男性不信の女子がチョコレート渡してみた
「お前、その顔はどうした?」
プンプンと怒ったワルデンさんが去った後、新しく来たバッツマンことグプタさんがやって来て私の絵の具塗れの顔を見るや否や鋭い目付きをしながらそう言った。
「まさかお前、いじめられてるのか?」
「いえ、まさか!ちょっといろいろあっただけですよ。」
「いろいろ?」
「はいまあ…。というか、よくよく考えれば自業自得です…。
男性に女の子ように肌がキレイとかかわいいとか言うのは失礼ですもんね…。」
「お前、それを画家に言ったな?」
ず…、図星です…!
そういえば、ワルデンさんが去ったすぐ後にグプタさんがやって来たな…。ってことはたぶんプンプンと怒ってるワルデンさんとすれ違ったんだろうと推理してハハハと苦笑いをする。そんな私をグプタさんは呆れた顔をしながら「それはお前が悪い」と言い放ってきた。
それにしても…、グプタさんはこの荘園に来て間もないし、寡黙な人だからあまり話すこともなくってどんな人かいまいちわからなかったけど、私のこんな顔を見ていじめられてるのかだなんて気遣ってくれる辺りいい人なんだろうなぁ。
とはいえ、グプタさんにも例に漏れず出会ってすぐ退魔護符を投げつけちゃったんだけど…と自分自身に呆れ笑いをしながら顔に付いた絵の具を拭き取った。
「それにしても今日はなんだか荘園が騒がしいな。何かあったのか?」
……ああ、グプタさんはクリケット選手としてスポーツに打ち込んできたからか、はたまたこの地の人ではないからか“ばれんたいん”を知らないのかな?
そう思った私はちょうどいい機会だと思ってチョコを取り出す。そしてグプタさんの目の前に差し出すと、グプタさんはピタッと動きを止めて目の前に差し出したチョコを見ていた。
「今日はなんでも“ばれんたいん”だそうです。」
「“ばれんたいん”?」
「うーんと…、ざ…ざっくり言うと、女性が男性にチョコを渡す日ってところでしょうか?…グ、グプタさんもよろしければどうぞ。」
警戒されないようニッコリ笑いながらそう言うも、グプタさんはしばらくチョコを見てから私に視線を移し、その鋭い目でじっと見据えてくる。その視線に少しどぎまぎして冷や汗を垂らし始めたところでグプタさんはおもむろに口を開いた。
「施しは…困る…。
お前から悪意を感じないとしても、借りは作っておきたくない…。」
………な、なるほど…。
この荘園に来る人はそれぞれいろいろ事情を抱えてる。だからグプタさんもその例外ではないんだろう。
なら、そんな彼にいきなりチョコを渡すのも失礼なのかな…。でも、「施しは困る」と言ったグプタさんの表情に何か戸惑いを感じるような……
………あ!
「…『人に施しては慎みて念うこと勿れ』。」
私が突然言った言葉に、グプタさんは疑問符を浮かべた顔で私を見てきた。
「と…、突然すみません…。私の母国のことわざなんですが、『人に施しを与えたのならば、恩着せがましくならないようにとっとと忘れてしまえ』という意味でして…」
「………つまり?」
「その…、『施し』を与えた私がそのことを忘れてしまったのならグプタさんは恩を感じることなんてありませんし、借りなんて思う必要もないかなぁ…と思いまして…」
そう言ってみるも、うまく言えない自分にハハッと情けなく笑う。だけど、グプタさんはしかめっ面をしたその顔をほんの少しだけ和らげて手を差し出してくれた。
ずっと眉間にシワを寄せた顔しか見てなかったからこんな顔もできる人なんだと思いながらチョコを渡そうと近付くと……
……
……
………な、なんか思ったより近付いちゃったな…。
「~~~~~~~っ!!!?」
思ったより近かったことにより焦った私は声にならない声をあげながら右手を大きく開いて構える。そんな私の手をグプタさんは無表情ながらも冷や汗を垂らしながらギリギリと押さえていた。
「いや待てっ、お前から近付いてきたんだろ!理不尽すぎるぞっ!」
(この後この謎の攻防は数分続いたし、私の気絶という形で決着が着いた。こんな情けない私からのチョコでもグプタさんはしっかり受け取ってくれていたらしい。…たぶんいい人だ。)
※本編にまだバッツマン出てないのに書いちゃってごめんなさい!堪えきれませんでした…!
