、昨日アベル様の為に至高の野菜、そして最高級ミニトマトを手に入れましたから、スペシャルサラダを作ろうかと……」

「あ……ありがとうね」

 それは帰ってからのお楽しみにしておこう。

「アビス、このひまわりを見てほしい」

「ん? このひまわり……他のと違って赤いですね?」

「F1クラレットという品種らしいよ。黄色いひまわりと赤いひまわり……まるで君の左目のようだ」

「!」

「君は学生時代の僕の助言通り、その目を上手く使い、社会に貢献している。それを評価され、悪く言われる事も少なくなってきただろう。だからもうその目は悪魔の目ではない。ここのひまわりのような目だよ」

「……ひまわりの目……」

 この目が発現した時、親から牢屋に閉じ込められ、殺されかけ、生まれて来なければ……と何度自分を呪った事だろう。こんなに……こんなにも報われる日が来るなんて……

「君がここに咲くひまわりのように、健気に支えてくれたから、僕はここまで来れたんだ。これからは恋人ではなく、家族として一緒に居たいんだ。いいかな?」

 アベルはそう言い、アビスの左薬指に誓いを通す。太陽に照らされ、光り輝く永遠の愛を象徴する指輪を。

「こ……こんな高価な物……」

「僕らのこの先の約束の形。どうか受け取ってほしい」

 ぼたぼたと目から零れ落ちる幸せの証。自分を見つけてくれた優しい人からこの上ない愛を受けて……。

「ありがとうございます、アベル様。嬉しい……。この先も私は貴方と共にあります」

 今日は八月三十一日。八つのアルファベット、三つの単語、そして一つの意味から、アイラブユーの日でもある。そしてひまわりはこの日の誕生花。花言葉は、『私は貴方だけを見つめる』、『崇拝』。二人にぴったりの花。アベルもアビスもお互いが本当に運命の人だったんだ。
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