daybreak come.
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名取が神崎咲耶側の人間だとしたら、それが彼の知る全てではないのかもしれない。
しかし、今はそれだけで十分だった。
視る力をコントロール出来るなど、修練を積んだ仏僧や神職でこそ成し得るもの。それ以前に、資質が重要となる特異なものだ。
名取から得られた情報が、即ち神崎咲耶に稀なる妖力が備わっていることを示している。
視る、視ないを切り替えられるとしたら、やはり、あの時の神崎咲耶にはあの着物が視えていなかった。いや、着物の色を尋ねているにも関わらず視なかったということは、視る気が無かったのだ。最初から。
「だから言ったろ。思い通りにならないって。素直に他人の言うことを聞くような子じゃないし、ましてや相手が的場だしなあ」
再び、名取はくっくと笑い始める。
きっと、それだけではない気がしている。馬鹿にされているのか見下されているのか、それとも試されているのか。
いずれにしても、腹立たしさや羞恥で感情が逆立つのは久し振りだ。
————
数日後の夕刻、今月既に3度目の来訪となる○○神社の鳥居をくぐった。
探すまでも無く、参道の途中にある手水舎に、下校後と見えるその人はいた。
「あれ、また何かご用ですか?的場静司さん」
神崎咲耶は、柄杓を戻しながら振り返る。
「答えは訊いてませんけどね。周一先輩から話は伺ってますから」
生意気な笑みに、生意気な言葉。
しかし、そんなことにいちいち気持ちを揺ら立たせてはいけない。
的場は、いつもの作り笑いを浮かべた。
「なら、話が早いや。単刀直入に言うけど、君、的場一門に入らない?」
視る力をコントロール出来るという特異さ、そこから窺える妖力の強さ。古くから神々に仕えてきた"神崎家"の名の声望の高さ。
何より、視える者に対して物怖じしない気の強さは、それだけでも十分な価値があるように思う。
「君に関する噂があるのは知ってるよね?けど、その噂が本当かどうかはどうだっていい。ただ、君がある程度の妖力を持ってることには気付いてるつもりだよ。……視えない人達の中にいるのは窮屈だろ?」
妖力に気付いているなど半分はハッタリだが、今はそう述べるしかない。
祓い人ですら崇敬するその名が、その力がほしい。
————何のために。
もう一人の自分が耳元で問い掛けてきた。しかし、心にまでは届かない。
ふと、ざわりと空気が揺れた。
「それ、誰に向かって言ってるんです?」
咲耶の表情に浮かんでいた不敵な笑みが、そっと温度感を無くした。その目が、射るように的場を見ている。
背筋がぞっと冷たくなる。肌の上を何かが走るような、ぴりぴりとした感覚がする。
まさか自分がと疑いたくなるが、足が竦んでしまっていた。これは紛れも無い畏れ。だとしたら、一体何に。
『誰に向かって訊いているのかと、問うている』
唐突な第三者の声に、弾かれたように振り返った。
気配無くそこに立っていたのは、見上げる程の巨躯に黄金色の鋭い2本の角を持った、美貌の白鬼だった。
白い仮面の奥の金の瞳は真っ直ぐに的場を見下ろしているが、こちらから見返すことが出来ない。
『答えらんねぇなら、迂闊に近付くんじゃねえよ。ガキが』
また別の声がした。
いつの間にか、咲耶の傍に別の鬼が立っている。
白鬼と同等の体躯に、漆黒の2本の角。そして、揺らめく炎のように紅い髪と紅い仮面。
ああ、美しいこの2人の大鬼は、あの日鳥居の上に見た小鬼達だ。
本能で感じた大妖であるという予感は、当たっていた。
しかし、今はそれだけで十分だった。
視る力をコントロール出来るなど、修練を積んだ仏僧や神職でこそ成し得るもの。それ以前に、資質が重要となる特異なものだ。
名取から得られた情報が、即ち神崎咲耶に稀なる妖力が備わっていることを示している。
視る、視ないを切り替えられるとしたら、やはり、あの時の神崎咲耶にはあの着物が視えていなかった。いや、着物の色を尋ねているにも関わらず視なかったということは、視る気が無かったのだ。最初から。
「だから言ったろ。思い通りにならないって。素直に他人の言うことを聞くような子じゃないし、ましてや相手が的場だしなあ」
再び、名取はくっくと笑い始める。
きっと、それだけではない気がしている。馬鹿にされているのか見下されているのか、それとも試されているのか。
いずれにしても、腹立たしさや羞恥で感情が逆立つのは久し振りだ。
————
数日後の夕刻、今月既に3度目の来訪となる○○神社の鳥居をくぐった。
探すまでも無く、参道の途中にある手水舎に、下校後と見えるその人はいた。
「あれ、また何かご用ですか?的場静司さん」
神崎咲耶は、柄杓を戻しながら振り返る。
「答えは訊いてませんけどね。周一先輩から話は伺ってますから」
生意気な笑みに、生意気な言葉。
しかし、そんなことにいちいち気持ちを揺ら立たせてはいけない。
的場は、いつもの作り笑いを浮かべた。
「なら、話が早いや。単刀直入に言うけど、君、的場一門に入らない?」
視る力をコントロール出来るという特異さ、そこから窺える妖力の強さ。古くから神々に仕えてきた"神崎家"の名の声望の高さ。
何より、視える者に対して物怖じしない気の強さは、それだけでも十分な価値があるように思う。
「君に関する噂があるのは知ってるよね?けど、その噂が本当かどうかはどうだっていい。ただ、君がある程度の妖力を持ってることには気付いてるつもりだよ。……視えない人達の中にいるのは窮屈だろ?」
妖力に気付いているなど半分はハッタリだが、今はそう述べるしかない。
祓い人ですら崇敬するその名が、その力がほしい。
————何のために。
もう一人の自分が耳元で問い掛けてきた。しかし、心にまでは届かない。
ふと、ざわりと空気が揺れた。
「それ、誰に向かって言ってるんです?」
咲耶の表情に浮かんでいた不敵な笑みが、そっと温度感を無くした。その目が、射るように的場を見ている。
背筋がぞっと冷たくなる。肌の上を何かが走るような、ぴりぴりとした感覚がする。
まさか自分がと疑いたくなるが、足が竦んでしまっていた。これは紛れも無い畏れ。だとしたら、一体何に。
『誰に向かって訊いているのかと、問うている』
唐突な第三者の声に、弾かれたように振り返った。
気配無くそこに立っていたのは、見上げる程の巨躯に黄金色の鋭い2本の角を持った、美貌の白鬼だった。
白い仮面の奥の金の瞳は真っ直ぐに的場を見下ろしているが、こちらから見返すことが出来ない。
『答えらんねぇなら、迂闊に近付くんじゃねえよ。ガキが』
また別の声がした。
いつの間にか、咲耶の傍に別の鬼が立っている。
白鬼と同等の体躯に、漆黒の2本の角。そして、揺らめく炎のように紅い髪と紅い仮面。
ああ、美しいこの2人の大鬼は、あの日鳥居の上に見た小鬼達だ。
本能で感じた大妖であるという予感は、当たっていた。