First Light.
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敵意を込めた声は、自分でも恐ろしい程に冷淡な響きをしていた。
三上の表情が、びくりと強張る。
そして、タイミングのいいことに、近くでギャアというカラスの大きな鳴き声がした。
全くの偶然だが、それを不穏な知らせと受け取ったのか、モニタの向こうの男は急にあたふたし始める。
『こっ……の、狐め!!』
たった一言だけを吐き捨てると、一目散に走り去ってしまった。
去り際、丸顔の小男が、怒りが焦りか恐れかは分からないが、何かしらの感情で頬を紅潮させていた。
咲耶が煽ったせいもあるが、思い通りにならないからといって喚いて帰るとは子供よりもタチが悪い。
「早天に謝らなきゃな」
この場を収めるためとはいえ、脅迫まがいの手段にその名を使ってしまった事は、たとえ本人の耳に届いていなくても心苦しい。
はあ、と。深く溜め息をつく。
神崎家および咲耶に取り入ろうとする祓い人のような術師は、以前と比べると格段に少なくなった。
それでも、数年ぶりに地元へ戻った途端に祓い人が訪ねて来たとなれば、やはり安易に実家へは戻れない。
寂しさはほんの一瞬で、家や家族を護らなければという決意はあらためて強くなった。
その護らなければいけない括りの中に、今後は夏目貴志も加わりそうな気がしている。
「今日は、驚かせたり不安にさせたりして本当に申し訳無かったわ」
陽が傾き始めたため、夏目とニャンコ先生を見送りながら、駅までの帰路に同行していた。
「いえ、話が聞けてよかったです。……けど、今日訪ねてきた祓い屋は、どうして神崎さんを」
「私は、あいつらにとって金のなる木だからよ。夏目君と同じでね」
隣を歩く夏目は、ぴたと黙る。
ああ、しまった。また余計な一言で傷付けてしまう。
「……ごめん。最後のは余計だったわ」
罪悪感の前では、こんな子供の顔すらまともに見ることが出来ない。
夏目が何か言おうとした気配があった。しかし、
「まあ、本当のことだからな」
先に声を発したのは、夏目が肩に掛けたバッグから顔を出すニャンコ先生だった。
「神崎家の祖先は冥府の役人を務めた神官であり、以降代々続く神職の家系と聞いている。由緒に加えて、その末娘は強力な妖力を持っている。となれば、祓い屋どもはどれ程の大金をはたいても手に入れたいだろう。神崎の助力を得られたなら、その何倍もの金と名声が手に入るのだからな」
その目に意地の悪い笑みを浮かべ、ちらとこちらを見る。
大体そのとおりで、特に補足することは無い。
夏目が押し黙ったままいるのは、おそらく絶句したのだろう。
咲耶の、古臭く重苦しいバックステージを知って、関わりたくないと思っただろうか。
「金のなる木……」
沈黙は、意外にも早く破られた。
「喜ぶようなことではないのは分かってますけど、でも、神崎さんと同じならちょっと嬉しいです」
予想外の反応に一瞬理解が追いつかずにいると、夏目は嘘の無い目で笑った。
そして、自分の言ったことに照れくさくなったのか、ほんのりと頬を染める。
「それ本気で言ってる…………わね」
問おうとしたものの、途中で確信してしまい思わず笑ってしまう。
護らなければというよりも、力になりたいと思わせる子だ。本当に。
「あの、また話を聞きに来てもいいですか?」
立ち止まった夏目につられて足を止めると、あっという間に駅に着いていた。
視える者からの打算の絡まない頼みごとなど、随分と久し振りな気がする。
彼が今後どのような道に進むとしても、その道標のひとつになれるのなら。
「その時は連絡ちょうだい。今度は、ちゃんとうちの鬼たちも紹介したいわ」
はいと返事をしながら、夏目は何かを思い出したように手を叩いた。
「訊きそびれていたんですが、神崎さんのもとにいる鬼は式ではないとうかがいました」
名取にでも聞いたのだろうか。
そっちのニャンコ先生も式ではないだろうと言いそうになったが、こういう言い方をしてはいけないとすんでのところで飲み込む。
