第9章 魔物の大王

「特定は進んでるんだ?」
「昨夜のうちに、セラさんに確認が取れましたので」
リーナが壁に映る映像を切り替える。
「ルミナたちのために説明しますと、サンレス水郷はコクーン内の自然保護区の一つでした。AF歴に入ってからはクリスタルの柱が貫く場所の一つとなり、コクーンの機能停止に伴い管理が放棄され、魔物たち―――とりわけプリン系モンスターの楽園となっています」
「あ、可愛い」
映像に映るプチネロたちにルミナが声を上げる。
「スノウと再会したのもここだよね」
「ああ。あの時ゃ心底びっくりしたぜ。セラもすっげぇ強くなってるしよ」
「俺はスノウの無謀さに驚いたけどな」
セラ、スノウ、ノエルの思い出話に苦笑いして、リーナが口を開く。
「続けます。…調査隊の偵察の結果、凡そ核となる存在は絞れています。こちらですね」
画面に映されたのは、恐ろしく巨大なプリンの魔物。
「……可愛くない………」
「気にするとこ、そこか?」
「まぁ、小さいのより可愛げはないわねぇ」
ルミナの言葉にノエルがツッコみ、黒衣の少女が同意する。
「こちら、仮称『完熟大王』とスノウさんが呼んでいた群体です。プリンが大量に合体した存在ですね」
「俺たちが戦ったときは、ここまで大きくなかった。矛盾パラドクスを通じて現れたプリンたちが合体してたから、ゲートを超えてその流入を抑えて…弱体化したところを叩いたんだ」
「けど、今までから考えると―――」
「はい。ゲートのようなオブジェクトの存在は報告されていません」
リーナの肯定に、セラが「だよねぇ」と笑う。
「なら、正面突破か?」
「恐らくは。ただ、AF400年頃と推定されていますから…」
「それがどうしたの?」
ヴァニラの問いに、リーナがえっと、と少し考えながら応える。
「アカデミーの記録によると、AF400年前後に、かの地の魔物の知性の発達が報告されているんです。セラさんたちの話にも照合できます」
「うん。プリンたちがね、学校みたいなことしてたの」
「迷子探しさせられたよな。俺、魔物ハンターなのに」
「……それがどう作戦に繋がるんだ?」
エクレールが難しい顔で腕を組む。
「先遣調査隊の報告によると、現地の魔物たちは完熟大王に怯えた様子を見せ、貢物を捧げていたそうです。また、調査隊に襲い掛かる様子も見せなかったようで…」
「まさか、魔物と現地協力する…ってことかぁ?」
ファングの声にリーナが頷く。
「マジか」
「マジです。大マジです。幸い、モーグリさんが魔物と話せることも確認済です」
「モグにお任せクポ!」
「私も話せるわよ」
黒衣の少女が言うと、全員の注目が集まる。
「え、なんでです?」
「忘れた?私は、あの世界からこちらに来られなかったモノたちの集合体。魔物と話すくらいわけないわ」
「なるほど、頼りにさせてもらっていいんだね?」
レインズの確認に少女が頷く。
「ところでなんだけど」
ルミナが手を上げる。
「どうしました?」
「いや、名前聞いてないなって…」
「名前?そんなのないわよ。強いて言うなら不可視の混沌カオスだけど」
「それはダメでは?」
リーナが思わずツッコみ、次いでホープを見る。
「え、僕ですか?」
「私にも名前つけてくれたじゃないですか」
「いや……アレは実は、ルミナの名前の候補の一つでして…」
「え、そうだったの!?」
「あぁ…道理でパッと出てきたんですね…」
ルミナの驚く声の横で、リーナが苦笑いする。
「う~ん…じゃあ、アンナで!」
「…完全に思い付きだよな?」
ルミナの声に、エクスが呆れ顔でツッコむ。
「じゃあ、これから私はアンナで」
「それでいいのか…」
「ないよりは随分いいしね。それに、私を拾ったのもルミナなんだし、名前を貰うのは不自然じゃないでしょ?」
「ペットかなんかの理屈じゃないのか、それ…」
眉を顰めるエクスだったが、彼の味方はいなかった。
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