Love than to be loved...and
名前を変える
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山田が言うように、もう5年が過ぎる。しかし、どれだけ時間が過ぎようと、抜け忍という事実は変わらない。
自分のせいで、祥子に危害が及ぶようなことはあってはならないのだ。絶対に。
それでも、そう思っても、祥子への想いは募る。
「……本当に、そう思いますか。私は幸せになってもいいのだと」
「思うね」
祥子から離れなければいけないと思う気持ちと、 祥子の近くにいたいと思う気持ち。
相反する気持ちに板挟みになる中、縋るように問えば、山田は食い気味に即答する。
「思うね。お前は教師としてだけじゃなく、“土井半助“個人としても幸せになっていいはずだ。……きり丸を引き取った時を思い出してみなさい。あの時は、今のように悶々と悩んでいたかね。いや、お前自身の意志で決めたんだろう。あの気持ちを覚えているなら、迷うことなんてないはずだぞ」
言われて、気付く。
あの日、きり丸に言った「帰ろう」という一言に迷いはなかったはず。そうだ、自分の気持ちに正直だった。
以来、何にも代えがたい日々を送っている。
悩み迷っている本心が前に進みたがっている。
ああ、また祥子の笑顔が思い浮かぶ。
「それに、今は両想いかどうかも分からん。悩んだ結果、振られる可能性だってある。だから、今からそんなに深刻に考えなさんな」
“振られるかも“という言葉に、まだ何も始まっていない現実を突きつけられ、それが返って心を軽くしてくれた。
未来がどうなるか分からないなら、今は祥子への想いを大切にしながら、自分の気持ちに正直に生きるだけ。
「そうですね……分からない未来に怯えるより、今ここにある気持ちを大事にします」
本心を口にすれば、山田はやれやれと言いたげに笑う。
「祥子ちゃんは競争率が高いようだから、しっかり頑張んなさい」
「そりゃ、そうですよね」
ますます振られる可能性が現実味を帯びてきたなと溜め息をつく。
その様子を見ていた山田が、すぐに何かを思い出したように手を叩いた。
その仕草はどうにもわざとらしいうえに、何やら意地の悪い笑みまで浮かんでいる。
「言い忘れとったが、お前さんの祥子ちゃんへの気持ちには、利吉も気付いとるようだぞ」
「は、えっ、利吉くんも?」
今このタイミングでその名前が出たということは。
「利吉も祥子ちゃんのことが好きなようでな。もちろん、一人の女性として」
翌朝、土井はあくびを噛み殺しながら学園の廊下を歩いていた。
結局、昨夜はほとんど眠れなかった。
祥子という人に恋心を抱くということ。それがどういうことか、想像はしていた。
町を歩けばすれ違う人が振り返るほどの美貌。
何度か文を読んでいる姿を見かけたことがあるが、あれは異性から贈られたものだったのではないか。
きっと、彼女に好意を持っている男は、想像するよりも多い。
まさか、そのうちの一人が利吉だったとは。
「……確かに、祥子さんがここへ来てからは、利吉くんがここへ来ることも増えたっけなぁ……」
思い返せば、祥子へ話しかける時の利吉の表情はとても生き生きとしていて、山田伝蔵の息子でもプロの忍でもない、ただの歳相応の青年のそれだった。
心から、祥子のことが好きなのだろうなと思う。
ふと、聞き覚えのある話し声がした。
廊下を少し進むと、中庭の向こうの部屋に利吉の姿が見えた。
いつの間に来ていたのだろうかと思うその向かいには、こちらへ背を向けるかたちで座る祥子の姿が。
鏡を持っている利吉と、白粉や紅を手にしている祥子の様子から、利吉が何か女装時の相談事をしているように見える。
朗らかに笑う利吉と、それと同じタイミングで肩を震わせ笑っているであろう祥子。
「……お似合いじゃないか」
自分のせいで、祥子に危害が及ぶようなことはあってはならないのだ。絶対に。
それでも、そう思っても、祥子への想いは募る。
「……本当に、そう思いますか。私は幸せになってもいいのだと」
「思うね」
祥子から離れなければいけないと思う気持ちと、 祥子の近くにいたいと思う気持ち。
相反する気持ちに板挟みになる中、縋るように問えば、山田は食い気味に即答する。
「思うね。お前は教師としてだけじゃなく、“土井半助“個人としても幸せになっていいはずだ。……きり丸を引き取った時を思い出してみなさい。あの時は、今のように悶々と悩んでいたかね。いや、お前自身の意志で決めたんだろう。あの気持ちを覚えているなら、迷うことなんてないはずだぞ」
言われて、気付く。
あの日、きり丸に言った「帰ろう」という一言に迷いはなかったはず。そうだ、自分の気持ちに正直だった。
以来、何にも代えがたい日々を送っている。
悩み迷っている本心が前に進みたがっている。
ああ、また祥子の笑顔が思い浮かぶ。
「それに、今は両想いかどうかも分からん。悩んだ結果、振られる可能性だってある。だから、今からそんなに深刻に考えなさんな」
“振られるかも“という言葉に、まだ何も始まっていない現実を突きつけられ、それが返って心を軽くしてくれた。
未来がどうなるか分からないなら、今は祥子への想いを大切にしながら、自分の気持ちに正直に生きるだけ。
「そうですね……分からない未来に怯えるより、今ここにある気持ちを大事にします」
本心を口にすれば、山田はやれやれと言いたげに笑う。
「祥子ちゃんは競争率が高いようだから、しっかり頑張んなさい」
「そりゃ、そうですよね」
ますます振られる可能性が現実味を帯びてきたなと溜め息をつく。
その様子を見ていた山田が、すぐに何かを思い出したように手を叩いた。
その仕草はどうにもわざとらしいうえに、何やら意地の悪い笑みまで浮かんでいる。
「言い忘れとったが、お前さんの祥子ちゃんへの気持ちには、利吉も気付いとるようだぞ」
「は、えっ、利吉くんも?」
今このタイミングでその名前が出たということは。
「利吉も祥子ちゃんのことが好きなようでな。もちろん、一人の女性として」
翌朝、土井はあくびを噛み殺しながら学園の廊下を歩いていた。
結局、昨夜はほとんど眠れなかった。
祥子という人に恋心を抱くということ。それがどういうことか、想像はしていた。
町を歩けばすれ違う人が振り返るほどの美貌。
何度か文を読んでいる姿を見かけたことがあるが、あれは異性から贈られたものだったのではないか。
きっと、彼女に好意を持っている男は、想像するよりも多い。
まさか、そのうちの一人が利吉だったとは。
「……確かに、祥子さんがここへ来てからは、利吉くんがここへ来ることも増えたっけなぁ……」
思い返せば、祥子へ話しかける時の利吉の表情はとても生き生きとしていて、山田伝蔵の息子でもプロの忍でもない、ただの歳相応の青年のそれだった。
心から、祥子のことが好きなのだろうなと思う。
ふと、聞き覚えのある話し声がした。
廊下を少し進むと、中庭の向こうの部屋に利吉の姿が見えた。
いつの間に来ていたのだろうかと思うその向かいには、こちらへ背を向けるかたちで座る祥子の姿が。
鏡を持っている利吉と、白粉や紅を手にしている祥子の様子から、利吉が何か女装時の相談事をしているように見える。
朗らかに笑う利吉と、それと同じタイミングで肩を震わせ笑っているであろう祥子。
「……お似合いじゃないか」