第9章 魔物の大王
「―――さて、一旦整理しよう」
アカデミアの対策本部に帰還した翌朝、会議室に集まった一行にレインズが言う。
「と、言いたいところだが…大丈夫かね?」
「だいじょうぶぅ…」
髪をエクスにセットされながら、寝ぼけ眼で座るルミナがぽやぽやの声で答える。
「続けていいぞ。これでもちゃんと聞けてはいる」
「ファロン軍曹…失礼、エストハイム夫人が言うなら続けよう」
レインズが壁に映像を表示する。
「我々は、出現したシ界3つのうち、2つ―――アガスティアタワー、巨兵の大戦を攻略した。同時に、マジック=ギア装備の発展と充実、及びエストハイム氏らの魔法使い の覚醒―――これらを以て、君ら子供たちを戦力としなければならない状況は解消されたとみなしていいだろう」
「えっ」
パッと目を見開き、立ち上がりかけたルミナをエクスが押さえる。
「んだよ、うちらは用済みってか?」
「端的に言えば、そうなる。元々、我々大人たちが解決するべきところだからね」
「正論だな。……けど、ならなんで態々会議室で言う?」
ホープさん辺りが言えば終わりだろ?と問うエクス。
「状況がそれを許さなくなった…と言うべきかな。その説明は彼女に任せよう」
「りょうか~い」
ぴょん、と立ち上がったのは黒衣の少女だ。
「そもそも、なんで私がヴァルハラで力尽きて転がってたのか、って話になるんだけどね?」
曰く―――
混沌の淵で目覚めたブーニベルゼは、その力の大半を失っていた。
故に彼が求めたのは、己が力を分けた子の回収―――その標的となったのが、死して混沌に溶け入っていたエトロのクリスタルだった。
しかしカイアスがそれを許さず介入、少女も彼と共に戦った。
だが、力の大半を失っていようと神は神。混沌 をも知った彼の神は強く、少女は力尽き、カイアスはヴァルハラ―――死者の守護、そして可視世界への顕現の阻止に徹することとなった。
「あれから13年。カイアスはよく保たせてくれているけど、限界も近いかも」
「事実、ルミナたちは一度ヴァルハラに落とされていますからね…」
「寧ろ、カイアスがヴァルハラに引き寄せて、あの神の手から護ったのかも。…バルトアンデルスが絡んできたから、それだって完璧じゃなかったけど」
少なくとも、彼は最善を尽くしてる。そう言って黒衣の少女は肩をすくめる。
「じゃあ、あのシ界は…ブーニベルゼが可視世界に開こうとしている門、なの?」
「そういうこと」
頷く少女に、レインが頭を掻いて手を上げる。
「んじゃ、ルミナを一人にしとくとまた攫われるかもしれねぇから、同行を許可するってことかよ?」
「半分正解。ルミナだけじゃなく、貴方たち3人全員、よ」
少女の声に、レインとエクスは顔を見合わせた。
「奴―――ブーニベルゼは、私を解放者にしたときに、セラの蘇生を条件にしたんだ。嘘だったわけだが…」
「なるほど、俺たち全員目を付けられていてもおかしくない、ってわけか」
「そういうこった。なぁに、まとめて守ってやるから安心しろって!」
スノウの声に、エクレール、ホープ、ノエルが同時にやれやれと首を振った。
「無論、同行してもらう以上、今まで通り戦力として数えさせてもらうがね。熟達した魔法使い は、飛空戦車にさえ相当しうる戦力だ。君らは既に、その域まで至っている、と私は見ている」
「望むところだってんだ!」
「みんな一緒なら、大丈夫!」
威勢よく言うレインとルミナに、エクスは肩をすくめて応じる。
だが、否定はしない。それが彼なりの意思表示なのは、皆が知っていることだった。
「今後の方針だが、まずは最後のシ界の攻略を進める。その後、彼の神の調査を進め、可能であれば討伐、今度こそ―――」
