はじまりの物語
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真っ暗な世界に僕はいた。
『キャメロ』
どこからか僕を呼ぶ声が聞こえる。
『なんで助けてくれなかったの』
『助けてくれなかったの』
聞き覚えのある声だった。
……もしかして…………ヴァネッサ…?
『ねえ、なんで?なんでなの。』
『ぼ、僕は…………』
言葉が出なかった。
『見殺しにするなんて』
違う……僕は……
『人殺し』
………違う!
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「違う!」
そう叫んで目を覚ました。
すっかり日も暮れて、夜になっていた。
ヴァネッサの家の勝手口にいたが、そこにヴァネッサはいなかった。勝手口から外へ血痕が点々と滴っている。
なぜだ……?
不思議に思い、後を追った。勝手口を出て、瓦礫の広がる裏道を通り、血痕をたどった。しかし、途中で血痕が途切れていた。
「どこにいったんだろう……」
すると、後ろから声がした。
「よお、坊や」
そこにはマフラーにコートを羽織ったおじさんがいた。
この人はだれなんだろう。そして、なぜこんなにも村中の大人が皆殺しにされているのにも関わらずこの人は……。
「誰ですか?」
「まあ、通りすがりだな」
絶対嘘だ。
そんなはずない。この村には入り口が一つしかない。どう考えても故意的に村に入ってきたとしか考えられない。
「……」
「なんだ、不審者に見えるか?まあいい。」
どう考えても不審者だろう。
「誰か探しているのか」
「………」
「まあ、不審者とは普通はしゃべらないもんなぁ。俺はK。社長やってんだ」
…社長には見えない。
そういう怪しい目を向けていると、コートの内ポケットから名刺を取り出した。
「そんなに怪しい目をされちゃ困るな。これが俺の仕事だ。」
渡された名刺には、
【暗殺・殺し屋専門サービス 株式会社Meycaress】
と記してあった。
本当だったのか。
「暗殺………?」
人を殺す仕事……。
「そう。ただ人を殺すだけじゃないんだ。心や体に傷を持つ人が集まる会社。」
そんな会社があったのか。
「坊や、誰か探しているのか?」
「……友人を………」
「ほう。女の子か。」
なんでわかったんだ…?
何も言っていないのに。
「怪我、してる子なんです。でもここで血痕が途切れてるのです。」
「そうか。おそらく奴の仕業だな……。」
奴って誰だ?同業者か?
「知り合いですか?」
「いや、今追っている犯人と同一人物ってだけかな。そうだ、坊やその友人を救いたいか?」
僕は家族の敵とヴァネッサの敵を取りたい。そして、奴の正体を突き止めたい。
「奴の正体を突き止めたいです。」
「ハッハッハッハ」
男は高笑いをした。静まり返った村中に響き渡る声で。
「なにがおかしいのですか?」
ニヤっと微笑んでこう言った。
「昔の俺そっくりだ。よし、ついてこい!」
すると、男は僕の手を引っ張って村を出た。
「あ、あの!犯人は……」
「あー犯人ね。これから言うことに約束できるなら、突き止めて行こうじゃないか。」
「…………なんですか…?」
村の入り口まできて何を言いんだすんだ…。
「坊やが今から踏み出す世界は、一般とはかけ離れた生活になる。」
「どういうことですか?」
「『奴を追う』ということは今までの生活はできない。それでもいいか」
今までの平和な生活を手放すか…。でも、ヴァネッサ失踪の解決したい…。
「それができなければ、『奴を追う』のは止めることだな」
「僕は……………」