プンプンと怒ったワルデンさんが去った後、新しく来たバッツマンことグプタさんがやって来て私の絵の具塗れの顔を見るや否や鋭い目付きをしながらそう言った。
「まさかお前、いじめられてるのか?」
「いえ、まさか!ちょっといろいろあっただけですよ。」
「いろいろ?」
「はいまあ…。というか、よくよく考えれば自業自得です…。
男性に女の子ように肌がキレイとかかわいいとか言うのは失礼ですもんね…。」
「お前、それを画家に言ったな?」
ず…、図星です…!
そういえば、ワルデンさんが去ったすぐ後にグプタさんがやって来たな…。ってことはたぶんプンプンと怒ってるワルデンさんとすれ違ったんだろうと推理してハハハと苦笑いをする。そんな私をグプタさんは呆れた顔をしながら「それはお前が悪い」と言い放ってきた。
それにしても…、グプタさんはこの荘園に来て間もないし、寡黙な人だからあまり話すこともなくってどんな人かいまいちわからなかったけど、私のこんな顔を見ていじめられてるのかだなんて気遣ってくれる辺りいい人なんだろうなぁ。
とはいえ、グプタさんにも例に漏れず出会ってすぐ退魔護符を投げつけちゃったんだけど…と自分自身に呆れ笑いをしながら顔に付いた絵の具を拭き取った。
「それにしても今日はなんだか荘園が騒がしいな。何かあったのか?」
……ああ、グプタさんはクリケット選手としてスポーツに打ち込んできたからか、はたまたこの地の人ではないからか“ばれんたいん”を知らないのかな?
そう思った私はちょうどいい機会だと思ってチョコを取り出す。そしてグプタさんの目の前に差し出すと、グプタさんはピタッと動きを止めて目の前に差し出したチョコを見ていた。
「今日はなんでも“ばれんたいん”だそうです。」
「“ばれんたいん”?」
「うーんと…、ざ…ざっくり言うと、女性が男性にチョコを渡す日ってところでしょうか?…グ、グプタさんもよろしければどうぞ。」
警戒されないようニッコリ笑いながらそう言うも、グプタさんはしばらくチョコを見てから私に視線を移し、その鋭い目でじっと見据えてくる。その視線に少しどぎまぎして冷や汗を垂らし始めたところでグプタさんはおもむろに口を開いた。
「施しは…困る…。
お前から悪意を感じないとしても、借りは作っておきたくない…。」
………な、なるほど…。
この荘園に来る人はそれぞれいろいろ事情を抱えてる。だからグプタさんもその例外ではないんだろう。
なら、そんな彼にいきなりチョコを渡すのも失礼なのかな…。でも、「施しは困る」と言ったグプタさんの表情に何か戸惑いを感じるような……
………あ!
「…『人に施しては慎みて念うこと勿れ』。」
私が突然言った言葉に、グプタさんは疑問符を浮かべた顔で私を見てきた。
「と…、突然すみません…。私の母国のことわざなんですが、『人に施しを与えたのならば、恩着せがましくならないようにとっとと忘れてしまえ』という意味でして…」
「………つまり?」
「その…、『施し』を与えた私がそのことを忘れてしまったのならグプタさんは恩を感じることなんてありませんし、借りなんて思う必要もないかなぁ…と思いまして…」
そう言ってみるも、うまく言えない自分にハハッと情けなく笑う。だけど、グプタさんはしかめっ面をしたその顔をほんの少しだけ和らげて手を差し出してくれた。
ずっと眉間にシワを寄せた顔しか見てなかったからこんな顔もできる人なんだと思いながらチョコを渡そうと近付くと……
……
……
………な、なんか思ったより近付いちゃったな…。
「~~~~~~~っ!!!?」
思ったより近かったことにより焦った私は声にならない声をあげながら右手を大きく開いて構える。そんな私の手をグプタさんは無表情ながらも冷や汗を垂らしながらギリギリと押さえていた。
「いや待てっ、お前から近付いてきたんだろ!理不尽すぎるぞっ!」
(この後この謎の攻防は数分続いたし、私の気絶という形で決着が着いた。こんな情けない私からのチョコでもグプタさんはしっかり受け取ってくれていたらしい。…たぶんいい人だ。)
※本編にまだバッツマン出てないのに書いちゃってごめんなさい!堪えきれませんでした…!
11/11ページ