「溶ける間もなく沈めてやるさ」
エクレールの強い意思表示に、レインズが苦笑いで応じる。
「では、第三のシ界―――AF400年頃のサンレス水郷についてお話しますね」
リーナが話を引き取った。
アカデミアの対策本部に帰還した翌朝、会議室に集まった一行にレインズが言う。
「と、言いたいところだが…大丈夫かね?」
「だいじょうぶぅ…」
髪をエクスにセットされながら、寝ぼけ眼で座るルミナがぽやぽやの声で答える。
「続けていいぞ。これでもちゃんと聞けてはいる」
「ファロン軍曹…失礼、エストハイム夫人が言うなら続けよう」
レインズが壁に映像を表示する。
「我々は、出現したシ界3つのうち、2つ―――アガスティアタワー、巨兵の大戦を攻略した。同時に、マジック=ギア装備の発展と充実、及びエストハイム氏らの
「えっ」
パッと目を見開き、立ち上がりかけたルミナをエクスが押さえる。
「んだよ、うちらは用済みってか?」
「端的に言えば、そうなる。元々、我々大人たちが解決するべきところだからね」
「正論だな。……けど、ならなんで態々会議室で言う?」
ホープさん辺りが言えば終わりだろ?と問うエクス。
「状況がそれを許さなくなった…と言うべきかな。その説明は彼女に任せよう」
「りょうか~い」
ぴょん、と立ち上がったのは黒衣の少女だ。
「そもそも、なんで私がヴァルハラで力尽きて転がってたのか、って話になるんだけどね?」
曰く―――
混沌の淵で目覚めたブーニベルゼは、その力の大半を失っていた。
故に彼が求めたのは、己が力を分けた子の回収―――その標的となったのが、死して混沌に溶け入っていたエトロのクリスタルだった。
しかしカイアスがそれを許さず介入、少女も彼と共に戦った。
だが、力の大半を失っていようと神は神。
「あれから13年。カイアスはよく保たせてくれているけど、限界も近いかも」
「事実、ルミナたちは一度ヴァルハラに落とされていますからね…」
「寧ろ、カイアスがヴァルハラに引き寄せて、あの神の手から護ったのかも。…バルトアンデルスが絡んできたから、それだって完璧じゃなかったけど」
少なくとも、彼は最善を尽くしてる。そう言って黒衣の少女は肩をすくめる。
「じゃあ、あのシ界は…ブーニベルゼが可視世界に開こうとしている門、なの?」
「そういうこと」
頷く少女に、レインが頭を掻いて手を上げる。
「んじゃ、ルミナを一人にしとくとまた攫われるかもしれねぇから、同行を許可するってことかよ?」
「半分正解。ルミナだけじゃなく、貴方たち3人全員、よ」
少女の声に、レインとエクスは顔を見合わせた。
「奴―――ブーニベルゼは、私を解放者にしたときに、セラの蘇生を条件にしたんだ。嘘だったわけだが…」
「なるほど、俺たち全員目を付けられていてもおかしくない、ってわけか」
「そういうこった。なぁに、まとめて守ってやるから安心しろって!」
スノウの声に、エクレール、ホープ、ノエルが同時にやれやれと首を振った。
「無論、同行してもらう以上、今まで通り戦力として数えさせてもらうがね。熟達した
「望むところだってんだ!」
「みんな一緒なら、大丈夫!」
威勢よく言うレインとルミナに、エクスは肩をすくめて応じる。
だが、否定はしない。それが彼なりの意思表示なのは、皆が知っていることだった。
「今後の方針だが、まずは最後のシ界の攻略を進める。その後、彼の神の調査を進め、可能であれば討伐、今度こそ―――」
「溶ける間もなく沈めてやるさ」
エクレールの強い意思表示に、レインズが苦笑いで応じる。
「では、第三のシ界―――AF400年頃のサンレス水郷についてお話しますね」
リーナが話を引き取った。