中編 地味子がアイドルやってるなんて知らない
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僕はあれから数日、ミョウジさんを観察してみた。
とある月曜、前の席のクラスメイトがプリントを渡そうとしたとき、勢い余って筆箱を落としてしまった。
「わっ、ごめん!」
クラスメイトは焦ってしゃがむが、ミョウジさんは軽く微笑んで筆箱を拾っただけだった。
「大丈夫、拾ってくれてありがとう。」
その声は柔らかく、自然で余計な力が入っていない。
クラスメイトは照れたように顔を赤くし、うなずく。
筆箱を落とした大きな音で緊張が走った教室も空気が和らいだ。
火曜、廊下を走って転んだ鈴宮さんに、ミョウジさんは何の迷いもなく自然に「大丈夫ですか?」と、手を差し伸べていた。
鈴宮さんは一瞬驚き、その手を取って立ち上がろうとした。
だがこの鈴宮さんはアンラッキーの持ち主なので、その手を持って立ち上がろうとしてもう一度尻もちをつき、ミョウジさんの手を引っ張ってしまいミョウジさんも鈴宮さんの上に被さる形で転んでしまった。
2人はこの事態に笑ってしまって「ごめんなさい」と言いながらも、良い空気が漂っていた。
表情も声も普段通りなのに、相手の心に確実に影響を与えていた。
水曜、授業の合間の休み時間、顔色が悪そうな友達にミョウジさんは「大丈夫?」と心配をしていた。「体調が悪ければ保健室に連れて行こうか?」とも。相手は「大丈夫、心配ありがとう」とうなずく。「無理したらダメだからね」とミョウジさんは最後に念押するようにして声をかけて席に戻った。
木曜、掃除の時間。道具の置き方をさりげなく直すだけで、周囲の動きが自然と効率よくなる。
無理やり指示するわけでもなく、声をかけるわけでもない。
ただ、無意識に周囲を動かす。その影響力は小さいようで確実に広がる。
僕は横目でミョウジさんを観察しながら、分析してみた。
声のトーン、表情の揺れ、間の取り方。どれも無理がなく、自然で、けれど周囲を整える力がある。
誰も気付かないが、テレパシーで周囲の反応を覗けば、心臓の高鳴りや戸惑い、無意識の尊敬の気持ちまで伝わる。
この数日間観察しただけで、僕は結論を出した。
……ミョウジさんはただ者ではない。この後大成するタイプかもしれない。
今日もミョウジさんは、何も意識せずノートに向かい、ペンを動かしている。
クラスの中では目立たないように静かに過ごしているだけなのに、存在そのものがメイクなんかなくたって周囲に影響を与えている。
……放っておくと面倒なことになりそうだが、まあ、まだ見ていよう。
教室の外では夕日の光がゆっくり沈み始めていた。
ミョウジさんの無意識の魅力は今日も、静かに周囲に広がっている。
僕は普段通りに帰宅し、前に買っておいたコーヒーゼリーを口に運んだ。
───ただし、ミョウジさん自身は何も知らない。
とある月曜、前の席のクラスメイトがプリントを渡そうとしたとき、勢い余って筆箱を落としてしまった。
「わっ、ごめん!」
クラスメイトは焦ってしゃがむが、ミョウジさんは軽く微笑んで筆箱を拾っただけだった。
「大丈夫、拾ってくれてありがとう。」
その声は柔らかく、自然で余計な力が入っていない。
クラスメイトは照れたように顔を赤くし、うなずく。
筆箱を落とした大きな音で緊張が走った教室も空気が和らいだ。
火曜、廊下を走って転んだ鈴宮さんに、ミョウジさんは何の迷いもなく自然に「大丈夫ですか?」と、手を差し伸べていた。
鈴宮さんは一瞬驚き、その手を取って立ち上がろうとした。
だがこの鈴宮さんはアンラッキーの持ち主なので、その手を持って立ち上がろうとしてもう一度尻もちをつき、ミョウジさんの手を引っ張ってしまいミョウジさんも鈴宮さんの上に被さる形で転んでしまった。
2人はこの事態に笑ってしまって「ごめんなさい」と言いながらも、良い空気が漂っていた。
表情も声も普段通りなのに、相手の心に確実に影響を与えていた。
水曜、授業の合間の休み時間、顔色が悪そうな友達にミョウジさんは「大丈夫?」と心配をしていた。「体調が悪ければ保健室に連れて行こうか?」とも。相手は「大丈夫、心配ありがとう」とうなずく。「無理したらダメだからね」とミョウジさんは最後に念押するようにして声をかけて席に戻った。
木曜、掃除の時間。道具の置き方をさりげなく直すだけで、周囲の動きが自然と効率よくなる。
無理やり指示するわけでもなく、声をかけるわけでもない。
ただ、無意識に周囲を動かす。その影響力は小さいようで確実に広がる。
僕は横目でミョウジさんを観察しながら、分析してみた。
声のトーン、表情の揺れ、間の取り方。どれも無理がなく、自然で、けれど周囲を整える力がある。
誰も気付かないが、テレパシーで周囲の反応を覗けば、心臓の高鳴りや戸惑い、無意識の尊敬の気持ちまで伝わる。
この数日間観察しただけで、僕は結論を出した。
……ミョウジさんはただ者ではない。この後大成するタイプかもしれない。
今日もミョウジさんは、何も意識せずノートに向かい、ペンを動かしている。
クラスの中では目立たないように静かに過ごしているだけなのに、存在そのものがメイクなんかなくたって周囲に影響を与えている。
……放っておくと面倒なことになりそうだが、まあ、まだ見ていよう。
教室の外では夕日の光がゆっくり沈み始めていた。
ミョウジさんの無意識の魅力は今日も、静かに周囲に広がっている。
僕は普段通りに帰宅し、前に買っておいたコーヒーゼリーを口に運んだ。
───ただし、ミョウジさん自身は何も知らない。