主従という関係性だけが、人と妖の繋がり方ではない。それはきっと、夏目も知っているはず。
三上の表情が、びくりと強張る。
そして、タイミングのいいことに、近くでギャアというカラスの大きな鳴き声がした。
全くの偶然だが、それを不穏な知らせと受け取ったのか、モニタの向こうの男は急にあたふたし始める。
『こっ……の、狐め!!』
たった一言だけを吐き捨てると、一目散に走り去ってしまった。
去り際、丸顔の小男が、怒りが焦りか恐れかは分からないが、何かしらの感情で頬を紅潮させていた。
咲耶が煽ったせいもあるが、思い通りにならないからといって喚いて帰るとは子供よりもタチが悪い。
「早天に謝らなきゃな」
この場を収めるためとはいえ、脅迫まがいの手段にその名を使ってしまった事は、たとえ本人の耳に届いていなくても心苦しい。
はあ、と。深く溜め息をつく。
神崎家および咲耶に取り入ろうとする祓い人のような術師は、以前と比べると格段に少なくなった。
それでも、数年ぶりに地元へ戻った途端に祓い人が訪ねて来たとなれば、やはり安易に実家へは戻れない。
寂しさはほんの一瞬で、家や家族を護らなければという決意はあらためて強くなった。
その護らなければいけない括りの中に、今後は夏目貴志も加わりそうな気がしている。
「今日は、驚かせたり不安にさせたりして本当に申し訳無かったわ」
陽が傾き始めたため、夏目とニャンコ先生を見送りながら、駅までの帰路に同行していた。
「いえ、話が聞けてよかったです。……けど、今日訪ねてきた祓い屋は、どうして神崎さんを」
「私は、あいつらにとって金のなる木だからよ。夏目君と同じでね」
隣を歩く夏目は、ぴたと黙る。
ああ、しまった。また余計な一言で傷付けてしまう。
「……ごめん。最後のは余計だったわ」
罪悪感の前では、こんな子供の顔すらまともに見ることが出来ない。
夏目が何か言おうとした気配があった。しかし、
「まあ、本当のことだからな」
先に声を発したのは、夏目が肩に掛けたバッグから顔を出すニャンコ先生だった。
「神崎家の祖先は冥府の役人を務めた神官であり、以降代々続く神職の家系と聞いている。由緒に加えて、その末娘は強力な妖力を持っている。となれば、祓い屋どもはどれ程の大金をはたいても手に入れたいだろう。神崎の助力を得られたなら、その何倍もの金と名声が手に入るのだからな」
その目に意地の悪い笑みを浮かべ、ちらとこちらを見る。
大体そのとおりで、特に補足することは無い。
夏目が押し黙ったままいるのは、おそらく絶句したのだろう。
咲耶の、古臭く重苦しいバックステージを知って、関わりたくないと思っただろうか。
「金のなる木……」
沈黙は、意外にも早く破られた。
「喜ぶようなことではないのは分かってますけど、でも、神崎さんと同じならちょっと嬉しいです」
予想外の反応に一瞬理解が追いつかずにいると、夏目は嘘の無い目で笑った。
そして、自分の言ったことに照れくさくなったのか、ほんのりと頬を染める。
「それ本気で言ってる…………わね」
問おうとしたものの、途中で確信してしまい思わず笑ってしまう。
護らなければというよりも、力になりたいと思わせる子だ。本当に。
「あの、また話を聞きに来てもいいですか?」
立ち止まった夏目につられて足を止めると、あっという間に駅に着いていた。
視える者からの打算の絡まない頼みごとなど、随分と久し振りな気がする。
彼が今後どのような道に進むとしても、その道標のひとつになれるのなら。
「その時は連絡ちょうだい。今度は、ちゃんとうちの鬼たちも紹介したいわ」
はいと返事をしながら、夏目は何かを思い出したように手を叩いた。
「訊きそびれていたんですが、神崎さんのもとにいる鬼は式ではないとうかがいました」
名取にでも聞いたのだろうか。
そっちのニャンコ先生も式ではないだろうと言いそうになったが、こういう言い方をしてはいけないとすんでのところで飲み込む。
主従という関係性だけが、人と妖の繋がり方ではない。それはきっと、夏目も知っているはず。