afterglow of sunset.
名前を変える
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気丈に振る舞うその陰に、どれ程の険しい道があったのだろう。
聞けば聞く程稀な性質に、安易に自分と比べることが出来ない。
一番知りたかったことが知れたのに、今は聞いてよかったのだろうかとすら思う。
「無能ね……別に俺はそうは思わないけど」
「まあ……界隈ではそこそこ力のある名前ですから、お飾り程度でも、一門に入れる価値はありますよね。諸刃ですけど」
本当に、中学生とは思えない切れ味の返し。こちらの思考が、まるで読まれている。
的場にしてみれば、精一杯咲耶の気持ちに寄り添ったつもりだったのだが。
「そうかもしれないけど……でも、違う」
以前の的場ならば、そうだった。利用できるならば名前だけ、お飾りでも構わないと思ったはず。
今この時になって、咲耶への奇妙な執着心に名前があることに気付いた。
色々と大変な事実を知ってしまったが、関心はもうそこには無い。
一体いつからなのか、初めて出会ったあの時からだったのか。
「咲耶、俺が君を護ればいい。それだけだよ」
本当に知りたかったのは、理由も無く的場の心を乱し、惹き付ける神崎咲耶という人のこと。
咲耶は、目をぱちくりさせる。
「はい……?何がどうなって、そうなったんですか?」
そして、全く理解が追いつかないという顔をする。
的場は、ようやくいつものように笑んで見せた。
利の無いことをする、ましてや、接し方を間違えれば、災厄を被ることにもなりかねないというのに。我ながら、愚かだ。
それでも。
「君の力は、祓い屋としては無能なのかもしれない。けど、君は祓い屋じゃない。だから、俺は君が無能だとは思わないよ。神崎の名に十分な利用価値はあっても……」
ちらと、反対側の欄干を見る。
「その代償は、きっと大きい」
向こうの欄干の上にちょこんと腰を下ろした紅白の小鬼達が、仮面の奥からじっと的場を見ていた。
しかし、もう畏れはしない。
「だったら、せめて他の祓い屋が咲耶を利用しないように……もう妖に怖い思いをしなくてもいいように、俺が君を護るよ」
咲耶が打ち明けにくい真実を話してくれたのなら、自分もそれに応えるだけ。
すぐに信じてもらえるとは思っていないが、これが今ここにある本心なのだ。
なのだが、
「ぷっ……あははははははちょーーーーーウケますね、それ」
何故か、咲耶は腹を抱えて大笑いをする。
今度は、こちらが目をぱちくりさせる番だった。
「ちょっとカッコ良すぎません?あ、褒めてませんよ。誰に向かって言ってるんだか知りませんけど、的場に護ってもらう筋合いがどこにあると?」
切り返しが辛辣になってきた。
ああ、いつもの咲耶だ。
そう思ったら、安心という気持ちが表情を緩めさせた。
「筋合いがどうとか、そういうことじゃない。それに、的場じゃなくて俺が……静司個人が、そうしたいだけ」
ふと、咲耶は笑うのをやめる。
「私……この前の件は、別に傷付いたり気にしたりしてないって言いましたよ」
咲耶の目には、かすかな戸惑いが垣間見えた。
「うん、聞いたよ。あの時のことは、あらためてごめん。けれど、それについての罪滅ぼしとか、そういうことでもないんだ。……もっと、君のことが知りたいだけ」
的場にとっては告白のようなもので、柄にも無く気恥ずかしくなってくる。
咲耶が何か言いかけたが、まだその反応を見る勇気が無い。
「そういう訳だから、今後ももう少し付き合ってもらえると嬉しいな」
「えっ、それって、またうちに来るってことですか?」
あからさまに迷惑そうな顔をされたが、構わずに頷いて見せた。
「そちらの神社でも、その辺の公園とかどこでもいいけど。君とまた、話がしたいんだ」
「……別に、考えといてあげてもいいですけどね」
