afterglow of sunset.
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「小父さん、俺のお客さんをおどかさないでよ」
鋭い視線が、的場へ移る。
迷いの無い腕が伸び、その手は学生服の肩の辺りを乱暴に掴んだ。
「静司……神崎の人間と関わっているのか……?この家のせいで、的場は常に陰に追いやられてきた……!その歴史の中で、一体どれだけの頭首が苦悩し、病んで、死んだと思ってる!?」
骨ばった腕のどこにそんな力があったのかと思う程、的場の肩を揺さぶる力は強い。
的場家の頭首だった人間の中には、強い妖力と気高い家名を持つ神崎家の者とことあるごとに比較され続けながら、過酷な祓い人の現役時代を過ごした者もいるという。
同じ世界を視ることが出来ながら、光と闇のように相容れなかった2つの家。
妖の世界を視ながらも、表の世界で誰からも必要とされた 神崎家に、いつかの的場家頭首は、ひたすら劣等感を抱き、そして、怯え続けたのだろう。右眼を狙う大妖に追われながら。
そこに、未来の自分の姿を見たような気がした。
「あの」
すぐ近くで聞こえた声は、負の感情を断ち切るような響きをしていた。
首を捻ると、咲耶が広い玄関の中程まで入ってきていた。
大人が感情的になり声を荒らげる場面に、さぞかし驚いたことだろう。ぎこちない動きで、持っていた洋菓子の紙袋をそっと式台に置く。
「私、もう帰りますし、もう来ないので。だから……静司さんに乱暴なことはしないでください」
わずかな恐れを浮かべながらも、的場の小父の顔をしっかりと見ている。
これ程の光景を見せられながら、互いの家の関係性も知っているであろうというのに、それでも的場を気遣う仕草に、胸が絞るように苦しくなった。
例えばそれが、この場を治めるための道具としての言葉だったとしても、自分には出来なかったこと。そのたった一言が、こんなにも心を労ってくれるとは。
今、あらためて後悔が押し寄せてくる。
「こんなもの……!」
的場の小父は、式台に置かれたその紙袋を鷲掴みにすると、高く掲げ持った。
的場家が神崎家に対しあまり友好的でないのは知っていたが、まさかこの人個人がここまでの感情を抱いているとは思わなかった。
それよりも、咲耶に危害が及んではいけない。これ以上、恐い思いをさせる訳にはいかない。
「とっとと出て行け!二度と来るな!」
咲耶の腕を引いて外へ飛び出した直後、ぐしゃりと箱が叩き付けられる音がした。
どのくらい走っただろうか。気が付くと、自宅からは大分離れた橋の上まで来ていた。
既に手は離しているが、後方には咲耶の気配がある。立ち止まると、付いてくる足音も止まる。
後悔と罪悪感、そして、身内の行動を恥じる気持ちが胸の奥で騒ぎ出していた。
「…………ごめん」
我ながら、驚く程に小さな声だった。これでは駄目だと思ったのだが、
「別に、ちょっと驚いただけです。こうなるかもしれないことは、祖父から聞いてましたから」
それでも、咲耶の耳には届いたようだった。
振り返ると咲耶は欄干から川面を見下ろしており、的場もつられて欄干に腕を掛ける。
そこに載せた両手を、強く握り締めた。
本当に謝りたいことは、別のところにある。
「……それとは別に、この間のこと。俺は、多分……きっと、君を傷付けた」
これまでならば、自分が正しいと思うことなら後悔などしなかったはずなのに。
それなのに、何故だろう。この人には、許されたいと思ってしまう。
少し離れたところから、ふふと笑う声が聞こえた。
「貴方のような人でも、素直に謝れるんですね」
いつも通りの生意気な返し。
鋭い視線が、的場へ移る。
迷いの無い腕が伸び、その手は学生服の肩の辺りを乱暴に掴んだ。
「静司……神崎の人間と関わっているのか……?この家のせいで、的場は常に陰に追いやられてきた……!その歴史の中で、一体どれだけの頭首が苦悩し、病んで、死んだと思ってる!?」
骨ばった腕のどこにそんな力があったのかと思う程、的場の肩を揺さぶる力は強い。
的場家の頭首だった人間の中には、強い妖力と気高い家名を持つ神崎家の者とことあるごとに比較され続けながら、過酷な祓い人の現役時代を過ごした者もいるという。
同じ世界を視ることが出来ながら、光と闇のように相容れなかった2つの家。
妖の世界を視ながらも、表の世界で誰からも必要とされた 神崎家に、いつかの的場家頭首は、ひたすら劣等感を抱き、そして、怯え続けたのだろう。右眼を狙う大妖に追われながら。
そこに、未来の自分の姿を見たような気がした。
「あの」
すぐ近くで聞こえた声は、負の感情を断ち切るような響きをしていた。
首を捻ると、咲耶が広い玄関の中程まで入ってきていた。
大人が感情的になり声を荒らげる場面に、さぞかし驚いたことだろう。ぎこちない動きで、持っていた洋菓子の紙袋をそっと式台に置く。
「私、もう帰りますし、もう来ないので。だから……静司さんに乱暴なことはしないでください」
わずかな恐れを浮かべながらも、的場の小父の顔をしっかりと見ている。
これ程の光景を見せられながら、互いの家の関係性も知っているであろうというのに、それでも的場を気遣う仕草に、胸が絞るように苦しくなった。
例えばそれが、この場を治めるための道具としての言葉だったとしても、自分には出来なかったこと。そのたった一言が、こんなにも心を労ってくれるとは。
今、あらためて後悔が押し寄せてくる。
「こんなもの……!」
的場の小父は、式台に置かれたその紙袋を鷲掴みにすると、高く掲げ持った。
的場家が神崎家に対しあまり友好的でないのは知っていたが、まさかこの人個人がここまでの感情を抱いているとは思わなかった。
それよりも、咲耶に危害が及んではいけない。これ以上、恐い思いをさせる訳にはいかない。
「とっとと出て行け!二度と来るな!」
咲耶の腕を引いて外へ飛び出した直後、ぐしゃりと箱が叩き付けられる音がした。
どのくらい走っただろうか。気が付くと、自宅からは大分離れた橋の上まで来ていた。
既に手は離しているが、後方には咲耶の気配がある。立ち止まると、付いてくる足音も止まる。
後悔と罪悪感、そして、身内の行動を恥じる気持ちが胸の奥で騒ぎ出していた。
「…………ごめん」
我ながら、驚く程に小さな声だった。これでは駄目だと思ったのだが、
「別に、ちょっと驚いただけです。こうなるかもしれないことは、祖父から聞いてましたから」
それでも、咲耶の耳には届いたようだった。
振り返ると咲耶は欄干から川面を見下ろしており、的場もつられて欄干に腕を掛ける。
そこに載せた両手を、強く握り締めた。
本当に謝りたいことは、別のところにある。
「……それとは別に、この間のこと。俺は、多分……きっと、君を傷付けた」
これまでならば、自分が正しいと思うことなら後悔などしなかったはずなのに。
それなのに、何故だろう。この人には、許されたいと思ってしまう。
少し離れたところから、ふふと笑う声が聞こえた。
「貴方のような人でも、素直に謝れるんですね」
いつも通りの生意気な返し。