第7章 反撃の狼煙

一度陣地に戻ろう、という話になった直後。
「おい、アレ―――」
スノウが天を指す。
そこに舞ったのは、白いフクロウ。
「―――まさか!」
エクレールが武器を抜くと同時に、天から老人が降り立った。
「―――バルトアンデルス!」
レインズが鋭く叫ぶ。
「飼い主を呼び捨てか?偉くなったものだな」
嘲り笑うバルトアンデルス。レインズを護るように、騎兵隊が陣形を組んで銃を構えた。
「お前たち―――」
「また傀儡にさせられるかよ」
リグディが険しい顔で言う。
それを鼻で笑い、バルトアンデルスは視線をルミナたちに向ける。
「順調に思い出しているようで何よりだ。無能無知なる女神エトロよ」
「…多少はね。でも…だからこそ、貴方の思い通りにはならないよ」
武器を構えるルミナ。
「相変わらず、何も見ておらぬようだな」
「何?」
「貴様が救ったのは、我が配下だぞ?」
「っ!」
ルミナがパッと振り返る。
「エデンよ。女神を捕え我が下へ!」
「あぁっ!?」
アダムが頭を押さえて蹲る。
「エデンだと?」
「…計画では、デミ・ファルシ=アダムの作成には、コクーンから回収したエデンの素子を使用する予定でした」
「それを使って命令を下しているのか!?」
「ご名答だ。君には感謝しなければならないな?ホープ・エストハイム」
親子揃ってご苦労なことだ。嘲笑するバルトアンデルスに、エクレールは知らず拳を握りしめていた。
「ルミ、ナ、様……にげ、て―――」
「ふむ?機械としての思考が邪魔をしているのか。ならば―――」
バルトアンデルスが電撃の魔法を放つ。まともに受けたアダムは、悲鳴と共に身を横たえた。
「アダム!」
「癒すかね?その次の瞬間、君を襲うというのに」
勝利を確信したバルトアンデルスが笑う。
「テメェ―――うおっ!」
殴りかかったスノウが弾き返されて転がる。旅の中で幾度か見た光景だな、とどこか他人事のように思った。
同時に、ふと思い当たったことが口を突いた。
「まさか、デミ・ファルシ計画を進めた場合、例外なく未来からの干渉で人々の管理を始めたというのは―――」
「気づいたかね?そうだ、エデンの素子に刻まれた使命がそれをさせるのだよ。ああ、そういう意味では…最初から造らないという判断は正しかったな?全て、愚かな娘のせいで無に帰したが」
ホープは臍を噛んだ。ルミナはバルトアンデルスの言葉に構わず、アダムを癒している。
「アダム!アダム!目を覚ましてよっ……!」
「……まさか、強制停止することで使命を拒否しているのか?強情な…」
ホープの背を、ユールがつついた。
「ユールさん?」
「混沌は既に贈られている。必要なのは、人の証明」
「人の…?」
「あの子はもう、ただの機構じゃない」
ホープはハッと目を見開いた。
アダムは、ルミナの奇跡を受けている。
女神の奇跡は、混沌カオスによって実現される。
ならば―――
「…なら、アダムという名は不適切ですね」
「ホープ?」
眉を寄せて問うエクレールを抑え、ホープは声を張り上げる。
「起きてください、アダム―――いいえ」
一呼吸。
女神が人に混沌を送るように。親は子に、名を贈る。
「リーナ・エストハイム!」
その瞬間―――
少女の瞳が、開かれる。
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