愛のきっかけは、戯曲にて。
深い闇の淵にて憤懣に身を燃やすアベルがこの世界を穢れなく浄化する神覚者と成る為に集いしレアン最強の狼達が、アドラ寮に敢え無く敗戦し、その戦いの最中に現れたセル・ウォーからの裁きを受ける事となったアベルを庇い、重傷を負ったアビスが退院した数日後の事。七魔牙 の面々はアベルから招集をかけられた。級硬貨 集めという目的を失ったから、群れる意味も無いと解散を告げられるのだろう、そうメンバーは薄々感じていた。中でもアベルを神聖視しているアビスは捨てられると思い、俯いている。この陰鬱な空気を裂くようにアベルは声を翳した。
「これからの七魔牙 は、学校行事や放課後を、思いきり楽しむ仲間達という事にしようと思う」
その発言にメンバー全員が瞠目。だが、次の瞬間、皆で手を取り合って笑みを咲かせた。アベルも「せっかく集まった七人だ、この縁を大事にしたい」と今まで見せた事のない優しい眼差しを向ける。これからは第二魔牙 や第三魔牙 ではなく、きちんと名前で呼び合おうと和気藹々とする中、
「そして、アビス。道具と持ち主という関係を解消したい」
その暖かい空気が一瞬にして凍りついた。皆の楽しげな声も消え失せ、召集された当初よりも暗雲が立ち込める。そんな中、もう使い物にならないからですよね……とアビスは一筋の悲哀を零す。ワース達はアビスのその悲しみを拭う為に言わずとも寄り添うが、ラブだけが気付いた。アベルの耳が赤くなっている事に……。
なかなか開かれなかったアベルの唇。唾を飲み、やっと紡がれた言葉は……
「違うんだ、その……ずっと傍に居てほしい」
その言葉を耳にしたアビスの瞳膜は更に潤んでゆくが、先程とは違い、雨の上がった眩しい空のように笑って……
「私などが烏滸がましいのですが……」
ラブは思った。すごいの! 両想いなの! とんでもないものを目にしたの! アベル様も皆の前で言うなんてやるぅ!
「アベル様とお友達になれて嬉しいです!」
……嘘やろがい。
流石にラブ以外のメンバーも内心突っ込んだ。一大決心であったであろう告白が、予想だにしない方向に飛んでいってしまい、アベルも呆然せざるを得ない。
「……あ……あぁ、友達、ね。うん、よろしく……」
……嘘やろがい。
またしても五人は突っ込んだ。
集会後――
「ちょっと! ちょっと! ワースくん! あの二人、あれでいいの?!」
「良くはねぇだろ、アベルが可哀想にも程がある……」
「こうなったら、皆でお膳立てするの!」
マイロ、オロル、アンサーにもその旨を話し、五人で【二人をくっつけ隊】を結成した。しかしあの手この手でお膳立てするも、アビスは全く気付かない。天然も大概にしろと五人の腸はふつふつと煮えくり返る。普段は冷静なオロルとアンサーすらも我慢ならず声を荒らげた。アビスと同室のワースが、降参気味にお前恋とかしねぇの? と尋ねると、女子ハ無理デス、怖イ……と震える。女って言葉が出ただけでも震えるのか、重症だな。女以外にも男とかさ……と振るも、私のような呪われた者が恋をしてはいけません……と何もかもを諦めた微笑みを見せた。そんな事……そんな顔で言うものではない。聞いていてあまりの苦しさに耐えられなくなったワースは、ラブを談話室に呼び出す。
「は? 何それ……そんなの悲しすぎるの」
「でもよ……恋は駄目でも、友達はいいのかよ」
「それもそうなの! 前までのアビスくんなら、お友達でも恐れ多い〜とか呪われてるから〜とか言って断ってるはずなの! こうなったら、あれを試してみるの!」
秋を感じるのは羊雲だけ、まだまだ酷い夏色が残る九月、イーストン魔法学校は学校祭準備期間に入った。せっかくだから七魔牙 で何かしようとラブが提案し、早速談話室で会議が開かれる。
「では司会進行は私、アビス・レイザーが務めさせて頂きます。何か案のある方はいらっしゃいますか?」
「はいはいはい! ラブちゃんは劇がいいと思うの!」
さて、ラブが提案した劇は?
白雪姫 2ページへ
ロミオとジュリエット 3ページへ
「これからの
その発言にメンバー全員が瞠目。だが、次の瞬間、皆で手を取り合って笑みを咲かせた。アベルも「せっかく集まった七人だ、この縁を大事にしたい」と今まで見せた事のない優しい眼差しを向ける。これからは
「そして、アビス。道具と持ち主という関係を解消したい」
その暖かい空気が一瞬にして凍りついた。皆の楽しげな声も消え失せ、召集された当初よりも暗雲が立ち込める。そんな中、もう使い物にならないからですよね……とアビスは一筋の悲哀を零す。ワース達はアビスのその悲しみを拭う為に言わずとも寄り添うが、ラブだけが気付いた。アベルの耳が赤くなっている事に……。
なかなか開かれなかったアベルの唇。唾を飲み、やっと紡がれた言葉は……
「違うんだ、その……ずっと傍に居てほしい」
その言葉を耳にしたアビスの瞳膜は更に潤んでゆくが、先程とは違い、雨の上がった眩しい空のように笑って……
「私などが烏滸がましいのですが……」
ラブは思った。すごいの! 両想いなの! とんでもないものを目にしたの! アベル様も皆の前で言うなんてやるぅ!
「アベル様とお友達になれて嬉しいです!」
……嘘やろがい。
流石にラブ以外のメンバーも内心突っ込んだ。一大決心であったであろう告白が、予想だにしない方向に飛んでいってしまい、アベルも呆然せざるを得ない。
「……あ……あぁ、友達、ね。うん、よろしく……」
……嘘やろがい。
またしても五人は突っ込んだ。
集会後――
「ちょっと! ちょっと! ワースくん! あの二人、あれでいいの?!」
「良くはねぇだろ、アベルが可哀想にも程がある……」
「こうなったら、皆でお膳立てするの!」
マイロ、オロル、アンサーにもその旨を話し、五人で【二人をくっつけ隊】を結成した。しかしあの手この手でお膳立てするも、アビスは全く気付かない。天然も大概にしろと五人の腸はふつふつと煮えくり返る。普段は冷静なオロルとアンサーすらも我慢ならず声を荒らげた。アビスと同室のワースが、降参気味にお前恋とかしねぇの? と尋ねると、女子ハ無理デス、怖イ……と震える。女って言葉が出ただけでも震えるのか、重症だな。女以外にも男とかさ……と振るも、私のような呪われた者が恋をしてはいけません……と何もかもを諦めた微笑みを見せた。そんな事……そんな顔で言うものではない。聞いていてあまりの苦しさに耐えられなくなったワースは、ラブを談話室に呼び出す。
「は? 何それ……そんなの悲しすぎるの」
「でもよ……恋は駄目でも、友達はいいのかよ」
「それもそうなの! 前までのアビスくんなら、お友達でも恐れ多い〜とか呪われてるから〜とか言って断ってるはずなの! こうなったら、あれを試してみるの!」
秋を感じるのは羊雲だけ、まだまだ酷い夏色が残る九月、イーストン魔法学校は学校祭準備期間に入った。せっかくだから
「では司会進行は私、アビス・レイザーが務めさせて頂きます。何か案のある方はいらっしゃいますか?」
「はいはいはい! ラブちゃんは劇がいいと思うの!」
さて、ラブが提案した劇は?
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