第8章 巨兵の大戦

アトラスΩが叫ぶ。
振るおうとした腕を、ロングイたちが噛みついて止める。
「今です!」
「わかった!」
ルミナとエクスが、それを伝って駆け出す。
それを狙ったかのように出現し、落下してくる石柱。
「やらせるかっての!」
後に続いたファングが片方を槍で弾き飛ばし、反対側のはセラとレインが射落とす。
障害の失せた二人は、激戦でヒビの入ったコアへと到達する。
「エクス!」
「合わせる!」
エクスが大きく叩きつけてヒビを更に深くしたところに、ルミナが全体重を乗せて剣を突き入れた。
「っ!!」
同時に混沌カオスが溢れ出し、ルミナが口を押える。
「ルミナ!」
「大丈夫よ、もうだいぶ思い出してるんでしょ?」
エクレールの隣で、相変わらず心配性ねと少女が言う。
果たして、崩れ落ちていくアトラスΩの頭から、ルミナとエクスが跳躍して戻ってきた。
「おかえり、二人とも」
「お疲れ~!」
ヴァニラに抱きつかれ、ルミナは笑顔で抱き返した。
「さて…あ、またいねぇ!」
ファングの声に振り返れば、黒衣の少女は再び消えていた。
「…神出鬼没なところもそっくりですね、“あの”ルミナと」
「だな…」
エクレールの疲れた顔に、ホープも苦笑いする他なかった。


「あ、遅かったじゃない」
その当人がシ界の外で待っていたものだから、エクレールは盛大に顔を顰める羽目になった。
「お前が速すぎるんだ。どうやってここまで来た」
「そりゃちょいちょいとテレポでね。もうレインズ君には報告してあるわよ」
「レインズ“君”って…」
「正直、度肝を抜かれたがね。幸い、サッズ君の知り合いとのことだったからね」
レインズさえちょっと疲れた顔をしている。その後ろから顔をのぞかせたサッズなど言わずもがなだ。
「で、結局お前は何者なんだ?」
「ん~…」
エクレールの問いに少し考えこむ少女。
「転生できなかった魂。生まれられなかった魔物。壊れ果てた機構ファルシの骸。どれだと思う?」
「……訊いているのはこっちだぞ」
「残念、正解は全部でした!正に混沌カオスって感じよね」
どや、と腰に両手を当てる少女に、エクレールは今度こそ深い溜息を吐いた。
「ホープ。頼む」
「押し付けないでくださいライトさん」
「私は無理だ。殴りたくなる」
「自分自身に厳しいわね、相変わらず」
「違うだろう。“あの”ルミナは、あの時確かに私の下に還った」
「えぇ、“貴女の”ルミナは、ね」
肩をすくめる少女。
「けれど、彼女の協力していた魂たちは、また混沌に還り損ねた。溶け入ることもできずに彷徨って、同じように彷徨っていた者たちと一つになった」
それが私。少女はトンと己の胸を突いた。
「取り残された者たちの集合体。ユールたちの“次”に現れた、不可視の混沌の再来。ある意味、歴史は繰り返すって真実かも」
「え?」
視線を向けられたルミナが首を傾げる。
「貴女がヴァルハラで拾ったクリスタル。あれ、私だったのよ?気づいたなかったのね、その様子だと」
「え?あ、そういえば…!」
ポケットを今更まさぐるルミナに、少女はやれやれと首を振った。
「…なら、君をこのまま放置するのは危険ということかね?」
「そうかもしれないけれど、殺して死ねるならとっくに還ってるわよ?それに、世界を壊すのは御免っていうのは、“私たち”の共通の結論でもあるし」
だからアイツの手から逃れたわけだもの。
最後にそう付け加えた少女に、ホープが目を見開く。
「まさか、“アイツ”って」
「えぇ、ご明察」
少女は笑う。
「混沌を知った輝ける神、ブーニベルゼよ」
10/10ページ
スキ