It’s raining cats and dogs.
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「神崎さん」
荘厳であり、一見すると近寄りがたくもある石造りの鳥居の手前で、その後ろ姿を見付ける。
声の主を知りながら律儀に立ち止まって振り向いた神崎咲耶は、あからさまに顔を顰めた。
「うっわ、また来たぁ」
「その反応、結構傷付くなあ。あ、お久し振りです。大福好き?」
傷付くとは言ってみたものの、それ程気にしていない。些末なことにいちいち傷付いていては、この世界にはいられない。
そう思う傍ら、針の先が肌に触れる程の痛みを感じたのは、気のせいだったか。
痛みと呼ぶには小さすぎる感覚を気に留めること無く、的場は和菓子の包みを持ち上げて見せた。
手酷く返り討ちにされた日から、数週間が過ぎる。
咲耶を引き込むことが出来たなら、的場一門の地位は更に揺るぎないものとなる。今まで以上に、内外へ及ぼす影響力は大きくなるだろう。
しかし、あの日知ってしまったのだ。
咲耶を利用しようものなら、防ぎようの無い災厄を被ることになる。
脳裏を紅と白の大鬼達の姿が掠めていき、不覚にも恐怖という感情が首をもたげた。
それでも、まだ咲耶を諦めきれないでいる。
この気持ちがどこから来るのか、確かめなければいけない。そのために、もう一度会わなければと思った。
的場の心を波立たせ、引っ掻き、揺るがしては、決して媚びないこの美しい少女に。
差し出していた大福の包みを、手から取られる感覚で我に返った。
見ると、包みを大事そうに抱え直した咲耶が、テンプレのような笑顔を浮べる。
「祓い屋は嫌いですけど、大福は好きですよ。大福に罪はありませんしね。ありがたくいただいておきます」
礼儀正しくお辞儀をして見せるが、そこには口にした気持ちは全くこもっていない。
大福に罪は無いと言うのなら、的場には何か罪があると言うのか。そう揚げ足を取ってやりたくなったが、すんでのところで堪えた。
「祖父には話しておきますよ。的場の人が高いお菓子をくれたって。それで十分でしょう?」
咲耶は、鼻先でふんと意地悪く笑い、返答など待たずにさっさと鳥居の奥へ消えてしまった。
呼び止めたところでまともに取り合ってもらえそうも無く、肩で溜め息をつきながら見送った。
何故こうも拒絶されるのか。それは、静司が神崎家と古い因縁のある的場家の人間だからという、複雑性を含むものではないようだった。
調べてみれば、予想通り、"あの噂"に飛び付いた何人かの術師達が既に咲耶に接触していた。
祓い人が誘引をする際の、不遜でしたたかな手口は知っている。
やはり、咲耶は幾度となく不愉快な思いをさせられているのだ。
ただでさえ、祓い人という種類の人間に良いイメージを抱いていないであろう神崎家の人間が、より祓い人を嫌うのは当然のことだ。
的場が返り討ちにされたあの日に咲耶が口にした言葉は、彼女自身が浴びせられた言葉だったに違い無い。
自分もまた、浅ましい連中と同じような考えをしていたことを思い返しながら、咲耶を誘引しようとしている祓い人達に苛立ちに似たもやもやとした感情が湧いてくる。
自分自身を棚に上げるつもりは無いのだがと、柄にも無く溜め息をつけば、頭上から笑い声が降ってきた。
ククク
クスクス
声に誘われるままに見上げると、いつからそこにいたのか、鳥居の上に紅白の小鬼達が腰掛けているのが見えた。
知能も攻撃性も非常に高い大妖である彼ら。
荘厳であり、一見すると近寄りがたくもある石造りの鳥居の手前で、その後ろ姿を見付ける。
声の主を知りながら律儀に立ち止まって振り向いた神崎咲耶は、あからさまに顔を顰めた。
「うっわ、また来たぁ」
「その反応、結構傷付くなあ。あ、お久し振りです。大福好き?」
傷付くとは言ってみたものの、それ程気にしていない。些末なことにいちいち傷付いていては、この世界にはいられない。
そう思う傍ら、針の先が肌に触れる程の痛みを感じたのは、気のせいだったか。
痛みと呼ぶには小さすぎる感覚を気に留めること無く、的場は和菓子の包みを持ち上げて見せた。
手酷く返り討ちにされた日から、数週間が過ぎる。
咲耶を引き込むことが出来たなら、的場一門の地位は更に揺るぎないものとなる。今まで以上に、内外へ及ぼす影響力は大きくなるだろう。
しかし、あの日知ってしまったのだ。
咲耶を利用しようものなら、防ぎようの無い災厄を被ることになる。
脳裏を紅と白の大鬼達の姿が掠めていき、不覚にも恐怖という感情が首をもたげた。
それでも、まだ咲耶を諦めきれないでいる。
この気持ちがどこから来るのか、確かめなければいけない。そのために、もう一度会わなければと思った。
的場の心を波立たせ、引っ掻き、揺るがしては、決して媚びないこの美しい少女に。
差し出していた大福の包みを、手から取られる感覚で我に返った。
見ると、包みを大事そうに抱え直した咲耶が、テンプレのような笑顔を浮べる。
「祓い屋は嫌いですけど、大福は好きですよ。大福に罪はありませんしね。ありがたくいただいておきます」
礼儀正しくお辞儀をして見せるが、そこには口にした気持ちは全くこもっていない。
大福に罪は無いと言うのなら、的場には何か罪があると言うのか。そう揚げ足を取ってやりたくなったが、すんでのところで堪えた。
「祖父には話しておきますよ。的場の人が高いお菓子をくれたって。それで十分でしょう?」
咲耶は、鼻先でふんと意地悪く笑い、返答など待たずにさっさと鳥居の奥へ消えてしまった。
呼び止めたところでまともに取り合ってもらえそうも無く、肩で溜め息をつきながら見送った。
何故こうも拒絶されるのか。それは、静司が神崎家と古い因縁のある的場家の人間だからという、複雑性を含むものではないようだった。
調べてみれば、予想通り、"あの噂"に飛び付いた何人かの術師達が既に咲耶に接触していた。
祓い人が誘引をする際の、不遜でしたたかな手口は知っている。
やはり、咲耶は幾度となく不愉快な思いをさせられているのだ。
ただでさえ、祓い人という種類の人間に良いイメージを抱いていないであろう神崎家の人間が、より祓い人を嫌うのは当然のことだ。
的場が返り討ちにされたあの日に咲耶が口にした言葉は、彼女自身が浴びせられた言葉だったに違い無い。
自分もまた、浅ましい連中と同じような考えをしていたことを思い返しながら、咲耶を誘引しようとしている祓い人達に苛立ちに似たもやもやとした感情が湧いてくる。
自分自身を棚に上げるつもりは無いのだがと、柄にも無く溜め息をつけば、頭上から笑い声が降ってきた。
ククク
クスクス
声に誘われるままに見上げると、いつからそこにいたのか、鳥居の上に紅白の小鬼達が腰掛けているのが見えた。
知能も攻撃性も非常に高い大妖である彼ら。
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