男性不信の女子がチョコレート渡してみた

ここまでのあらすじ:
女性たちに“ばれんたいん”だから男性にチョコを渡すようにと言われた。
もちろん男性不信だから無理だと断ったんだけど、男性不信を治すいい機会だなんて言いくるめられてしまって現在に至ります…。



そんなわけでちょうど傭兵のサベダーさんを見つけたので、恐る恐るチョコを差し出した。


「………す、すみません。日本人のくせにこちらの国の人の真似なんかして…」


おどおどしながらそう言うも、サベダーさんはじっと私を見てくるだけ。その視線がなんだか気まずくて冷や汗をタラタラと流し始めていると、サベダーさんはフゥと寂しそうにため息を吐いた。


「特に何もねぇ社交辞令なら受け取ろう。だが、気持ちの込めた物であるなら受け取れねぇ。
……もし俺がお前の大切なモノになった時、悲しませる訳にはいかないからな…。」


寂しそうな表情で、そして寂しそうな声でそう言うサベダーさんを見て私はあることに気付いた。

直接聞いたわけではないけど、サベダーさんは戦争に参加したことがあるらしい。察するにそこで散々様々な死に直面したんだろう。
そして今も傭兵という死と隣り合わせの職業だ。だから残された人のことを思ってそんなことを言うんだと思う。
…きっとこれは、彼なりの優しさなんだ。


私なんかがサベダーさんの心の中に入っていけるわけはない。そもそも男性不信の私がサベダーさんの大事な存在になれることもないだろう。
だからといってその切ない優しさを踏みにじるようなことをしてはいけない。

………なら、私に言えることは…ーー


「ーー大丈夫ですよ。私とサベダーさんは所詮同じサバイバー仲間といったところですし、思いっきり社交辞令ですのでお気遣いなくお受け取りくだ……ーーぶぇっ!?」


サベダーさんの不器用な優しさを尊重するために明るくニッコリ笑いながらそう言うも、最後まで言い終わる前にほっぺたをぎゅむっと鷲掴みにされた。それにより恐らくいつもよりもブサイクな顔になってるだろう私の顔をサベダーさんはジロリと見てくる…。
と、というか…、もはや見てるというよりギロリと睨んでるし、なんだか青筋がビキビキと浮かんできてるんだけど…っ!?


「所詮同じサバイバー仲間だとか思いっきり社交辞令だとかはっきり言われたら言われたでなァ~んか苛つくんだが…!」

「ななななっ!なんだかわかりませんがすみませんでしたああぁぁぁーっ!!」





(とりあえずチョコは受け取ってくれたけど、私のことを相変わらずじとーっと睨むように見据えながら青筋を浮かべ、わざとボリボリと音を鳴らしながら荒々しく食べてらっしゃるんですが…。…り、理不尽……っ!)
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