愛することによって失うものは何も無い
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「私も……ごめんね。意図的に、色々、話さなくて」
「それは僕のせいだって言ったでしょ?……いいんだ、もう怒ってない。ただ、何があってどうなったのかは、後で教えてほしいな」
「ざっくり言うと、退職して転職したわ。来月から新しい仕事」
「ウッソでしょおおおお!1ヶ月半会わない間にそんな展開になんの!?ていうかさ、転職決まったなら先に言ってくれないと!この後お祝いにいいもの食べようね!」
よかった。いつもの五条悟だ。
くすりと笑うと、左手から手が離れていき、今度は右手をしっかりと握られた。
これで手を引かれる形となり、移動するのだなという気配を感じ取る。
しかし、五条はすぐに歩き出さない。
「……美波子、僕に何か言う事あるでしょ?」
昨日、同じ台詞を聞いた。
今、思い当たる正解はひとつだけ。
「……おかえり。仕事、お疲れ様」
和解し合えたからか、自然と素直な自分が出る。
あの時とは違って大正解だったらしく、五条の顔に満足そうな満面の笑みが浮かんだ。
「あああマジで癒し!髪型変わってさらに可愛くなったから、効果も倍に感じるなあ」
「大袈裟」
ようやく歩き出した五条に手を引かれながら、心が満たされていくのを感じた。
「美波子、夕飯食べたらさ……僕の部屋に連れてってもいい?呪術師の事とか今回の任務の事とか……僕の事とか、話したいんだ。聞きたくない話も、あるかもしれないけど……」
真剣な声音から、そこには本心しか無い事を知る。
高い位置にある彫刻のような横顔に、軽薄な笑みは無い。
「行く。……私も、悟の事もっと知りたいから」
本心に本心で応えれば、その横顔が安堵したようにふわりと綻ぶ。
「……"悟の事もっと知りたい"ってさ、なかなか意味深な台詞だよねぇ。僕ドキドキしちゃうなあ」
急に頬を赤らめだした五条に、すぐに前言撤回したくなったが、すんでのところで堪えた。
こちらはこちらで、病院という嘘をついて心配させた事を、五条の聞き間違いにしてしまおうとしているのだ。このくらいは見逃さなければ。
ふと、隣から珍しく長い溜息が聞こえた。
「どうしたの?」
「いや〜〜、1ヶ月半ぶりか〜と思って」
しみじみと言うと、五条は握った美波子の手ごと上着のポケットに手をしまう。
首を捻って見上げると、ちょうど美波子を見下ろした澄んだ瞳と目が合った。
瞬間、五条はへらっと心から嬉しそうで浮かれた笑みをこぼした。
「……会いたかったよ、美波子」
「……私もよ」
どちらからともなく、ポケットの中でぎゅっと握り合った手。
お互いに、きっとこの手は離すまい。
fin.
「それは僕のせいだって言ったでしょ?……いいんだ、もう怒ってない。ただ、何があってどうなったのかは、後で教えてほしいな」
「ざっくり言うと、退職して転職したわ。来月から新しい仕事」
「ウッソでしょおおおお!1ヶ月半会わない間にそんな展開になんの!?ていうかさ、転職決まったなら先に言ってくれないと!この後お祝いにいいもの食べようね!」
よかった。いつもの五条悟だ。
くすりと笑うと、左手から手が離れていき、今度は右手をしっかりと握られた。
これで手を引かれる形となり、移動するのだなという気配を感じ取る。
しかし、五条はすぐに歩き出さない。
「……美波子、僕に何か言う事あるでしょ?」
昨日、同じ台詞を聞いた。
今、思い当たる正解はひとつだけ。
「……おかえり。仕事、お疲れ様」
和解し合えたからか、自然と素直な自分が出る。
あの時とは違って大正解だったらしく、五条の顔に満足そうな満面の笑みが浮かんだ。
「あああマジで癒し!髪型変わってさらに可愛くなったから、効果も倍に感じるなあ」
「大袈裟」
ようやく歩き出した五条に手を引かれながら、心が満たされていくのを感じた。
「美波子、夕飯食べたらさ……僕の部屋に連れてってもいい?呪術師の事とか今回の任務の事とか……僕の事とか、話したいんだ。聞きたくない話も、あるかもしれないけど……」
真剣な声音から、そこには本心しか無い事を知る。
高い位置にある彫刻のような横顔に、軽薄な笑みは無い。
「行く。……私も、悟の事もっと知りたいから」
本心に本心で応えれば、その横顔が安堵したようにふわりと綻ぶ。
「……"悟の事もっと知りたい"ってさ、なかなか意味深な台詞だよねぇ。僕ドキドキしちゃうなあ」
急に頬を赤らめだした五条に、すぐに前言撤回したくなったが、すんでのところで堪えた。
こちらはこちらで、病院という嘘をついて心配させた事を、五条の聞き間違いにしてしまおうとしているのだ。このくらいは見逃さなければ。
ふと、隣から珍しく長い溜息が聞こえた。
「どうしたの?」
「いや〜〜、1ヶ月半ぶりか〜と思って」
しみじみと言うと、五条は握った美波子の手ごと上着のポケットに手をしまう。
首を捻って見上げると、ちょうど美波子を見下ろした澄んだ瞳と目が合った。
瞬間、五条はへらっと心から嬉しそうで浮かれた笑みをこぼした。
「……会いたかったよ、美波子」
「……私もよ」
どちらからともなく、ポケットの中でぎゅっと握り合った手。
お互いに、きっとこの手は離すまい。
fin.
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