愛することによって失うものは何も無い
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だから、
「……ごめん」
「……ごめんね」
2人の声が重なった。
2人は顔を見合わせ、お互いに「??」という顔をした。
そもそも、五条がこんなにも素直に謝罪を口にするとは。
五条はサングラスを掛け直し、決まりが悪そうな表情で、少しだけ美波子から顔を逸らす。
「……美波子に言われてさー、柄にも無く振り返ってみた訳よ。そしたら、思い当たる事があるわあるわ。…………そりゃ、心開けなくなるよねっていう」
上着のポケットに両の手をつっ込んだまま、ふてぶてしい態度ではあるものの、その言葉が偽りであるとは思えない。
「だから……悪かったよ。頼ってほしい一心で、美波子の心をこじ開けようとした。心配も怖い思いもさせたくないから、僕の仕事については詳しく話さなかった。…………それと」
わずかな逡巡。
今ここにいるのはいつもの五条であり、いつもの五条ではない。
空色の瞳の奥が、揺れている。
五条は、前髪をかき上げる仕草で平静を装う。そして、いつもの軽い笑みを"作って"見せた。
「それとさ、弱い僕じゃ美波子がガッカリすると思ったんだよね〜。ホラ、僕って最強でグッドルッキングガイなとこがウリじゃない?だからさあ……」
軽薄で掴みどころの無い、多くによく知られている"五条悟"に戻ろうとしたのだろうが、途中で無理だと悟ったらしい。
1度上がりかけたテンションが、再び下降していく。
空の色を映した碧い目が、美波子の瞳をとらえた。
何故だろう。その目からは、いつも以上に体温が感じられる。
「あー……ゴメン。少し、嘘。……弱さなんて見せたらさ、美波子に嫌われると思った。弱い僕は、僕じゃない。だから」
だから、弱さを見せなかったというのか。見せられなかったと。
だとしたら、何もかもを持っている五条にも、弱さがあるという事なのか。
美波子の胸が、急に苦しくなる。
五条は、照れや気まずさの混じった、苦笑とも自嘲とも取れる笑みを浮かべた。
初めて目にするその複雑な表情は、この男の素顔に違い無い。
もしかしたら、瞳の奥に見えたあの揺らぎは、かすかな不安の現れだったのかもしれない。
五条も、美波子と同じく不安だったのかもしれない。
だとしたら、その不安を消してあげたい。
五条が美波子を想う本心を晒し、安心をくれたように。
「……嫌いになんて、ならないよ。なる訳無い。……むしろ、言ってくれて安心したわ」
五条の言葉を何度も反芻する。
こんなに大切にされているなど、知らなかったのだ。
「これからは……もし、まだ一緒にいてくれるなら、私に無理しないでほしい。私は、悟が弱くても情けなくても、そんな理由で嫌いになったりしないから」
そっと笑んで見せると、五条は目を丸くし、すぐに子供のようにくしゃりと笑った。
その右手が伸びてきて、大きな手で左手を掴まれる。温かな手が、甘えるように、嬉しそうに、美波子の手をぎゅっぎゅと握る。
あざとい。そう思いながらも、その行為に癒されている事も事実だ。
「……ごめん」
「……ごめんね」
2人の声が重なった。
2人は顔を見合わせ、お互いに「??」という顔をした。
そもそも、五条がこんなにも素直に謝罪を口にするとは。
五条はサングラスを掛け直し、決まりが悪そうな表情で、少しだけ美波子から顔を逸らす。
「……美波子に言われてさー、柄にも無く振り返ってみた訳よ。そしたら、思い当たる事があるわあるわ。…………そりゃ、心開けなくなるよねっていう」
上着のポケットに両の手をつっ込んだまま、ふてぶてしい態度ではあるものの、その言葉が偽りであるとは思えない。
「だから……悪かったよ。頼ってほしい一心で、美波子の心をこじ開けようとした。心配も怖い思いもさせたくないから、僕の仕事については詳しく話さなかった。…………それと」
わずかな逡巡。
今ここにいるのはいつもの五条であり、いつもの五条ではない。
空色の瞳の奥が、揺れている。
五条は、前髪をかき上げる仕草で平静を装う。そして、いつもの軽い笑みを"作って"見せた。
「それとさ、弱い僕じゃ美波子がガッカリすると思ったんだよね〜。ホラ、僕って最強でグッドルッキングガイなとこがウリじゃない?だからさあ……」
軽薄で掴みどころの無い、多くによく知られている"五条悟"に戻ろうとしたのだろうが、途中で無理だと悟ったらしい。
1度上がりかけたテンションが、再び下降していく。
空の色を映した碧い目が、美波子の瞳をとらえた。
何故だろう。その目からは、いつも以上に体温が感じられる。
「あー……ゴメン。少し、嘘。……弱さなんて見せたらさ、美波子に嫌われると思った。弱い僕は、僕じゃない。だから」
だから、弱さを見せなかったというのか。見せられなかったと。
だとしたら、何もかもを持っている五条にも、弱さがあるという事なのか。
美波子の胸が、急に苦しくなる。
五条は、照れや気まずさの混じった、苦笑とも自嘲とも取れる笑みを浮かべた。
初めて目にするその複雑な表情は、この男の素顔に違い無い。
もしかしたら、瞳の奥に見えたあの揺らぎは、かすかな不安の現れだったのかもしれない。
五条も、美波子と同じく不安だったのかもしれない。
だとしたら、その不安を消してあげたい。
五条が美波子を想う本心を晒し、安心をくれたように。
「……嫌いになんて、ならないよ。なる訳無い。……むしろ、言ってくれて安心したわ」
五条の言葉を何度も反芻する。
こんなに大切にされているなど、知らなかったのだ。
「これからは……もし、まだ一緒にいてくれるなら、私に無理しないでほしい。私は、悟が弱くても情けなくても、そんな理由で嫌いになったりしないから」
そっと笑んで見せると、五条は目を丸くし、すぐに子供のようにくしゃりと笑った。
その右手が伸びてきて、大きな手で左手を掴まれる。温かな手が、甘えるように、嬉しそうに、美波子の手をぎゅっぎゅと握る。
あざとい。そう思いながらも、その行為に癒されている事も事実だ。