男性不信の女子が壁ドンされてみた
「か…壁ドンしてください……!」
私は血の気を引かせながらそう言った。
いや、そう言わざるを得なかった。だって荘園の主が「『ふぁんさーびす』のためだ」とか意味の分からないことを言ってきたんだもん…。しかもこれを引き受けないと追放するとか言われたし…。
というか、言われた側だってすごく困るよね…。
そう思って改めて目の前の人物、納棺師のカールさんを見ると眉をひそめながらこっちを見ている。
だけどカールさんは体をくるりと反転させると、そのまますたすたと歩いていった。
きっと社交恐怖のカールさんにこんなお願い失礼過ぎたんだろう。
………。
って!このままじゃ追放されちゃう…!
「カ…、カールさん待ってくださいっ!!」
血の気を引かせながら叫ぶようにそう言って後を追いかけた。
でも、カールさんは足が長いから歩くのが早いようで見失っちゃった…。
私の頭に「追放」の二文字がちらついて、白目をむいて焦りながらカールさんを探していると、不意に腕を掴まれた。かと思えばそのまま細い通路に引きずり込まれる。
そして壁に背中が付いたと同時に顔の横にガッと肘を置かれる。そして真正面にはカールさんの顔が……!
顔立ちの整ってるその顔でじっと見つめられどぎまぎしてしまう。だけどカールさんはそんな私に構わずいつもつけているマスクをずらした。
「…あまり、からかわない方がいいですよ。」
じっと目を見られたままそう言われる。だから私の顔に熱が集まってくる。でも、それが一気に引いて…
…いくより早く、カールさんは背を向けて歩いて行ってしまった…。
(め…、めちゃめちゃ怒ってるのでは…!?)