First Light.
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「ええ、式ではないわ。ただの友達よ」
式のように常に傍らに在るのではなく、野にいる妖のように希薄な関係でもない。困った時に助け合ったり、ふとした瞬間に隣にいてくれる大切な繋がり。
途端に、夏目の表情がぱっと明るくなった。そして、すぐに嬉しそうに笑む。
「友達……そっか。おれと……おれとニャンコ先生もそうなんです」
友人という言葉を噛みしめるように声にするその表情は、控えめでありながらも本当に嬉しそうだと思った。
歳相応に、こんな顔もできるのかと思う程に。
「阿呆!お前は私の子分、もしくは非常食だろうが!」
「ちょっと待て、2番目のやつ初耳だぞ!?」
すぐにもとの表情に戻ってしまったが、思い返すだけでこちらまで嬉しくなる。
夏目の交友関係などは知らないが、親しくしているのであろう名取周一ですら、妖を式として使役する祓い人だ。堂々と妖は友人だなどと言えなかったのかもしれない。
話をしながら駅舎へ入ると、ちょうど電光掲示板が更新されるのが見えた。
「すぐ電車が来るみたい。気を付けて帰ってね」
「はい、今日はありがとございました。神崎さんも気を付けて帰ってください」
夏目は礼儀正しく腰を折ると、颯爽と駆け出す。
一瞬の逡巡が咲耶の胸を掠め、消えた。
「夏目君!」
改札を抜けた華奢な背に声を掛けると、その背はすぐに立ち止まり、振り返る。
彼は恐れるかもしれないが、ひとつだけ言っておかなければいけない。
どうか、この心優しい少年が、悪しき道、望まぬ道を行きませんように。
「この先、祓い屋関係で困ったことがあれば、迷わず神崎に相談すると言えばいいわ。祖父も界隈ではそこそこ怖がられてるし、大概の連中はおとなしくなるわよ」
古くから妖祓いを生業とする家には、咲耶よりも未だ祖父を恐れる人間の方が多い。
「的場一門にも、ある程度は効くはずだから」
"彼ら"には、別の意味での効力なのだが。
その名を聞いた瞬間、夏目はぎくりと体を硬直させた。
知らないとでも思ったのか。
強い妖力を持つ者を欲するあの一門が、夏目貴志のような人間を放っておくはずが無い。
傷付く痛みを知り、人も妖も関係なく弱きものを護ろうとする夏目だからこそ、的場一門のような連中に染まらせてはいけないと思う。
そう思う程に、後ろ盾の無いこの少年が心配になるのだ。
夏目は意を決して何かを言おうとしたが、電車の到着を知らせるアナウンスに気を取られてしまう。
彼の中で、揺れる天秤が見えた。
直後、夏目は咲耶の目をしっかりと見て頷いた。
「今度、また……!」
その一言には、読み取りきれない複雑な感情が詰め込まれている。
ホームへと駆け下りていった背中を見送りながら、新たな歯車が回り始める音を聞いた。
縁があるのなら、きっとまたすぐに再会することになるのだろう。
fin.
式のように常に傍らに在るのではなく、野にいる妖のように希薄な関係でもない。困った時に助け合ったり、ふとした瞬間に隣にいてくれる大切な繋がり。
途端に、夏目の表情がぱっと明るくなった。そして、すぐに嬉しそうに笑む。
「友達……そっか。おれと……おれとニャンコ先生もそうなんです」
友人という言葉を噛みしめるように声にするその表情は、控えめでありながらも本当に嬉しそうだと思った。
歳相応に、こんな顔もできるのかと思う程に。
「阿呆!お前は私の子分、もしくは非常食だろうが!」
「ちょっと待て、2番目のやつ初耳だぞ!?」
すぐにもとの表情に戻ってしまったが、思い返すだけでこちらまで嬉しくなる。
夏目の交友関係などは知らないが、親しくしているのであろう名取周一ですら、妖を式として使役する祓い人だ。堂々と妖は友人だなどと言えなかったのかもしれない。
話をしながら駅舎へ入ると、ちょうど電光掲示板が更新されるのが見えた。
「すぐ電車が来るみたい。気を付けて帰ってね」
「はい、今日はありがとございました。神崎さんも気を付けて帰ってください」
夏目は礼儀正しく腰を折ると、颯爽と駆け出す。
一瞬の逡巡が咲耶の胸を掠め、消えた。
「夏目君!」
改札を抜けた華奢な背に声を掛けると、その背はすぐに立ち止まり、振り返る。
彼は恐れるかもしれないが、ひとつだけ言っておかなければいけない。
どうか、この心優しい少年が、悪しき道、望まぬ道を行きませんように。
「この先、祓い屋関係で困ったことがあれば、迷わず神崎に相談すると言えばいいわ。祖父も界隈ではそこそこ怖がられてるし、大概の連中はおとなしくなるわよ」
古くから妖祓いを生業とする家には、咲耶よりも未だ祖父を恐れる人間の方が多い。
「的場一門にも、ある程度は効くはずだから」
"彼ら"には、別の意味での効力なのだが。
その名を聞いた瞬間、夏目はぎくりと体を硬直させた。
知らないとでも思ったのか。
強い妖力を持つ者を欲するあの一門が、夏目貴志のような人間を放っておくはずが無い。
傷付く痛みを知り、人も妖も関係なく弱きものを護ろうとする夏目だからこそ、的場一門のような連中に染まらせてはいけないと思う。
そう思う程に、後ろ盾の無いこの少年が心配になるのだ。
夏目は意を決して何かを言おうとしたが、電車の到着を知らせるアナウンスに気を取られてしまう。
彼の中で、揺れる天秤が見えた。
直後、夏目は咲耶の目をしっかりと見て頷いた。
「今度、また……!」
その一言には、読み取りきれない複雑な感情が詰め込まれている。
ホームへと駆け下りていった背中を見送りながら、新たな歯車が回り始める音を聞いた。
縁があるのなら、きっとまたすぐに再会することになるのだろう。
fin.
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