第6章 零落の楽園
幾度か軍用獣や機械、シ骸の襲撃を退け、ルミナたちは塔を登る。
その途中、見つけた一室の端末を調べることにした。
「どうだ、ホープ」
「問題ありませんね。ほら、デミ・ファルシ計画の資料もあります」
「見覚えあるな…ん?これは?」
画面をスクロールさせたノエルが一つの記録に気付いて止めた。
「『タイムトラベラーを素体としたデュプリケートの活動記録』…?これ、セラさんやノエル君の、ですよね?」
「でも、おかしくねぇか?書いてある通りなら、二人とも負けちまったって、そんなわけないだろ?」
「当然。本当にそうなら、俺もセラもここにいない」
「…ねぇ、こっち見て」
もう一つの端末を弄っていたルミナがホープをつつく。
「そっちの端末と同じ日付の記録なのに、内容が違う」
「うっかり間違えたんじゃねぇの?」
「ヒューマンエラーとは無縁だろう、ここの主は」
更に詳しく調べようとしたエクスの操作は、権限不足と弾かれる。
「ホープさん、頼む」
「これ、最上位権限ロックですね。僕の操作権限が残っているといいんですが…」
ホープが手早く宙に浮かんだキーを叩くと、警告のウィンドウは消えうせた。
「あ、通りましたね。意外です」
「ホープ…?」
「いえ、いざとなればクラックする必要があるかと構えていたんですがね」
「あれ、この記録…書き方おかしくないか?」
「今まで全部AF歴だったのに、一日目、二日目、三日目しかないぞ…?」
「…とりあえず読んでみましょうか」
ホープが端末を叩く。
一日目。
状況不明。エラー発生。
外部との交信不能。時間軸の干渉不可。
記録日付に重複在り。複数の時間軸の記録と推測。
記録内容の確認を急ぐ。
パラドクスであるならば、早急に対策を打つ必要がある。
二日目。
演算の結果、パラドクスの原因がデミ・ファルシ=アダムと断定。
この結論は覆らない。尤も確度の高い結末において、私は“そもそも作られない”歴史に切り替わったと推定される。
だが現実に―――これが現実かという観念的な議論は不毛とする―――この私は存在を継続している。
このアガスティアタワーのみが歴史から切り離されたのだろうか?
演算を継続する必要がある。
三日目。
外部から人間の進入を確認。パラドクス現象による魔物の発生を検知。
人間たちの装備は、AF0年代からすら大いに劣っていると断定。戦闘型デュプリケートを派遣し、早急な撤退を支援する。
外部から内部への観測結果の聴収に成功。結論は覆らなかった。
矛盾 は、正されなければならない。
「…これは……」
「このシ界が発生してからの、記録?」
「間違いないだろうな」
エクレールが腕を組む。
「デミ・ファルシ=アダムも、この事件で利用された被害者なのかな…」
「だとしたら、話をしたら案外どうにかなったりしてな」
「楽観!あいつの所業、セラが話してただろ!?」
ノエルにどつかれたスノウが脇腹を大げさに押さえる。
「…どちらにせよ、アダムがこのシ界…パラドクス現象の原因であるなら、取り除かなくては解決できません」
「そしてファルシは、自らを破壊することができない。…デミ・ファルシもそうなのか?」
「はい。急にボイコットして、またコクーンが落ちるなんてことになってはいけませんから」
「……それはそうだがな……」
「結局は、それ以前の問題だったわけですがね」
ホープは苦笑した。
「ルミナ、納得いってないな?」
「……うん。アダムも被害者なら、私は問答無用で倒すなんてこと、したくない」
「どうかな。記録を見る限り、倒されることを望んでる節すらあるんじゃねぇの?」
レインが頭を掻いて言う。
「そうだけど………そうだけど………!」
「…覚悟は決めておいた方がいいぞ」
言い残して歩き出すエクスと、励ますように肩を叩いてその後を追うレイン。
独り拳を握りしめたルミナは、ポケットに仕舞って持ってきた輝きに気付く。
「あの時の…?」
ヴァルハラで拾った、紫に禍々しく輝くクリスタル。
「………うん、わかった」
