第3章 運命の対峙

「ユール、大丈夫か?」
「うん。…いつまでも、セラに心配かけるわけには、いかないから」
カフェでグラスを洗いながら、ユールは気丈に接客しているセラへ視線を向けた。
「無理してないといいんだけどねぇ…」
料理を手早く作っているレブロが呟く。
そんな視線を知ってか知らずしてか、セラは入店してきた客に笑顔を向け…そしてその表情をすぐに驚きに変えた。
「久しぶりだな、嬢ちゃん」
「セラ姉ちゃん、久しぶり」
「サッズさん!?ドッジ君まで!」
「私もいるわよ?ちょこちょこりんりん!」
「チョコリーナまで!?」
常日頃から忙しいはずのカッツロイ親子、更に神出鬼没のチョコリーナまで現れて、セラのみならずカフェで働いていた面々は顔を見合わせた。


「…とりあえず、今回はドッジ君が巻き込まれてなくてホッとしました」
「言うねぇ…俺ぁ正直、今にも消えねぇかひやひやしてるけどよ」
「心配しすぎだよ父ちゃん。……いや、わかるんだけどさ。わかるんだけどさ」
若干乾いた笑いを漏らすドッジ。
「それで?いったいぜんたい何の用だ」
「姉ちゃん、急かすなよ。あの頃みたいな剣呑なツラしてるぜ?」
鋭く目を細めるエクレールに、サッズが両手を上げながら言う。
「えっと、今日用があるって言ったのは父ちゃんじゃなくて、ねえちゃんなんだよ」
「チョコリーナが?」
「おうよ。今朝、鬼気迫る顔で『ライトニングたちに伝えないと!』ってよ」
エクレールはホープと顔を見合わせた。ライトニングとは、当然ながらエクレールの古い名である。
「お前が…?」
「何よぉ。そんな顔しないでいいじゃない」
「いや、貴女の鬼気迫る顔というのが、想像がつかなくて」
ホープやエクレールが覚えている彼女は、あの世界の終末でさえ持前の明るさを失わなかった姿だ。その彼女の鬼気迫る顔というのがどうも思い浮かばない。
「で?そうまでして伝えないといけないことは?」
「ルミナちゃんたちよ!やっと見つけたの!!」
「――――っ!?」
ガタッと立ち上がったエクレールが、神速の足運びでチョコリーナに迫る。驚いて飛び退いた彼女を追い、そのまま壁際で逃げ道を塞いだ。
アレは所謂壁ドンという奴ではなかろうか。僕もされたいなぁ、と半ば呆然としたホープの脳裏に、益体のない感想が浮かんだ。
「ちょ、落ち着いて?」
「落ち着けるか、これで。それで?あの子たちはどこだ?」
「ヴァルハラに残ってるモーグリたちの里よ」
「ヴァルハラ?モーグリの里だと?」
記憶に残る地名を聞いて、ようやくエクレールが止まる。
「……これは、ちゃんと話を伺った方がよさそうですね。他の皆さんも呼んできます」
「お願いね~」
ようやく壁から解放されたチョコリーナが、ひらひらと手を振った。
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