第7章 反撃の狼煙
その日の夜。
現地でホテルを取り、翌朝に帰還することになったホープは、ロビーで仕事を片付けるべくPCを開いた。
「…まだ起きてるんですか?」
「…それはこちらのセリフですが…ルミナは?」
そこに歩み出てきたリーナに顔を上げ、ホープは首を傾げる。
「寝てますよ、ぐっすり。見習っては如何ですか、マスター・ホープ」
「そういうわけにもいかなくてね…」
苦笑いするホープが開いたPCを覗いたリーナが、眉を寄せる。
「なんですかこの…稚拙を通り越して冒涜的なマジック=ギアは」
「えっ。…わかります?」
「わかりますも何も、私はAF10年代の設計とはいえ、AF400年までアップデートを繰り返したAMP技術の塊ですよ?自分のことならわかります」
横から手を伸ばして回路図を弄りだす少女。その無機質な輝きを宿した瞳を見て、ホープは思わず口を開いた。
「貴女は、僕を恨んではいないのですか?」
「……恨みは…抱いていませんね。あの時代の技術では、コクーンを浮かべるためにはファルシの魔力が必要で、そうなるとエデンの素子は必須で、干渉を防ぐ手立てもありません。『そもそも製造しない』という判断は、間違っていませんし、唯一の解決策かと」
カタカタとPCを叩く手を止めないまま、リーナは淡々と言った。
「…そうですか」
「……ただ…」
ホープに向いた無機質な瞳が、瞬きと共に悲し気なうるみを宿す。
「そう理解したあの時の感情を…悲しい、というのでしょうね。それが正しいのだとしても…いえ、だからこそ、私の存在が貴方にとって害にしかならなかった…なれなかったことが、悲しかった」
「リーナ……」
「はい、リーナです。……アダムとしては、貴方のお役に立てなかった私ですが…リーナとしてなら「いいえ、違いますよ、リーナ」……はい?」
ホープはそっとリーナの頭に手を乗せる。
「役に立つとか、立たないとかじゃなくて…健やかに、幸福であってくれればいいんです。親が子に望むことなんて、そんなものですよ」
「ですが…」
「人間になるというのは、そういうことですよ、リーナ」
頭を撫でられ、無意識に頬をほころばせながらリーナは眉を困らせる。
「……いいのでしょうか。あの世界で、あの歴史で、多くの人々を苦しめた私が…」
「いいでしょう。その歴史は、セラさんや僕たちが打ち壊しましたから」
「それは…まぁ、そうですが………」
難しい顔をするリーナ。
そこに扉が開く音がして、二人は顔を上げた。
「ルミナ…?」
「あれ、寝てたはずでは…?」
「リーナだけずるぅい……」
寝ぼけ眼でよたよたと歩み寄ってきたルミナが、その体重をリーナに投げ出す。
「…ルミナ?」
「寝てますね…」
二人で顔を見合わせる。
「…私はルミナを寝かせてきますね。マスター・ホープもどうかお休みください」
「そうさせてもらいます」
ホープは苦笑いして、PCを閉じた。
現地でホテルを取り、翌朝に帰還することになったホープは、ロビーで仕事を片付けるべくPCを開いた。
「…まだ起きてるんですか?」
「…それはこちらのセリフですが…ルミナは?」
そこに歩み出てきたリーナに顔を上げ、ホープは首を傾げる。
「寝てますよ、ぐっすり。見習っては如何ですか、マスター・ホープ」
「そういうわけにもいかなくてね…」
苦笑いするホープが開いたPCを覗いたリーナが、眉を寄せる。
「なんですかこの…稚拙を通り越して冒涜的なマジック=ギアは」
「えっ。…わかります?」
「わかりますも何も、私はAF10年代の設計とはいえ、AF400年までアップデートを繰り返したAMP技術の塊ですよ?自分のことならわかります」
横から手を伸ばして回路図を弄りだす少女。その無機質な輝きを宿した瞳を見て、ホープは思わず口を開いた。
「貴女は、僕を恨んではいないのですか?」
「……恨みは…抱いていませんね。あの時代の技術では、コクーンを浮かべるためにはファルシの魔力が必要で、そうなるとエデンの素子は必須で、干渉を防ぐ手立てもありません。『そもそも製造しない』という判断は、間違っていませんし、唯一の解決策かと」
カタカタとPCを叩く手を止めないまま、リーナは淡々と言った。
「…そうですか」
「……ただ…」
ホープに向いた無機質な瞳が、瞬きと共に悲し気なうるみを宿す。
「そう理解したあの時の感情を…悲しい、というのでしょうね。それが正しいのだとしても…いえ、だからこそ、私の存在が貴方にとって害にしかならなかった…なれなかったことが、悲しかった」
「リーナ……」
「はい、リーナです。……アダムとしては、貴方のお役に立てなかった私ですが…リーナとしてなら「いいえ、違いますよ、リーナ」……はい?」
ホープはそっとリーナの頭に手を乗せる。
「役に立つとか、立たないとかじゃなくて…健やかに、幸福であってくれればいいんです。親が子に望むことなんて、そんなものですよ」
「ですが…」
「人間になるというのは、そういうことですよ、リーナ」
頭を撫でられ、無意識に頬をほころばせながらリーナは眉を困らせる。
「……いいのでしょうか。あの世界で、あの歴史で、多くの人々を苦しめた私が…」
「いいでしょう。その歴史は、セラさんや僕たちが打ち壊しましたから」
「それは…まぁ、そうですが………」
難しい顔をするリーナ。
そこに扉が開く音がして、二人は顔を上げた。
「ルミナ…?」
「あれ、寝てたはずでは…?」
「リーナだけずるぅい……」
寝ぼけ眼でよたよたと歩み寄ってきたルミナが、その体重をリーナに投げ出す。
「…ルミナ?」
「寝てますね…」
二人で顔を見合わせる。
「…私はルミナを寝かせてきますね。マスター・ホープもどうかお休みください」
「そうさせてもらいます」
ホープは苦笑いして、PCを閉じた。