daybreak come.
名前を変える
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「え、拓磨さん、今何て?」
その日の夜の会合にて、神崎家の孫の噂はでたらめだったことを話していると、その相手————拓磨洋介は眼鏡の奥で笑った。
「だから、神崎さんにはお孫さんが"2人"いるんだよ。おそらく、君が今日会ったのはお兄さんの方だ。妹さんが少々敏感な子だとは聞いていたけれど、あの噂の真偽は分からないよ」
その話に、的場の中で消えかけていた火が再びともる。
拓磨の話は真実だろう。だとすれば、鳥居の上に見た小鬼達が何者だったのかも見当がつく。
あの時何故関わってはいけないと思ったのか、何故妖を前に目を逸らしてしまったのか、それは、無自覚に小鬼達から畏れを感じていたからだ。それ程の大妖であると、祓い人の本能で感じていたからだ。
あの小鬼達は、神崎家の孫娘と関係があるに違い無い。
「彼女は、きっとお前の思い通りにはならないよ」
その時、1人の人物が会話に入ってきた。
声のした方に視線を向ければ、そこには高校の制服姿の名取周一が立っていた。
何を知っているというのか、含みのある笑みを浮かべて的場を見ている。それが、どうにも気に障った。
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ。どういうつもりか知らないが、何でも自分の思い通りになると思ったら大間違いだ」
名取は、神崎の孫娘の何を知っているのか。
それを聞こうと、苛立ちを伴わせて詰め寄ったところに拓磨が割り込んできた。
「2人とも、喧嘩はやめなさい」
「まだ何もしてないし、何も言ってませんよ」
真っ当な大人が身近にいてくれるのはありがたいが、真っ当すぎてこういう時に話が進まなくなるなと心の中で吐き捨てた。
「そういえば、周一君と彼女は同じ学校だったね」
「同じ学校だったのは中学の時ですけど、後輩ですよ。今でもたまに連絡します」
そこまでの話を聞いて、その場を離れた。
妖祓いの名家である名取家の人間と、今でも関係を持っているということ。それが最早答えであろう。
神崎家の孫娘がどの程度の妖力を持つかは、会って試せば分かることだ。
————
翌日の放課後、再度神崎邸————○○神社を訪れた。
前置きから説明をして試す、という手順が面倒になり、制服の上に"あの"着物を羽織ってきた。
今日は、鳥居の上にあの小鬼達の姿は無い。
いざ目的の人物のもとへと足を踏み出した時、背後に迫ってきた足音に反射的に振り返る。
そこに姿を現した下校中らしき制服姿の美しい少女は、急に振り返った的場に少々驚きつつ、先に鳥居をくぐって奥に進んでいった。
ただ参拝に来ただけではないと気付いたのは、参道から逸れた脇の小道に入っていこうとしたからだ。
昨日ここで会った神崎家の長男と思しき青年も、同じ小道から住居の方へと帰っていった。
彼女は、まさか。
「あの、ちょっと待って!」
小道の入口まで追いかけてみれば、その先で立ち止まった少女は長い髪をなびかせて振り返る。
「あ、もうばれた?話は聞いてますけどね、的場静司さん」
可憐な美しさを湛えながら、しかし、不敵で不遜に笑むその表情は、これまでに出会った誰とも似ていない。
ざわりと動いたのは周りの空気か、それとも的場の心か。
「君は……」
少女は、わざとらしい程ににっこりと作り笑いを浮かべる。
「はじめまして。私が神崎咲耶です。的場家の方がどういったご用件でしょうか」