第8章 巨兵の大戦

「で、結局この会議って何なんだ?」
「随分脇道に逸れてしまったが…要はリーナ譲の協力の甲斐もあって正式な調査用装備の供与が可能になったからね。そして現地からの調査結果が来たのがさっき、ということさ」
若干疲れた顔のレインズに、リーナとホープがそっくりに肩をすぼめる。
「こちらに関しては僕も…ノエル君やセラさんもよく覚えていることかと」
「また歴史の矛盾パラドクス?」
「はい。AF005年に現れた巨人アトラス…それが多数、争っているようでした」
「巨人大戦…」
ノエルが呆然と呟く。彼が記憶している、言い伝えにあった大戦だ。
「私の時と言い、今回といい…パラドクスの解決と、それに伴って変わった歴史の中に消えたモノが中身のようですね」
「僕が記憶している…そしてリーナが参照できるアカデミーの記録によると、お二人が何かしてアトラスを弱体化させて撃破したとか」
「うん。アトラスと一緒に、その制御装置が顕れてたから、それで」
「なるほどな」
レインズが顎に手を当てる。
「であれば今回は制御装置を捜索してアトラスを弱体化、そして撃破…という流れになるな」
「問題は…あの時みたいにアトラスが一体だけじゃないってことだ」
ノエルが難しい顔で言う。
「シンプルに大きい、ってのが脅威ですからね、アトラスは。単純な兵器ということで、私みたいに変にバグってるということもあまり期待できませんし」
自分で言うのかそれ。微妙な空気が漂ったが、スノウが空気を読まないくしゃみをしたことで事なきを得た。
「スノウ?」
「あぁ、わりぃ」
「とにかく、制御装置を捜索する部隊と、その後にアトラスを討伐する人員が必要ってことだな?」
「そこで問題なんですが」
リーナがひとつ指を立てる。
「そもそも制御装置、生きてますかね?」
「どういうこと?」
「コクーン落下の危機に、人類は生存圏を懸けた争いを始めた。それに歯止めがきかなくなり、結果としてコクーンの落下を早める結果となった…それが巨人大戦のあらましだと理解していますが」
「…戦争の最中に制御装置をぶっ壊しちまったって言いたいのか?」
レインの疑いの声に、リーナが頷く。
「勝ち目のなくなった人間は、全体の利益より相手の不利益を優先するようになる、と相場が決まっていますから。どうせ勝てないなら、制御装置の枷を外してアトラスに暴れさせてしまおう…とか、ありそうじゃないですか?」
「否定できないな…」
エクレールが眉を顰める。
「えっと、じゃあ、探しても意味がないかもってこと?」
「振り出しか…?」
「ま、そういうことですね。正面突破の方がまだ分のいい賭けかもしれないってことです」
せめてアカデミーが制御装置を調べられていれば…とリーナが首を振る。
「あの、さ」
ルミナがおずおずと手を上げる。
「そもそも、そのシ界の主…歴史の矛盾パラドクスの大本?がそのアトラスで確定…でいいのかな?」
その言葉に、はっとする面々。
「確かに、先入観からアトラスが原因と見ていましたが…」
「今回はアトラス“たち”だからな…原因が何なのかまでは、まだ未確定ってことか」
ノエルの言葉に、レインズが頷く。
「詳細な行動方針は現地での調査結果次第、か。ともあれ、巨兵の群れに対抗できる戦力を用意しなくてはな」
「では、こちらもそのように準備しておきますね」
ホープの言葉を〆に、会議は終わる。


なお、スノウはいつからか寝こけていたのでエクレールにたたき起こされた。
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