「か…壁ドンしてください……！」


私は血の気を引かせながらそう言った。
いや、そう言わざるを得なかった。だって荘園の主が「『ふぁんさーびす』のためだ」とか意味の分からないことを言ってきたんだもん…。しかもこれを引き受けないと追放するとか言われたし…。

というか、言われた側だってすごく困るよね…。
そう思って改めて目の前の人物、「囚人」のバルサ―さんを見ると、「壁ドン…？」と言いながらきょとんとしている。

…もしかして、壁ドン知らないとか？
そう思ったけど、何かに気付いたかのように「ああ！」と言った。


「とりあえずそこの部屋にでも行くといいさ。私はその隣の部屋からこのバットで壁をドンっと叩いてや「あの…、それ違う壁ドンです。」


どこから取り出してきたのかわからないけどドヤ顔でバットを構えてたバルサ―さんにおずおずと突っ込んでおいた。
そして荘園の主からの指示だということも含めて説明した。


「今はそんなものが流行ってるのか。あと『ふぁんさーびす』とは何だ？」

「私も聞きたいです。」

「まあ追放されるのはかわいそうだから手伝ってやるさ。さあ壁に行ってくれ。」


そう言いながら私を壁に追い立てるので、急いで壁に向かった。
するとバルサ―さんが近付いてきて、顔の上に肘をついた。そして頭を支えながらニヤニヤとして私を見ている。
な…、なんか気だるげで少し色っぽい…。


「どうだ？これで胸がキュンとするのか？」

「そ…、そうですね…。心臓を鷲掴みにされてそのまま握りつぶされそうなほど苦しいです…！そして呼吸も思うようにできません…！」

「それは絶対胸がキュンとしてるわけじゃないな。」



（ストレスによる動悸なので早く医者に診てもらうべきだと教えてくれた…。エミリー助けて…！）