第8章 巨兵の大戦

「こりゃすげぇなぁ。見渡す限りいるわいるわ」
「数えてみる?」
「やめておけ。うんざりする」
崖の上から荒野を見下ろし、殴り合う巨兵たちを眺めるファングたちに、エクレールが首を振る。
「計器はどうだ?」
「駄目です、振り切れてます」
陣地を構築していた騎兵隊員が、質問したリグディに首を振る。
「まぁ、想定内です。どうです、リーナ?」
「ん~~~…ちょっと解析に時間をください。少なくとも、あの巨兵全部薙ぎ倒すよりはマシな結論が出るはずです」
「うちらはそっちでも構わねぇけど?」
ファングの笑い声に、恐らくその場のほぼ全員が「勘弁してくれ」という顔を向けた。
「ひとまず、解析を待ちましょうか。お茶でも入れますね」
ホープがそう手を叩いた。


陣地の構築と周囲の調査を進める間、ホープと待機していたルミナたち。
そこに、エクレールが急ぎ足で戻ってきた。
「どうしたの?母さん」
「ノエルとセラは?モーグリは…いるな」
「クポ?」
「父さんなら巡回。セラ小母さんならスノウ小父さんと一緒じゃないか」
「どうされましたか、ライトさん」
「これだ」
エクレールが置いたのは、紛れもなくセラとノエルの武器だった。
「あぁ、だからモーグリの所在も…」
「機能停止したアトラスのコアにこれが刺さっていたんだ。何か知らないかと」
「わかりました、呼んできましょう」
ホープが通信機に手をかけた。


「ごめんお姉ちゃん、私も何が何だか…」
「皆目。俺の武器なのは間違いないけど、俺もセラも記憶にない」
「そうか…」
「あの…」
ひょこっと顔を出したリーナが申し訳なそうに手を上げている。
「どうしましたか、解析は?」
「そっちは終わりました。報告に来たら、気になる話が聞こえたので」
「何かわかるの、リーナちゃん?」
セラの問いかけに、リーナは少し申し訳なさそうな顔をしてから口を開く。
「えっと…シ界のアガスティアタワーで、私が貴女のデュプリケートを使って接触を試みたのは覚えてますよね?」
「……それが?」
明らかにイラっとしたエクレールの声に、リーナは「だから言いたくなかったんですよぉ」と小さく漏らす。
「母さん。怒るよ」
リーナを抱きしめて膨れるルミナ。
「ルミナ……」
「ええと、続けますね。あれ、一言で言えばセラさんとノエルさんが私に…アダムに敗北した歴史の産物なんです」
「つまり、俺たちが負けてデュプリケートにされた歴史、ってこと?」
ノエルの言葉にリーナが頷く。
「実際にはそうはならなかったとしても、“その可能性”はあった。きっとこのシ界は、そういう可能性の凝集体なんだと思います。だから、今回の場合は―――」
「お袋とノエルさんが直接この大戦に乗り込んで、力及ばず…っつー可能性か?」
「………趣味の悪い」
エクレールの声色が恐ろしく低い。
「同感ですけど、落ち着いてください。ルミナが怯えてますよ」
「母さん、怖いよ…?」
「…すまない」
「いえ、仕方ありませんよ。私も正直、気分が悪いので」
どうどうと総がかりでエクレールを宥める。
「で、解析の方は?」
「あ、はい。シ界の中心に大きな矛盾パラドクス反応があったので、偵察用のドローンを飛ばしたんです。その結果…」
「結果?」
「制御装置の残骸が発見されました。恐らく、“それ”がシ界の根源かと」
「制御装置の残骸が?」
ホープが考え込む。顔を見合わせる面々も、何故それが?と言いたげな顔だ。
「…それ、完全破壊と修復のどっちが解決のカギだと思います?」
「後者じゃないですかね?制御装置の損傷が、この大戦の激化を招いたとするなら」
一つだけ分かったことがある。
「……厄介ですね」
今回は、長期戦になるということだ。
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