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契約

「私、父親に虐待されていたんです」
悪魔ちゃんは話し始めた。これは私自身の過去ではない。私の両親はやさしく、手をあげたりするような人ではないからだ。
悪魔ちゃんの親は違ったのだろう。
「最初はすごく優しい父でした。でも、不景気になって父が社長を務める会社が倒産してしまいました。虐待されるようになったのはその日からでした」
木村先輩はうんうんとうなづきながら、聞いてくれている。
「父は必死でした。来る日も来る日もたくさん会社を受けましたが、帰宅した時の父は怒りの表情に満ち溢れていました。そして、食卓で酒がないと母に暴力をふるいました。」
木村先輩は苦しそうにその話を聞きました。
「母は嫌な顔せず、ずっと耐えていました。時には母で満足しない時は私にも暴力を振るわれました。母は私をかばいましたが、男と女の力は歴然。私も数発殴られ、翌日は学校を休みました。」
私は聞いたことのない悪魔ちゃんの声色に驚いた。
抱えているものが多きすぎる。涙が出た。
「父が会社に採用される日はなく、金は食費と酒、私の通う学費に消えました。とうとう父は母を殺し、私を殺そうとした時に警察が到着し、私は保護され、父は逮捕され、今も離れ離れです。」
木村先輩は少し考え事をした。
「山本さん、大変だったのね。なぜ、警察が家に?」
悪魔ちゃんは会話を続けた。
「私が生まれたからずっと仲良くしてくれていた近所のおばさんがいたんです。私の父の会社が倒産して以降、私の顔色や元気さに異変を感じたんだと思います。夜になると、父の怒鳴り声も聞こえますし、そういった面からだと思います」
悪魔ちゃんは悲しそうな表情をして話している。
「そうなのね。今までどこで暮らしていたの?」
「事件当初は、隣町の孤児院で、そのあとに叔母に引き取られ、今はそこに住んでいます。」
悪魔ちゃんの口角が上がったように見えた。これは真実なのか嘘なのか、どっちなんだろう。
なにか企んでいそうと感じた。
「そう…。そんなむごいことをされていたのね…」
木村先輩は暗い顔をして口を開いた。
悪魔ちゃんは公園のベンチに座りながら地面を見ていた顔をあげ、遊具で遊んでいる子供たちを見ながら言った。
「私だって友達と、お母さんともっと遊びたかったな」
悲しい顔で悪魔ちゃんは言う。
私も悲しくなってきた。そんな暗い話をする悪魔ちゃんを木村先輩はずっと見つめていた。
木村先輩はこの話を聞いてどう感じたんだろう。私も同じような体験をして悩んでいるの、と同意の気持ちを見せてくれるだろうか。そうなれば万々歳だ。
そう思っていると木村先輩は話してきた。
「その…聞きにくい話なんだけど。……もしかして、事件があったのは小学生の頃…?」
悪魔ちゃんは少し間を開けてから言った。
「……そうですね。だから、中学の頃は男子からいじめられてました。高校に入ったら、そんな過去は忘れたかのようにクラスメイトとは仲良くできました。これも、叔母のおかげでしょうか…」
「そう……。私もね、似たような体験したことあるのよ。山本さんのように親戚と一緒に暮らしたりとかはないけどね」
「………?そうなんですか…?」
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