しばらく見つめた後それを仕舞い直し、ルミナもまた駆け出した。
その途中、見つけた一室の端末を調べることにした。
「どうだ、ホープ」
「問題ありませんね。ほら、デミ・ファルシ計画の資料もあります」
「見覚えあるな…ん?これは?」
画面をスクロールさせたノエルが一つの記録に気付いて止めた。
「『タイムトラベラーを素体としたデュプリケートの活動記録』…?これ、セラさんやノエル君の、ですよね?」
「でも、おかしくねぇか?書いてある通りなら、二人とも負けちまったって、そんなわけないだろ?」
「当然。本当にそうなら、俺もセラもここにいない」
「…ねぇ、こっち見て」
もう一つの端末を弄っていたルミナがホープをつつく。
「そっちの端末と同じ日付の記録なのに、内容が違う」
「うっかり間違えたんじゃねぇの?」
「ヒューマンエラーとは無縁だろう、ここの主は」
更に詳しく調べようとしたエクスの操作は、権限不足と弾かれる。
「ホープさん、頼む」
「これ、最上位権限ロックですね。僕の操作権限が残っているといいんですが…」
ホープが手早く宙に浮かんだキーを叩くと、警告のウィンドウは消えうせた。
「あ、通りましたね。意外です」
「ホープ…?」
「いえ、いざとなればクラックする必要があるかと構えていたんですがね」
「あれ、この記録…書き方おかしくないか?」
「今まで全部AF歴だったのに、一日目、二日目、三日目しかないぞ…?」
「…とりあえず読んでみましょうか」
ホープが端末を叩く。
一日目。
状況不明。エラー発生。
外部との交信不能。時間軸の干渉不可。
記録日付に重複在り。複数の時間軸の記録と推測。
記録内容の確認を急ぐ。
パラドクスであるならば、早急に対策を打つ必要がある。
二日目。
演算の結果、パラドクスの原因がデミ・ファルシ=アダムと断定。
この結論は覆らない。尤も確度の高い結末において、私は“そもそも作られない”歴史に切り替わったと推定される。
だが現実に―――これが現実かという観念的な議論は不毛とする―――この私は存在を継続している。
このアガスティアタワーのみが歴史から切り離されたのだろうか?
演算を継続する必要がある。
三日目。
外部から人間の進入を確認。パラドクス現象による魔物の発生を検知。
人間たちの装備は、AF0年代からすら大いに劣っていると断定。戦闘型デュプリケートを派遣し、早急な撤退を支援する。
外部から内部への観測結果の聴収に成功。結論は覆らなかった。
「…これは……」
「このシ界が発生してからの、記録?」
「間違いないだろうな」
エクレールが腕を組む。
「デミ・ファルシ=アダムも、この事件で利用された被害者なのかな…」
「だとしたら、話をしたら案外どうにかなったりしてな」
「楽観!あいつの所業、セラが話してただろ!?」
ノエルにどつかれたスノウが脇腹を大げさに押さえる。
「…どちらにせよ、アダムがこのシ界…パラドクス現象の原因であるなら、取り除かなくては解決できません」
「そしてファルシは、自らを破壊することができない。…デミ・ファルシもそうなのか?」
「はい。急にボイコットして、またコクーンが落ちるなんてことになってはいけませんから」
「……それはそうだがな……」
「結局は、それ以前の問題だったわけですがね」
ホープは苦笑した。
「ルミナ、納得いってないな?」
「……うん。アダムも被害者なら、私は問答無用で倒すなんてこと、したくない」
「どうかな。記録を見る限り、倒されることを望んでる節すらあるんじゃねぇの?」
レインが頭を掻いて言う。
「そうだけど………そうだけど………!」
「…覚悟は決めておいた方がいいぞ」
言い残して歩き出すエクスと、励ますように肩を叩いてその後を追うレイン。
独り拳を握りしめたルミナは、ポケットに仕舞って持ってきた輝きに気付く。
「あの時の…?」
ヴァルハラで拾った、紫に禍々しく輝くクリスタル。
「………うん、わかった」
しばらく見つめた後それを仕舞い直し、ルミナもまた駆け出した。