daybreak come.
名前を変える
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その一言で、彼女が的場をはじめとする祓い人の世界をある程度知っているであろうことが窺えた。
もしかしたら、"ある程度"ではないかもしれない。
その名が、その存在が、その妖力が、全てにおいて圧倒的で祓い人すらも脅かしたあの男の孫ならば。
知識に加えてこの度胸ならば間違い無い。あとは噂通りの妖力が備わっていれば、確実に使える。
「……こちらの素性がばれてるなら話が早い。君に訊きたいことがあって来たんだ。俺の羽織ってる着物、何色に見える?」
こんな子供なら、きっと引き込むのは簡単だ。
この先のことを考え、期待を込めた返答を待っていると、咲耶は訝しげに首を傾げた。
「ちょっと、何を言ってるのか分からないんですけど。貴方が着ているのは、ただの高校の学生服でしょ?黒の。それを着物って呼ぶの?」
全く意味が分からないと言いたげに、その整った口元に嘲笑を浮かべる。
予想していなかった反応に、すぐに言葉が出てこなかった。
咲耶は、大仰に肩を竦めて溜め息をつく。
「的場の人が来たって言うから、お祖父ちゃんに何か因縁をつけに来たのかと思ったのに。あーあ、心配損だったなぁーー」
言いながら、怠そうな仕草で的場に背を向けると、さっさと小道の奥へと消えてしまった。
呆然と、呼び止めることも出来ずに立ち尽くす。
2度の落胆は、思う以上にダメージが大きい。
神崎の孫、神崎咲耶が強い妖力を持つという噂は、やはりただの噂はだったのだろうか。
彼女のあの反応は、演技などではなかった。本当に視えていなかったのだ。
無気力に羽織っていた着物を脱ぐと、それをぎゅうと握り締める。
本当に神崎咲耶が視えない人間だったとしたら、彼女に関する噂は、一体どこから来たのだろう。
それに、咲耶を知っているらしい名取や拓磨は、少なくとも彼女に妖力が備わっているということを否定しなかった。
苛立ちや焦り、失意や捨てきれない期待にざわつく心を落ち着けようと、深く息を吐く。
耳元で、名取の鼻で笑う声が聞こえた気がした。
"彼女は、きっとお前の思い通りにはならないよ"
名取の方が、神崎咲耶のことを知っている。
そう思った時にはもう、駆け出していた。
————
「周一さん」
「ぉわあっ!」
次の会合まで待てず、数日後、下校途中の名取を捕まえた。
「曲がり角の向こうで待つな!というか、通学路に現れるなよ縁起が悪いな!」
「周一さんは俺を何だと思ってるの」
ある程度本音らしい戯れ言を鼻であしらい、そのまま場所を変えずに数日前の出来事を話した。
相手は名取周一。嫌な予感が無かった訳ではない。
「あっははははははは!えっ?それで何も出来ず何も言えず帰ってきたってワケ?あの的場静司が?」
その予感の通り、名取はここぞとばかりに腹を抱えて笑う。
予想通りとはいえ、癇に障る。
「いい感じに振り回されてるじゃないか、的場のくせに」
「それがどういうことなのか教えてくれない?周一さんは、あの子のことを知ってるんでしょ」
苛立ちを隠して問えば、笑いすぎたらしい名取は眼鏡を外して目尻の涙を拭った。
「今流れてきてる噂が本当なのかどうか、正直俺にも分からない。けど、視える人であるのは確かだよ。で、その"視る力"は自分でコントロール出来るらしい。普段は視えないようにしてるって、本人に聞いたよ」
もしかしたら、"ある程度"ではないかもしれない。
その名が、その存在が、その妖力が、全てにおいて圧倒的で祓い人すらも脅かしたあの男の孫ならば。
知識に加えてこの度胸ならば間違い無い。あとは噂通りの妖力が備わっていれば、確実に使える。
「……こちらの素性がばれてるなら話が早い。君に訊きたいことがあって来たんだ。俺の羽織ってる着物、何色に見える?」
こんな子供なら、きっと引き込むのは簡単だ。
この先のことを考え、期待を込めた返答を待っていると、咲耶は訝しげに首を傾げた。
「ちょっと、何を言ってるのか分からないんですけど。貴方が着ているのは、ただの高校の学生服でしょ?黒の。それを着物って呼ぶの?」
全く意味が分からないと言いたげに、その整った口元に嘲笑を浮かべる。
予想していなかった反応に、すぐに言葉が出てこなかった。
咲耶は、大仰に肩を竦めて溜め息をつく。
「的場の人が来たって言うから、お祖父ちゃんに何か因縁をつけに来たのかと思ったのに。あーあ、心配損だったなぁーー」
言いながら、怠そうな仕草で的場に背を向けると、さっさと小道の奥へと消えてしまった。
呆然と、呼び止めることも出来ずに立ち尽くす。
2度の落胆は、思う以上にダメージが大きい。
神崎の孫、神崎咲耶が強い妖力を持つという噂は、やはりただの噂はだったのだろうか。
彼女のあの反応は、演技などではなかった。本当に視えていなかったのだ。
無気力に羽織っていた着物を脱ぐと、それをぎゅうと握り締める。
本当に神崎咲耶が視えない人間だったとしたら、彼女に関する噂は、一体どこから来たのだろう。
それに、咲耶を知っているらしい名取や拓磨は、少なくとも彼女に妖力が備わっているということを否定しなかった。
苛立ちや焦り、失意や捨てきれない期待にざわつく心を落ち着けようと、深く息を吐く。
耳元で、名取の鼻で笑う声が聞こえた気がした。
"彼女は、きっとお前の思い通りにはならないよ"
名取の方が、神崎咲耶のことを知っている。
そう思った時にはもう、駆け出していた。
————
「周一さん」
「ぉわあっ!」
次の会合まで待てず、数日後、下校途中の名取を捕まえた。
「曲がり角の向こうで待つな!というか、通学路に現れるなよ縁起が悪いな!」
「周一さんは俺を何だと思ってるの」
ある程度本音らしい戯れ言を鼻であしらい、そのまま場所を変えずに数日前の出来事を話した。
相手は名取周一。嫌な予感が無かった訳ではない。
「あっははははははは!えっ?それで何も出来ず何も言えず帰ってきたってワケ?あの的場静司が?」
その予感の通り、名取はここぞとばかりに腹を抱えて笑う。
予想通りとはいえ、癇に障る。
「いい感じに振り回されてるじゃないか、的場のくせに」
「それがどういうことなのか教えてくれない?周一さんは、あの子のことを知ってるんでしょ」
苛立ちを隠して問えば、笑いすぎたらしい名取は眼鏡を外して目尻の涙を拭った。
「今流れてきてる噂が本当なのかどうか、正直俺にも分からない。けど、視える人であるのは確かだよ。で、その"視る力"は自分でコントロール出来るらしい。普段は視えないようにしてるって、本人に聞いたよ」