男性不信の女子がチョコレート渡してみた

あの後、例に漏れずバルサーさんの頬をひっぱたいてしまった私は、逃げるようにその場を後にした。そしてだいぶ走ってきたこの場で膝から崩れるようにして座り込む。

いつもしてくるからかいの延長線なのか…!?それとも変人だから大した意味はなかったのか…!?どちらにしても心臓に悪いっ!すっごい照れたっ!吐きそうだ…っ!!


「そんなところで何してるの?」


熱を持った両頬を両手で押さえながらうずくまっていると、背後からそんな声が聞こえてきた。バッと振り返ると、画家のワルデンさんが私を虫けらを見るかの如く見下している。


「…何その顔?君はただでさえ幸の薄い顔をしているというのにそんな今にも何か汚物を吐き出しそうな情けのない顔をして…。」

「ご…、ごめんなさい…」


…いや、何にも悪いことはしてないものの、なんだか見下しながらそう言われたものだからプルプル震えながら咄嗟に謝ってしまった。そんな私を見たワルデンさんは、なぜかわざとらしくゴホンと咳払いをする。


「ところで日本人の君は知ってるのかな?今日はバレンタインって言って、僕は全く興味ないけど女性が男性にチョコを渡す日なんだよ。僕は全く興味ないけど。」


………うん。クラークさんの時も思ったけど、男性から“ばれんたいん”の話を持ち出されるとなんだかとても気まずくなる。ワルデンさん本人が全く興味がないって言ってる上、高貴な身分の出身なのだからこんな幸薄顔の日本人が渡すチョコなんて欲しくないかもしれないけど……、





……結局気まずいのでチョコを渡してみた。


「ふ~ん。この包み紙のセンスは少し悪いかな。でも包み方は綺麗だから58点。」


……な、なんか点数付けられたんだけど…。しかもあんまりいい点数とは言えない。
密かにショックを受ける私に構わずワルデンさんは包み紙をごそごそと開けてチョコを取り出した。


「日本人は手先が器用だと聞いていたけど、ディテールとかの作り方が下手だね。このチョコには芸術の魂を、感じられないけど?」


……だ、だって、私芸術家ではありませんもの…。

そう思ってまたショックを受けていると、追い打ちをかけるように「26点」という点数を言い渡されて更にショックを受けた。

だけど、ワルデンさんはその点数の低いチョコを口に含んだ瞬間、「へぇ」と楽しげな声をあげた。


「意外。味自体は合格点だね。」

「ホ…、ホントですか!?」

「喜ぶのは早いんじゃない?合格点ってだけであって100点満点ではないよ。しかも総合すると67点ってとこだし。」

「う…っ。なんだかあと3点は欲しいんですが…。」


おずおずとそう言った私の言葉に、ワルデンさんはフッと笑う。


「君って意外と欲どしいんだね。でもまあ、君が僕に気の利いた言葉を言えるならお望み通りあと3点あげるよ。」


ワルデンさんはフフン、と私を挑発するかのように意地の悪い笑みを浮かべながらそう言った。
……といっても気の利いた言葉…。要はワルデンさんを褒めたらいいんだよね?となると…、私がワルデンさんに憧れてることを言えばいいのかな…。


「ワルデンさんは女の子のように肌がキレイだし、そこらへんの女の子よりかわいらしくてうらやましいです。」


ニッコリ笑いながらそう言った私はどうだと言わんばかりにワルデンさんの顔を見てみる。すると…、美智子さんの般若相のような恐ろしい形相をしたワルデンさんの顔が目に入った…。





(「君はたまに失礼だ!」とご立腹のワルデンさんに絵の具がべったりついた筆を顔面に投げつけられました…。)
※本編でまた画家が出てないのに書いちゃってごめんなさい…!堪えきれませんでした…!
10/11ページ
スキ