君に咲くユキヤナギ
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「あ、あれ……?ヘムヘムは」
小松田に苛立っている間に、祥子の足元にいたヘムヘムの姿がない。
「利吉さんが来てくださったので、先に戻って学園長に報告するって行ってしまいました。でも、行灯なら私も持っています」
安心なさいと言いたげで、どこか得意げな祥子の笑顔は、夕陽と行灯の明かりに照らされてとても温かく、とても頼もしく見えた。
ここでようやく、ほっと息を吐く。全身から空気が抜けて萎んでしまうのではないかと思う程の、安堵。
よかった、祥子が無事だった。
笑っている、本当によかった。
その時、不意にぽんぽんと頭を叩かれる感触があった。
祥子が、背伸びをして自身よりも背の高い利吉の頭を撫でていた。
一瞬、何が起こったか分からずに固まってしまう。
祥子は、そっと目を細める。
「何か、連絡の行き違いがあったんですね。で、利吉さんは私達を心配してくださったんですね。迎えに来てくださってありがとうございます。私は大丈夫ですから、帰りましょう」
祥子は、行灯を掲げて歩き出す。
あ、今のは子供扱いされたのだなと気付くまでに、そう時間はかからなかった。
祥子の手の感触を確かめるように自分の頭に触れると、すぐにそのあとを追う。
祥子が驚いたように振り向いたのは、その小さな手をぎゅっと握った時。
本当に振り向いてほしいのは、祥子を見ているこの心に。
今すぐそれを口にできたら、きっと楽になれる。しかし、幸せになれるとは限らない。
悔しいが、まだ早いのだ。
利吉は、握った手とは反対の手で祥子から行灯を受け取る。
少しでも、主導権を握りたい。
護られる側ではなく、護る側でありたい。
彼女より歳上になることはできないが、歳下でも頼れる人と思われたい。
願いが溢れて止まらない。
ついそれらが口をついて出てしまいそうで、黙って祥子の手を引いていると、傍らからふふと笑う声が聞こえた。
見れば、すぐ隣でこちらを見上げてにこにこと笑む祥子の、ときめく程に可愛い表情が目に飛び込んでくる。
「お兄さんですね」
そう言って、きゅっと手を握り返される。
ドッという激しい音が外へ漏れたのではないかと思う程、利吉の胸で心臓が大きく鼓動した。
「お兄さんのよう」そう思われた時点で歳下扱いされていることは確定なのだが、今この時ばかりはそれでもいいと思う。
手を握り返してもらえた。それが、舞い上がってしまうくらいに嬉しいことだとは思わなかった。
足元が浮ついてしまいそうになるのを堪え、しっかりと、包み込むように祥子の手を握り直す。
「……絶対に、祥子さんが頼れる男になりますから」
「え、何ですか?」
「いえ、なんでも……というか、繋いだ手をぶんぶんしないでください!」
わざとなのか素なのか分からないが、祥子は利吉の手を握ったまま、ぶんぶんと振り回している。
指摘した利吉も、指摘された祥子も、可笑しさに堪えきれずに笑い合う。
この関係性がよい方へ向かってくれたら……という願い。
関係性が続く先で、祥子の心を支えられる強い男になりたいと思う。心から。
心から。
了
小松田に苛立っている間に、祥子の足元にいたヘムヘムの姿がない。
「利吉さんが来てくださったので、先に戻って学園長に報告するって行ってしまいました。でも、行灯なら私も持っています」
安心なさいと言いたげで、どこか得意げな祥子の笑顔は、夕陽と行灯の明かりに照らされてとても温かく、とても頼もしく見えた。
ここでようやく、ほっと息を吐く。全身から空気が抜けて萎んでしまうのではないかと思う程の、安堵。
よかった、祥子が無事だった。
笑っている、本当によかった。
その時、不意にぽんぽんと頭を叩かれる感触があった。
祥子が、背伸びをして自身よりも背の高い利吉の頭を撫でていた。
一瞬、何が起こったか分からずに固まってしまう。
祥子は、そっと目を細める。
「何か、連絡の行き違いがあったんですね。で、利吉さんは私達を心配してくださったんですね。迎えに来てくださってありがとうございます。私は大丈夫ですから、帰りましょう」
祥子は、行灯を掲げて歩き出す。
あ、今のは子供扱いされたのだなと気付くまでに、そう時間はかからなかった。
祥子の手の感触を確かめるように自分の頭に触れると、すぐにそのあとを追う。
祥子が驚いたように振り向いたのは、その小さな手をぎゅっと握った時。
本当に振り向いてほしいのは、祥子を見ているこの心に。
今すぐそれを口にできたら、きっと楽になれる。しかし、幸せになれるとは限らない。
悔しいが、まだ早いのだ。
利吉は、握った手とは反対の手で祥子から行灯を受け取る。
少しでも、主導権を握りたい。
護られる側ではなく、護る側でありたい。
彼女より歳上になることはできないが、歳下でも頼れる人と思われたい。
願いが溢れて止まらない。
ついそれらが口をついて出てしまいそうで、黙って祥子の手を引いていると、傍らからふふと笑う声が聞こえた。
見れば、すぐ隣でこちらを見上げてにこにこと笑む祥子の、ときめく程に可愛い表情が目に飛び込んでくる。
「お兄さんですね」
そう言って、きゅっと手を握り返される。
ドッという激しい音が外へ漏れたのではないかと思う程、利吉の胸で心臓が大きく鼓動した。
「お兄さんのよう」そう思われた時点で歳下扱いされていることは確定なのだが、今この時ばかりはそれでもいいと思う。
手を握り返してもらえた。それが、舞い上がってしまうくらいに嬉しいことだとは思わなかった。
足元が浮ついてしまいそうになるのを堪え、しっかりと、包み込むように祥子の手を握り直す。
「……絶対に、祥子さんが頼れる男になりますから」
「え、何ですか?」
「いえ、なんでも……というか、繋いだ手をぶんぶんしないでください!」
わざとなのか素なのか分からないが、祥子は利吉の手を握ったまま、ぶんぶんと振り回している。
指摘した利吉も、指摘された祥子も、可笑しさに堪えきれずに笑い合う。
この関係性がよい方へ向かってくれたら……という願い。
関係性が続く先で、祥子の心を支えられる強い男になりたいと思う。心から。
心から。
了