嫌いなあいつ(傭兵)
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「今日はもうやる気がないんです。」
俺の目の前にいる変態紳士は、ヘアァ…と独特のため息を吐いている。……こいつ本当にやる気がないらしい。窓枠に座ってだらしなく頬杖をついている姿を見てそう察した。
「そうかよ。じゃあ今日は優鬼なんだな。」
「ええ。もう負けでいいのでどうか早く解読終わらせてください。
…ああ、でも頼む相手間違えましたね。貴方解読がすっごく遅いんでした。」
「…信号銃ぶっ放してからタックル決めるぞクソ野郎。」
余計な一言を言う変態紳士に思わず青筋が浮かんだ俺は中指を立ながらそう言ってやったが、変態紳士は何も気にしていないらしい。その証拠に鼻歌を歌いながら目の前でくるくる回ってやがる。……クソ。すっげぇムカつく。
思わずギリギリと歯を食い縛りながら回り続ける変態紳士を睨んでいると、不意に変態紳士は「そういえば」と話し出してきた。
「退魔師とかいう職業のお嬢さん……、ああ、確か名前は【名前】さんでしたね。彼女から写真は受け取りましたか?」
何を言われるかと思いきやそんなことを言われ、俺は思わず目を細めた。
「なんでお前が知ってんだ?」
「だって、彼女ったら健気でかわいらしいじゃないですか。」
腹が立つことに変態紳士は俺の質問に要領を得ない返事をしてくる。だがキッと睨みつけてやると、「ヘァ」とため息のようなものを吐いてからようやく口を開いた。
「前回のゲームで【名前】さんとチェイスしていた時、貴方のあの写真を拾いましてね。なんだこれ?と言いながら眺めてたんですけど、忌々しい貴方が映ってたのでとりあえず切り裂こうとしたんです。
そしたら【名前】さん、『ダメ!』と叫びながら私に向かってきて写真を取り上げたてきたんですよ。わざわざ戻ってきてまでして。」
「は……?」
「だからせっかくなので背中を切り裂いてやったんです。でも腹立たしいことに、背中をざっくり切り裂いたというのに痛がるどころか写真を見て安心したような笑みを浮かべたんですよね。」
腹立たしいですよね~、と変態紳士は続けていたが、俺はそれどころじゃなくなった。
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「ヒイイイイィィィィ―ッ!!?なななななななな何のご用ですか傭兵さあああああんっ!!?」
そう叫びながら必死に逃げる退魔師を俺は無言で追いかける。
……それにしてもあいつ、華奢な体つきのくせに思ったより足が速い…。すぐに捕まえるつもりだったがこれは本気を出せねばともう少し足に力を込める。それにより退魔師に追いつくことはできたが、なんだかムカついたので何ともない顔をしながら並走してやった。しばらくは顔を青くしながら何かをブツブツ言っていた退魔師だったが、突如として真横に俺がいることに気が付いた退魔師はビクリと大きく肩を振るわせた。
「キャアアアァァァァーッ!!?」
ただでさえ青くなっていた顔をより一層青くさせながらそう叫んだ退魔師はよほど驚いたのか、前に手を突き出しながら顔面からその場にこける。……ビターンという間抜けな音付きだ。正直すげぇダサい。
とりあえずこれは見るに堪えないと感じた俺は、退魔師に近付いて両手首を掴み上げるとそのまま体を引っ張って立たせてやろうとした。だが、それよりも早く額にでかいたんこぶを作った退魔師はガバッと起き上がると、俺の顔を見るなり目を見開いた。
「……っ、はっ、………っは…っ、……っひっ」
明らかに呼吸が乱れて始めたかと思いきや、突然大量の冷や汗をかき始める。先程までのバカみてぇな展開とは一変し、顔に恐怖の色まで滲ませてきた退魔師がさすがに心配になってきた。。
「や……っ、やっ……っ!」
「おい、」
「お願いです…っ!お願いします……っ!許してください……っ!」
「おい!」
「ごめんなさいごめんなさいっ!私が悪いですごめんなさ…──」
「おい退魔師!!」
そう声を荒らげ、掴んだ手首ごと体を揺らす。すると我に返ったらしい退魔師は、ハッとした顔をすると恐る恐る俺の顔を見上げた。
「……悪かった。起こそうとしただけだ。」
「…………………………そ…っ、
…その……っ、離れていただいても……?」
謝罪を受け入れてもらえなかったことにより思わず苛立った俺は「は?」と言いながら青筋がビキビキと浮かばせる。一応笑顔こそしてるつもりだが俺の顔は退魔師にとってよほど怖かったらしい。「ひいっ!?」と短い悲鳴をあげると肩を大きく振るわせた。
「いやあ、悪かったなァ…!あんたが目の前でみっともなく転けたもんだから放っておけなくってなァ……!
まあ?ちなみに言うと?あんたが転けたのは俺が声掛けただけであんたが逃げ出したことによるもんだけどなァ……!? 更に言うとこうやって手首掴んでんのはあんたからの妙な攻撃を防止のためだっていうのもご存知かァ……!? そもそもいっつもいっつも意味わかんねぇ攻撃してきやがってるのもご存知かァ……!? その度に俺は内臓が潰れそうな程の痛みに襲われてるのもご存知なのかァ……!?」
「ごごごごごごごごめんなさあああああいぃぃっ!!!」
青筋こそ浮かんではいるもののどうにか笑顔で言い終えた直後、退魔師は白目をむきながらプルプルと震えつつ謝ってきた。だが、俺はこの謝罪を受けた途端、なんだかため息を吐いてしまった。