ラブ・コンシェルジュ
ブーッ、ブーッ
土曜日の二十時。アベルの伝言ウサギが鳴る。
「あぁ……今日はこの日か」
三年生になり、レアン寮の新監督生にもなって、忙しい日々を送っているのに、甲斐甲斐しく僕らの恋路を見守るあの子からの電話。
「アッベル様ー! 今日は報告会の日ですよーっ! 早速アビスくんとの近況を聞かせてほしいのー!」
心做しかいつもより溌剌とした声な気がする。年頃の女の子はやはり恋の話となるとこうなるのだろう。そっちはどうなんだいと尋ねてみたいが、どうせ良い男が居ないのと返されるに違いない。いつか彼女にも僕達のようにファタールが見つかるといいが……。
「同棲生活も慣れてはきたけど、最近はアビスが警備隊で夜勤に入るようになって、少し寂しい時間が増えてしまったね。それを埋めるようについ夜勤明けの彼を強く抱きしめてしまうよ」
「おぅふ……なかなか刺激的なお話なの」
仄めかすように話したつもりが、丸分かりであった。
イーストン魔法学校卒業後、僕達は父から頭金を借りたりして、レジデンスにて同棲生活を開始した。寮時代のお泊まりの時から、ずっとアビスと同じ部屋に居る事が出来たらと
「そっかー、アビスくんも夜勤に入るようになったんですねー。アビスくんもアベル様と居られないの寂しがってるでしょ。お仕事って残酷なの。無くちゃ生きていけないし。……それにしても顔の良い警備員が恋人なんて自慢になりますねぇ。かっこいい彼氏なんて羨ましいの〜♡」
恋人を自慢なんて今まで考えた事無かったが、言われてみて気付く。確かに僕の恋人はとてもかっこいい。学生時代に助言した通り、
「そーんな二人にちょうどいい! マーチェット通りに最近朝七時から開いてるおにぎりカフェが出来たみたいですよ? 行ってみたらいいの!」
「毎回素敵な情報をありがとうね」
僕らが卒業しても、ラブは恋の応援団長を変わらず続けてくれていて、二週に一度、土曜日の夜に報告会を行っている。他人の世話をしている場合かと心配にもなるが、彼女はオロル達の助けも借りつつ、監督生業務をこなしているそう。そしてどうしても学びたい事があるからと専門学校に進学するらしいが、何について学びたいのかは内緒にされている。監督生業務引き継ぎ時は、「こんな面倒臭い事するの〜?!」と喚き、やはりオロルかアンサーに継ぐべきかと悩んだが、学年トップの彼女のプライドは眩しかった。「でも、アベル様に恥をかかせたくないから頑張る!」 その逞しい顔に、彼女の成長に安堵の笑みを零したのは良い思い出だ。
***
時は流れに流れ、六年後──
ブーッ、ブーッ
変わらず土曜日の二十時。アベルの伝言ウサギが鳴る。
「アッベル様ー! 今日は報告会の日ですよーっ! 何か変化はありませんか〜?」
「変わらず順調だよ」
「それは良かったの〜。でも、アベル様達ももうお付き合いして今年で七年になるんですね〜。同時期に居たカップルはほぼほぼ別れちゃったのに、ずーっと続いてるの凄いの」
「僕はアビスと生涯離れるつもりはないよ」
「……もうそう言ってあげてもいいんじゃないですか?」
「ん、そうだね。僕達もそろそろ進展すべきだろう」
「そーんなアベル様に朗報なの! アベル様は真ん中バースデーってご存知ですか?」
「……何だい? それは」
「私も最近知ったんですけどね……」
二人の誕生日のちょうど真ん中の日の事を指すそうだ。アビスの誕生日は七月五日。アベルの誕生日は十月二十六日。その真ん中の日は八月三十一日と、三月一日。今日は七月三十一日だからちょうど一ヶ月後が真ん中バースデーだ。
「この日に二人でデートに行く事をオススメしますの〜。せっかくの記念日だから気合いを入れてくださいね!」
今月のアビスの誕生日は、そのプレゼントを用意していたというのに、妙に踏み出せなくて、つい普段と変わらないバースデーパーチーを開いてしまった。プレゼントもまた別の物を渡してしまい……。だが、これはきっといい機会。
君ともっと幸せになりたい。この先も、君だけを見つめたい。
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