第1章 過世の追走

「そういや、ホープさんはいないのか?珍しいな」
「うん、合流は夜になるって。ど~~~~~っしても外せないお仕事があるんだって、すごく悔しそうだった」
「伯父さん、毎年うちに来るの楽しみにしてるもんなぁ」
一緒に荷解きをしながら、そんな会話をしたのが数時間前。
「ルミナ」
夕暮れの海辺で佇んていたルミナに、エクレールが歩み寄る。
「スノウも戻ったからそろそろ夕飯だぞ。…まさか、ずっとここで待っていたのか?」
「うん。父さん、待ちきれなくって」
エヘヘ、と頭を掻く娘をポンポンと撫でるエクレール。
「ホープが着くのは夜遅くだそうだ。早く寝ないと、明日の朝起きられないぞ」
「はぁーい」
正論だが身も蓋もない言葉に、口を尖らせるルミナ。
その耳に、異音が響く。
「……羽音?」
「何?」
周囲を見回したエクレールがハッとして厳しい顔になる。
気付けば二人は、青い羽根を持つ巨大な虫に囲まれていた。
「なに、こいつら……!?」
「メイオベントス……何故ここに!?」
知ってるの、と問いながら怯えしがみつく娘を背に庇いながら、エクレールは腰に手を回して思わず舌打ちした。
昔の癖で得物を探る手は空を切る―――はずだった。
頼もしい重みを掴んだ手を思わず二度見する。
愛剣ブレイズエッジ―――ではなく、女神の騎士として戦っていた頃に使っていたオーバーチュアだ。
「何故……っ!」
疑問を脇に追いやって、飛び掛かってくる魔物を切り払う。
そのまま流れるように銃撃を数発撃ちこんで道を切り開き、娘の手を取って走り出す。
「母さん、また来る!」
「わかってる!お前は逃げろ!」
「置いてけないよっ!」
前方に立ちふさがったネクトンを銃撃しようとして、横から割って入ったメイオベントスに阻まれて舌打ちするエクレール。
その横から駆け出したルミナが、回し蹴りで比較的小さなネクトンたちの群れを薙ぎ払った。
「……怖くないのか」
「母さんがいるから!」
拳を震わせながら構える娘に息を吐き、エクレールも構えなおす。
「なら、二人で切り抜けるぞ」
「うんっ!」
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