男性不信の女子がチョコレート渡してみた

な…、なんて心臓に悪い冗談だ…!

去り行くカールさんの背中を見ながらそう思って震えてた。
…とはいえ、カールさんにもいろいろ失礼は働いてるわけだから恨みを買ってるのかもしれない…。じゃあいつか本気で納棺させられるかもしれないな…。

そんなことを考えてると白目をむきながら震えたままハハハ…と力なく笑っていた。


「不気味だからやめなよそれ。」


突如横から聞こえたそんな声にビクゥと体を飛び上がらせた私は、その飛び上がった反動で横を向いて声の主を確かめる。すると、腕を組みながら壁にもたれかかって私を見据える探鉱者のキャンベルさんの姿があった。


「キャ、キャンベルさん!?いつからそこに!?」

「…そんなもの知ってどうするの?」


なんでこの人既に機嫌悪いのっ!?
そう思って震えを加速させるも、キャンベルさんは容赦なく私との距離を詰めてくる。だから私はこの場から逃れようと急いでチョコを取り出してキャンベルさんに差し出した。それを目の前にしたキャンベルさんはピク、と動きを止める。


「ば…っ、“ばれんたいん”とお聞きしました…っ!どうかお納めください…っ!」


目をキュッと瞑りながらそう言うと、しばらくの沈黙の後に「へぇ…?」というキャンベルさんの少し愉快げな声が聞こえてきた。その声におずおずと目を開けながら見上げると、口角をクイッと上げたキャンベルさんの顔が目に映る。


「……チョコだけで、気持ちは推し量れないから正直に答えてほしいんだ。」


突然そう言われて首を傾ける。だけどキャンベルさんは私をじっと見据えたままだ。



「本当の君は…、僕をどう思ってるんだ?」



……………。

……ど、どうって…。


確かにキャンベルさんは何を考えてるかわからないし、お金大好きだしパッと見た時にキレ顔してることがあるからちょっと怖い。
…でも、チェイス中に粘着しに来てくれるし、牽制型だからって無理にチェイスをする必要はないとか同じ牽制型の自分がいるからって隠密を提案してくれることもある。

……う~ん…、だからとどのつまり…ーー


「…い、いい人だと…思います……?」


こう言った瞬間、目を見開いてピキーッと固まるというキャンベルさんにしては珍しい表情をしていた。だけどそれはほんの一瞬で、すぐに表情を戻すとニッコリと笑う。

…うん、キャンベルさんがこうニッコリ笑うというのも珍しい。というか、申し訳ないけど正直不気味だ。
………と、というか…、青筋浮かばせてる辺り恐怖すら感じる…っ!



「『いい人』ね…。君にとって僕は所詮『いい人』か…。」

「ヒイイイィィィィーっ!!!」


そのニッコリ笑った不気味な笑顔で青筋増やしてくのやめてええぇぇぇーっ!!!





(後にマル姐に、こっちの国では「いい人」って失礼な言葉なのか聞いたら、「たぶんあんたの国でも男には言っちゃダメな言葉」って言われた。………なんで?)
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