「お前は一体、何を考えていたのだろう？」

アーヤ、俺はずっと、お前のことを見てきた。いや、見守ってきたというべきか。議長の指示で、お前の行動の一つ一つを。無理に笑顔を作って、無理に他人と話し、無理に強がるお前の姿を、ただ黙って見守ることしかできなかった。
お前にとって、議長という存在は絶対的で、逆らえないものだったのだろう。俺も同じだからよくわかる。議長は俺に全てを与えてくれた。生きる価値も、理由も、全て。お前もそうだったのだろう？議長に全てを与えられたのだから、全てを捧げなければならないと、自分を追い詰めてきたのだろう？

でも、俺がどれだけお前を見たって、お前が俺に心を開くことはなかった。そんなお前の目を、俺はずっと見てきた。冷たく空虚で、それでいて何かを求めているような目を……ただ一つ、まるで議長のために存在しているようなその目を……
その目が、時々俺を見つめることがあった。だが、すぐにまた逸らし、俺からも、誰からも距離をとるように、まるで議長のことしか見ていないかのように、お前は孤独に振る舞っていた。そんなお前の中に、俺の知り得る何かがある気がした。それが何なのかはわからない、けれど、俺には、それが恐ろしいほど理解できる気がした。

お前も俺と同じなのだろう？お前も俺と同じように、議長に支配されて、引きずられていた。俺はお前に言いたかった。お前はお前のために生きていいんだと、そう言いたかった。それはまるで俺自身の願いでもあるかのようで、俺はお前を見るたびに、同情に似た苛立ちすら感じていたんだ。

「お前は一人じゃない」と言ったことを、俺はいつまでも後悔している。あの時のお前の顔を、俺はいつまでも忘れられない。お前は俺の言葉を受け入れなかった。きっと「私の何を知っているの？」と思ったのだろう。俺だってお前になにも出来ないくせに、自分の願いを振り絞るかのように無理に言った言葉が、お前にはただ無力な言葉にしか映らなかったのだろうな。あの時の俺は、本当に自分勝手だった。

でも、俺が何をしても、お前も俺のことを見ていたのだろう？そして俺も、お前を見続けていた。この関係が続く限り、俺たちはただ議長に支配されるだけの存在で、お互いに無力なままで。俺はお前の痛みを知りながら、それに対して何もすることができなかった。お前がどんなに苦しんでいても、俺にはただ見守ることしかできなかった。それがどれだけ辛いことか、お前にもわかるんじゃないか？だって、俺とお前は同じなのだから。議長という運命に縛られた、無力な駒でしかないのだから。

アーヤ、お前が生きてくれれば、俺だって救われたかもしれないのに、お前は議長のネオジェネシスに撃たれて、一足先に行ってしまった。その爆風は、どんな熱さだっただろう？どんな痛みだっただろう？愛していたはずの議長に撃たれて、お前は最後に何を感じたのだろう？俺はお前じゃないから、お前の感情の全てはわからない。けれど、議長がお前を巻き込んであれを撃ったのは事実だ。お前の苦しみを知りながら、議長はお前を撃ったんだ。それは彼の意図ではなかったかもしれない。それでも議長はお前を殺して、お前は議長に殺されたんだ。

俺は今、何を信じたらいいのかわからなくなっている。議長は俺に生きる意味を与えた。だけど、それは本当に俺のものなのだろうか？俺のためになるのだろうか？俺は何のために、今まで生きてきたのだろう？あの男——キラ・ヤマトは俺に言った。「その命は君だ」と。その言葉の意味を、俺はずっと考えている。俺の命が俺のものなら、俺の生き方は間違っていたと言うことか？

アーヤ、俺は議長を助けに行く。だけど、本当にそれが俺のためになるのかはわからない。そしてお前のためにも、何が正解なのか、俺には何もわからない。けれど、議長を目の前にしたとき、俺が何を感じるか、何をするのか……どうか見ていてほしい。そして俺が何をしても、お前だけは俺を理解してくれると、俺は信じている。