男性不信の女子がおすそわけしてみた

………い、


……一体、


……一体今、何が起こったのっ!?



クラークさんが去った後も状況が理解できてない私は大いに焦っていた…!

しかも!なんでクラークさんは私が過去を思い出してたことを知ってたの!?天眼!?お得意の天眼ですか!?ヒイイィィィーッ!!怖いイイィィィーッ!!私の考えてることはクラークさんには全部筒抜けってことなのおおぉぉぉ!?


そんなことを考えながら青ざめた顔で頭を抱えてブリッジをしていた。すると、目の前に「バウ!」と鳴く逆さのウィック君が現れた……って、逆さなのは私なんだった。

ウィック君に向き合うためバッと体を反転させて体勢を元に戻す。すると、ウィック君のすぐ横に黒いブーツが現れた。そのブーツの上をゆっくり見上げていくと…、苦笑いをしたポストマンのグランツさんがいるわけで……



「ヒイイイィィィィーッ!!!」



とんでもない姿を見られたショックと恥ずかしさから私は悲鳴をあげてしまった。


「グググググランツさん!いいいい今の!今の見ましたっ!?」


そんな私の質問にグランツさんは苦笑いをしたまま頷いたもんだから、私は声にならない叫び声をあげながら肩を大きくビクつかせた。


「ごごごごごめんなさい!お見苦しいところを見せてしまって!
これっ!口止め料としてっ!いくらでも取ってくださいっ!なんならこれ全部っ!持ってっていただいても大丈夫ですのでっ!」


深くお辞儀した状態でチョコレートが入った小袋をグランツさんに差し出す。顔こそ見えないけどグランツさんは困ったような声色で「ん~…」と言っている。

……こ、これじゃ足りないとか…!?

そう思って焦ってたけど、グランツさんは小袋にがさがさと手を入れたよう。その音にホッとしたのも束の間、頭をトントンと叩かれた。
何事かと思ってバッと顔を上げると、少し開いた口に何かが放り込まれる。その途端、ほろ苦く甘い味が口いっぱいに広がっていった。その味は間違いなくマル姐からもらったこのチョコレートだ…。

なぜ私がチョコレートを食べてるのか状況が理解できず頭に疑問符を浮かべまくっていると、眼前にグランツさんの笑顔が現れた。そしてグランツさんは笑顔のままウインクして口元に人差し指を置いた。



(ま…、まさか……!黙っててくれるということですか…!?)
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