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契約

コツコツ…
木村先輩の隣を歩くが、すごく早歩き。着いていくのも大変だ。
「あなた、本当についてくるのね」
「私は先輩の力になりたいだけなんです」
木村先輩は「ふーん」といった表情をして、カフェに入った。
カラン。
昔ながらの商店街に相応しい純喫茶だった。出入り口のドアも自動ドアではなく、自分で引くタイプであった。お客さんが来たことがわかるようにドアの上のほうに小さな鐘が鳴るような仕組みだ。
昼だというのに少し薄暗い。
放課後の時間にはなるがそこまで人が多いわけではなかった。
店員さんが近づいてきた。
「いらっしゃいませ。2名様ですね。ご案内いたします」
もっとフレンドリーな感じかと思ってたけど、単なるイメージか。
店員に案内され席につく。案内された場所は、窓際の2人だった。
「私がいつも来る時はこんな場所じゃないのに…」
「まぁ、いいじゃないですか。ここではなにをしに来ているのですか?」
木村先輩は「はぁ」とため息をついた。
「まだ帰宅したくないだけ。これでいい?」
窓の外を見ながら木村先輩はめんどくさそうに、言ってきた。
「…なにか理由があるんですか…?」
「あんたに私のなにがわかるの…」
…聞いてはいけない内容だったようだ。
悪魔ちゃんが口を開いた。
「……実は、私父親に虐待されてたんです」
木村先輩は驚いた顔をしてこっちを見た。
「大丈夫、なの…?」
「…大丈夫ですよ!でも、外ではこんなに明るく振る舞うのは正直きついです…」
「…」
木村先輩は暗い顔をしてうつむいてしまった。
少し沈黙があった後、木村先輩は私の手を引っ張って店を出た。
「…先輩、すみません。いきなりあんな話しちゃって…」
「……いいのよ。これから人気のない公園いきましょ」
先輩からの誘いは初めてだった。
コツコツ…
商店街を抜けて、老人しかいない公園があった。
「ここよ」
「こんな公園あるんですね」
木村先輩に手をひかれ、木陰のあるベンチに座った。
「いきなりどうしたんですか?先輩」
きっとさっきの悪魔ちゃんの言動に突き動かされたのだろう。それが何を物語っているのかはまだわからない。
「…いえ、あんな人のいる密室では中々話せない内容だと思ってここに来たのよ。私も気分転換にここに来るの」
「ありがとうございます。先輩って優しいんですね」
「後輩が悩んでいるなら、なんでも聞いてあげるのは先輩の役目よ」
どうやら、自分の問題より他人の問題は解決しようという人。
そして、根はやさしいけど、不特定多数には心を開いたりしないらしい。
「…で、山本実夢さん。なにがあったの?」
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