契約
木村先輩は悪魔ちゃんの問いかけに答えるように言った。
「そうよ。今は父と二人暮らしなの」
「私のように怪我したりはありませんか?」
悪魔ちゃんは悲しげな表情で木村先輩に問いかけた。
「いえ、怪我はあるわ。まだ死んでいないことが救いよ。山本さん、あなたは幸せ者よ。だって、手を差し伸べてくれる人がいるんだから」
木村先輩は悲しそうに言った。
これは本心ということなのだろうか…?
「木村先輩、話してください。私と同じ辛い想いをしている人を救いたいんです…!」
「…山本さん、これは身内の問題よ。誰にも、父を止めることができないの。私がすべてを受け止め、我慢するしかないのよ…」
悪魔ちゃんは座っていたベンチから立ち上がり、木村先輩の目の前に立った。
「お願いです。先輩を苦しみから救いたいんです…!」
悪魔ちゃんは涙ぐみながら言った。
木村先輩は少し黙って考え込んでいた。なにかを迷っているようだった。
すると、先輩は立ち上がって言った。
「山本さん、………今はまだ決断ができないわ。また明日」
そう言うと、スタスタと森の中へ消えていった。
悪魔ちゃんはチッと舌打ちして、公園を後にした。
──────────────────────────
木村先輩と別れたあと、私たちは帰路についた。
結局、懐に入りこむことができなかった。しかし、わかったことがひとつある。それは、木村先輩になにかしら事件が起きているということだ。もちろん、家庭内の事件ではあるが。
どちらにしろ、木村先輩の精神は日に日に蝕まれていることだろう。
一日や二日で聞き出せる内容ではない、ということは三人がわかっていたことだ。
そして、なぜ、先輩は公園の森の奥に消えたのか。問題は二つに増えたが、解決すれば、きっとこの夢の呪いも解けるだろう。
私はそう思い、床についた。
──────────────────────────
木村先輩の懐に入り込めるまでの間、毎日木村先輩と放課後を共にした。
毎日毎日同じ道を、世間話を、休日なにをしているかなどを話すことで仲を深めた。
次第に、木村先輩は心をひらいてくれるようになり、より近い距離にいることができるようになった。
ある日の放課後。
終礼のチャイムが鳴り終わり、木村先輩の教室をのぞいた。
「木村先輩」
木村先輩の教室のドアをガラガラと開け、先輩の名前を呼んだ。その時だ。
私の目の前に飛び込んできた光景はとんでもないものだった。
「そうよ。今は父と二人暮らしなの」
「私のように怪我したりはありませんか?」
悪魔ちゃんは悲しげな表情で木村先輩に問いかけた。
「いえ、怪我はあるわ。まだ死んでいないことが救いよ。山本さん、あなたは幸せ者よ。だって、手を差し伸べてくれる人がいるんだから」
木村先輩は悲しそうに言った。
これは本心ということなのだろうか…?
「木村先輩、話してください。私と同じ辛い想いをしている人を救いたいんです…!」
「…山本さん、これは身内の問題よ。誰にも、父を止めることができないの。私がすべてを受け止め、我慢するしかないのよ…」
悪魔ちゃんは座っていたベンチから立ち上がり、木村先輩の目の前に立った。
「お願いです。先輩を苦しみから救いたいんです…!」
悪魔ちゃんは涙ぐみながら言った。
木村先輩は少し黙って考え込んでいた。なにかを迷っているようだった。
すると、先輩は立ち上がって言った。
「山本さん、………今はまだ決断ができないわ。また明日」
そう言うと、スタスタと森の中へ消えていった。
悪魔ちゃんはチッと舌打ちして、公園を後にした。
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木村先輩と別れたあと、私たちは帰路についた。
結局、懐に入りこむことができなかった。しかし、わかったことがひとつある。それは、木村先輩になにかしら事件が起きているということだ。もちろん、家庭内の事件ではあるが。
どちらにしろ、木村先輩の精神は日に日に蝕まれていることだろう。
一日や二日で聞き出せる内容ではない、ということは三人がわかっていたことだ。
そして、なぜ、先輩は公園の森の奥に消えたのか。問題は二つに増えたが、解決すれば、きっとこの夢の呪いも解けるだろう。
私はそう思い、床についた。
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木村先輩の懐に入り込めるまでの間、毎日木村先輩と放課後を共にした。
毎日毎日同じ道を、世間話を、休日なにをしているかなどを話すことで仲を深めた。
次第に、木村先輩は心をひらいてくれるようになり、より近い距離にいることができるようになった。
ある日の放課後。
終礼のチャイムが鳴り終わり、木村先輩の教室をのぞいた。
「木村先輩」
木村先輩の教室のドアをガラガラと開け、先輩の名前を呼んだ。その時だ。
私の目の前に飛び込んできた光景はとんでもないものだった。