LIFE IS BEAUTIFUL
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その日、玄関のインターフォンが鳴ったのは、22時を過ぎた頃だった。
「すみません、遅い時間に」
サングラスこそ外しているものの、いつものスーツ姿で、七海建人は少々申し訳なさそうな様子で玄関の鍵を閉める。
いつものスーツ姿という事は、直前まで高専の関係者と一緒にいたのだろうか。定時はとっくに過ぎているのに、珍しい。
もしかしたら何かあったのかもしれないと思い、こっそり上から下まで眺めてみるも、特段変わった様子はない。
「問題ないよ。私、明日休みだから」
もっと言うと、特に予定のない休日。だからこそ、今夜は久々に夜更かしでもしようかと思っていたところなのだ。
紫陽子の言葉に、七海はほっと表情を緩める。
「どうしても、無性に……紫陽子に会いたくなったんです。……今日でなければいけない気がして」
穏やかな声音に混じった焦燥と、紫陽子を見る眼差しに映る愛情と名の付く想いに気付きながら、紫陽子の意識は少しずれたところにあった。
夕飯がまだならシチューを温め直して、それとも、先にお風呂の方がいいだろうか。
色々とこの後の事を考えながら来客用のスリッパを出し、くるりと七海に背を向けた時、そのわずかな一瞬に動きを封じられる。
視界の端に見えた七海の腕は、あっという間に紫陽子の腹部辺りに巻き付き、そのまま背後からぎゅっと抱き締められる形となった。
ほんの少しの間思考が停止したが、背に伝わる体温と鼓動に、すぐに我に返る。
七海は、背後から紫陽子を抱き締めたまま、そっと首筋に顔をうずめてくる。
どきりと、心臓が跳ねた。
ボートネックのトップスから露わになっていた肌に掛かる吐息は柔らかく、稲穂色の髪の毛先が頬をくすぐる。
やはり、何かあったのではないだろうか。
辛い任務にでも当たったのか、それとも、後輩か誰かが怪我でもしたのか。それを、自分のせいと責めているのか。
もしや、と思う。
何か、悲しい記憶でも思い出したのか。
紫陽子の脳裏を、屈託なく笑う仔犬のような少年の姿が掠めていった。その少年の隣には、同じく少年の姿をした七海がいる。
あの写真を見せてもらったのは、いつだったか。
本当は何かあったんだろうと尋ねようとした時、紫陽子を抱き締めたままの七海が身じろいだ。
「紫陽子、好きですよ……」
耳元で囁かれた吐息多めの甘い声に、再び紫陽子の思考が停止する。
今、この人は何と言ったのだろう。
そんな心の声など聞こえるはずもないのに、七海は更に続ける。
「すみません、遅い時間に」
サングラスこそ外しているものの、いつものスーツ姿で、七海建人は少々申し訳なさそうな様子で玄関の鍵を閉める。
いつものスーツ姿という事は、直前まで高専の関係者と一緒にいたのだろうか。定時はとっくに過ぎているのに、珍しい。
もしかしたら何かあったのかもしれないと思い、こっそり上から下まで眺めてみるも、特段変わった様子はない。
「問題ないよ。私、明日休みだから」
もっと言うと、特に予定のない休日。だからこそ、今夜は久々に夜更かしでもしようかと思っていたところなのだ。
紫陽子の言葉に、七海はほっと表情を緩める。
「どうしても、無性に……紫陽子に会いたくなったんです。……今日でなければいけない気がして」
穏やかな声音に混じった焦燥と、紫陽子を見る眼差しに映る愛情と名の付く想いに気付きながら、紫陽子の意識は少しずれたところにあった。
夕飯がまだならシチューを温め直して、それとも、先にお風呂の方がいいだろうか。
色々とこの後の事を考えながら来客用のスリッパを出し、くるりと七海に背を向けた時、そのわずかな一瞬に動きを封じられる。
視界の端に見えた七海の腕は、あっという間に紫陽子の腹部辺りに巻き付き、そのまま背後からぎゅっと抱き締められる形となった。
ほんの少しの間思考が停止したが、背に伝わる体温と鼓動に、すぐに我に返る。
七海は、背後から紫陽子を抱き締めたまま、そっと首筋に顔をうずめてくる。
どきりと、心臓が跳ねた。
ボートネックのトップスから露わになっていた肌に掛かる吐息は柔らかく、稲穂色の髪の毛先が頬をくすぐる。
やはり、何かあったのではないだろうか。
辛い任務にでも当たったのか、それとも、後輩か誰かが怪我でもしたのか。それを、自分のせいと責めているのか。
もしや、と思う。
何か、悲しい記憶でも思い出したのか。
紫陽子の脳裏を、屈託なく笑う仔犬のような少年の姿が掠めていった。その少年の隣には、同じく少年の姿をした七海がいる。
あの写真を見せてもらったのは、いつだったか。
本当は何かあったんだろうと尋ねようとした時、紫陽子を抱き締めたままの七海が身じろいだ。
「紫陽子、好きですよ……」
耳元で囁かれた吐息多めの甘い声に、再び紫陽子の思考が停止する。
今、この人は何と言ったのだろう。
そんな心の声など聞こえるはずもないのに、七海は更に続ける。
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