男性不信の女子がチョコレート渡してみた

なんだかクラークさんのおかげでがんばれそうな気がしてきた!よくよく考えればエリスさんもなんやかんやで喜んでくれてた気もするしね。

…あ、でもサベダーさんはなんだか怒ってたっけ、と思い直した私はがんばれそうになってた気力が少し下がった。


そんな私の先を納棺師のカールさんが歩いてるのが目に入る。

………カールさん…、チョコ渡したところで受け取ってくれるのかな…。


『無理矢理渡されても…。』

『チョコなんて…、必要ありません。』


そんなことをゴミを見るような目で言い放ってるカールさんの姿が脳裏に浮かぶ。
……うん、これはなんだか難易度高そうだなぁ…。でも…、カールさんには普段から対人関係に問題を持つ者同士として気にかけてもらってる節はあるし、謝罪と感謝の意を込めて渡しておきたい気はする。だから意を決した私は、そろりそろりとカールさんに近付いていく。でも、近付いていく内に恐らくカールさんの対人警戒範囲に足を踏み入れてしまったんだろう。カールさんは突然バッと振り向いてきたもんだから私はビクッと体を振るわせた。


「………何か用ですか?」


う…っ!出た!あのゴミを見るような目…!


「ごごごごごめんなさい…!きょっ、今日は“ばれんたいん”と伺ったものですのでチョコを渡した方がいいと言われまして…!」


もうこの場から早急に立ち去りたい私は口早にそう言うと慌ててチョコを取り出してカールさんに差し出す。しかし、カールさんはそのチョコを受け取るでもなく不思議そうに見ていた。


「…生者の愛も僕にとっては、なんの意味もなさない。」


いらないのかなと思ってどこか安心していたらカールさんはおもむろにそう言い出した。
…な、なんというか、カールさんらしい言葉ではあるなぁなんて思ってハハッと笑いながら差し出したチョコをしまおうとしたら、社交恐怖であるはずのカールさんが眼前までやって来た。



「…だからこのチョコを意味あるものにするために、あなたを納棺させていただいてもいいですか?」



……………つ、……つまり…、



チョコのために私に死ねと…っ!?





(白目をむきながら震える私をにんまりと満足げに見下ろしたカールさんは、「冗談です」と一言言うとチョコを受け取ってその場を去っていった…。)
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