男性不信の女子がおすそわけしてみた

ここまでのあらすじ:
マル姐が「私はこんなに食べたら太るけど、あんたはまだ若いんだから大丈夫でしょ」という謎理論で一口チョコレートをいっぱいくれた。
ちなみに「そんなに年変わらないよ?」と言うと、「ケンカ売ってんの?」と胸倉を掴まれて凄まれた。……怖かった。
(前回の金平糖?度重なるストレスで食べまくったからもうなくなっちゃった…。「男性不信の女子がおすそわけしてみた」)



かわいらしい小袋にパンパンに詰められた一口チョコレートを眺めてた私はおもむろに一粒取り出して食べてみた。

口の中でとろりと広がっていくほろ苦い甘さにゆっくり目を瞑る。そしてチョコレートを初めて食べた時のことを懐かしんでしまった。……このチョコレート同様甘く苦い過去だけど…。

すぐに溶けてったチョコレートがなんだか名残惜しくてもう一粒手に取…ーー


「おや?そんなところで立ち止まってどうしたんです?」


ーー…った瞬間、そんな声がしたもんだから少しびっくりしながら後ろを振り向くと、朗らかな雰囲気を醸し出す占い師のクラークさんがそこにいた。


「あ、ご、ごめんなさいっ!こんなところで立ち止まっちゃって!邪魔ですよね!」

「いえ、お気になさらず。
過去はふとした時に急に顔を出すものですからね。それがいいものにしても悪いものにしてもたまには浸ってあげることが大事ですから。」


さ…、さすがは占い師だなぁ…。重みがあってなおかつ安心させるような言葉のチョイス……


……

……


……って、アレ?


「クラークさん、なんで私が過去を思い出してたことを…「あっ、チョコレート溶けちゃいますよ。」


私の言葉を遮ってそう言ったクラークさんの言葉にハッとする。そして指で摘まんでたチョコレートを見ると、私の体温で表面が少し溶けだしてきていた。


「あ…。ちょっと溶けちゃって…ーー」


指先にねちょっと張り付く感覚に思わず出てきた言葉を言い終わる前に不意に掴まれた手首。もちろん私の手首を掴んだのはクラークさんなわけだけど、それを理解するのが追い付く前にクラークさんは私の指先をパクっと咥えてしまった。


「少し苦いですねこのチョコレート。」


指先から口を離し、ぺろりと舌を出したクラークさんはそう言う。


「早くあなたが苦々しい過去から解放されますように。」



(微笑みながらそう言ったクラークさんはそのままその場を去ってしまった…。)
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