横柄な態度を取りながらも仕方無さそうに笑ったその表情は、先刻目にしたのと同じくとても可愛くて、咲耶本来の表情であることが分かった。
聞けば聞く程稀な性質に、安易に自分と比べることが出来ない。
一番知りたかったことが知れたのに、今は聞いてよかったのだろうかとすら思う。
「無能ね……別に俺はそうは思わないけど」
「まあ……界隈ではそこそこ力のある名前ですから、お飾り程度でも、一門に入れる価値はありますよね。諸刃ですけど」
本当に、中学生とは思えない切れ味の返し。こちらの思考が、まるで読まれている。
的場にしてみれば、精一杯咲耶の気持ちに寄り添ったつもりだったのだが。
「そうかもしれないけど……でも、違う」
以前の的場ならば、そうだった。利用できるならば名前だけ、お飾りでも構わないと思ったはず。
今この時になって、咲耶への奇妙な執着心に名前があることに気付いた。
色々と大変な事実を知ってしまったが、関心はもうそこには無い。
一体いつからなのか、初めて出会ったあの時からだったのか。
「咲耶、俺が君を護ればいい。それだけだよ」
本当に知りたかったのは、理由も無く的場の心を乱し、惹き付ける神崎咲耶という人のこと。
咲耶は、目をぱちくりさせる。
「はい……?何がどうなって、そうなったんですか?」
そして、全く理解が追いつかないという顔をする。
的場は、ようやくいつものように笑んで見せた。
利の無いことをする、ましてや、接し方を間違えれば、災厄を被ることにもなりかねないというのに。我ながら、愚かだ。
それでも。
「君の力は、祓い屋としては無能なのかもしれない。けど、君は祓い屋じゃない。だから、俺は君が無能だとは思わないよ。神崎の名に十分な利用価値はあっても……」
ちらと、反対側の欄干を見る。
「その代償は、きっと大きい」
向こうの欄干の上にちょこんと腰を下ろした紅白の小鬼達が、仮面の奥からじっと的場を見ていた。
しかし、もう畏れはしない。
「だったら、せめて他の祓い屋が咲耶を利用しないように……もう妖に怖い思いをしなくてもいいように、俺が君を護るよ」
咲耶が打ち明けにくい真実を話してくれたのなら、自分もそれに応えるだけ。
すぐに信じてもらえるとは思っていないが、これが今ここにある本心なのだ。
なのだが、
「ぷっ……あははははははちょーーーーーウケますね、それ」
何故か、咲耶は腹を抱えて大笑いをする。
今度は、こちらが目をぱちくりさせる番だった。
「ちょっとカッコ良すぎません?あ、褒めてませんよ。誰に向かって言ってるんだか知りませんけど、的場に護ってもらう筋合いがどこにあると?」
切り返しが辛辣になってきた。
ああ、いつもの咲耶だ。
そう思ったら、安心という気持ちが表情を緩めさせた。
「筋合いがどうとか、そういうことじゃない。それに、的場じゃなくて俺が……静司個人が、そうしたいだけ」
ふと、咲耶は笑うのをやめる。
「私……この前の件は、別に傷付いたり気にしたりしてないって言いましたよ」
咲耶の目には、かすかな戸惑いが垣間見えた。
「うん、聞いたよ。あの時のことは、あらためてごめん。けれど、それについての罪滅ぼしとか、そういうことでもないんだ。……もっと、君のことが知りたいだけ」
的場にとっては告白のようなもので、柄にも無く気恥ずかしくなってくる。
咲耶が何か言いかけたが、まだその反応を見る勇気が無い。
「そういう訳だから、今後ももう少し付き合ってもらえると嬉しいな」
「えっ、それって、またうちに来るってことですか?」
あからさまに迷惑そうな顔をされたが、構わずに頷いて見せた。
「そちらの神社でも、その辺の公園とかどこでもいいけど。君とまた、話がしたいんだ」
「……別に、考えといてあげてもいいですけどね」
横柄な態度を取りながらも仕方無さそうに笑ったその表情は、先刻目にしたのと同じくとても可愛くて、咲耶本来の表情であることが分かった。