第5章 激震の世界

「そうですか、ルミナが……」
ホープが難しい顔で顎に手を当てる。
一晩休んだ後、ルミナたち―――というか主にエクスが―――何があったかを話した。
そして大人たちは、『かつてあった世界』での出来事を子供たちに説明することになった。
「で、なんでルミナはずっとこの調子なんだ?」
話し終わっても俯いたまま、居心地悪そうに黙っている少女を指してエクスが問う。
「それがさっぱりなんですよね…僕たちは彼女―――女神エトロの齎した“奇跡”に助けられることも多かったのですが。カイアス相手ならわかりますけども」
「だよなぁ」
スノウが頭をガリガリと掻く。
「嬢ちゃん、言ってくれよ。話してくれねぇとわかんねぇぞ?」
「…………話しても、怒らない?」
おずおずと上目遣いで問うルミナに、大人たちは各々頷いた。
「えっとね…私、考えなしに色々手を出して…それが結局、みんなを苦しめちゃって…だから」
「確かに、色々振り回されはしたな」
エクレールが溜息を吐く。おいおい、と咎めようとするスノウを制止し、そのまま娘の頭を撫でる。
「だが、私は彼女に怒ってはいない。そもそも、お前はルミナだ。私とホープの娘だ。女神エトロじゃない」
「それ、カイアスも似たようなこと言ってたな。『それはかの女神が負うべき過ちだ。貴様のものではない』…って」
「あいつが?」
因縁深いエクレールが複雑そうな顔をする。
「でも……」
「気持ちはわかるさ。『あの世界』の記憶に引っ張られるのはな。私たちはもしかしたら、それに囚われ続けているのかもしれない」
だからこそ、とエクレールはしゃがみ、ルミナと視線を合わせる。
「お前には、この世界の人間として―――私たちの娘として、未来を向いて生きてほしいんだ。それは、お前が何者であろうと変わらない」
「母さん……」
抱き寄せる腕に従い、母の胸に顔を埋めたルミナが肩を震わせる。
「だいぶ悩んでやがったんだなぁ…」
「…そうだ。それで思い出した。奴―――バルトアンデルスだったか?が、『還るべき主を思い出せ』って言ってたんだ。心当たりはあるか?」
全員の顔がはっきりと険しくなる。
「あぁ、いる。ただ、そいつは新しい世界に転生する前に、義姉さんと、みんなで、力を合わせて倒したはずなんだ」
「ですが、相手が相手ですからね。力を取り戻して、彼女の存在に気付いて求めだしたとしても不思議はありません」
「そいつは―――」
かつての世界の話、その最後に出てきた者。
「ええ。リンゼに連なるファルシ・バルトアンデルス。パルスに連なるファルシ・ダハーカ。これらを従え、エトロの生まれ変わりを狙う者―――あの輝ける神、ブーニベルゼ以外にあり得ません」
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