1.元後輩たちが上司になって現れた件について
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「……ん? ……ここは…?」
起きてすぐこそは寝ぼけてわからなかったけど、頭が冴えてきたことによりここは医務室だとわかった。
だけどなぜ自分が医務室で寝ているのかがわからない。頭でも打ったんだっけ? それになんだかとっても長い夢を見ていた気がする。
そんなことを考えながら閉められていたカーテンを開けてみる。すると気のせいだろうか……、顔を向けた先にはまるで私が出てくるのを待ちわびていたかのような笑顔をしているコビー君と、顔だけこちらに向けてだらけながら椅子に座っているヘルメッポ君の姿が目に入ってきた。
………とりあえず、私が持ち得る限りの速さでシャッとカーテンを閉めた。
………いや、あれは気のせいだ。きっと気のせい。絶対に気のせい…!
どうにか納得できる答えを見つけ出せた私はもう一度カーテンを開けてみる。
「【名前】さん──」
もう一度、持ち得る限りの速さでカーテンを閉めた。
なんだか冷や汗が滲んでくる。だけど、まだ気のせいだと思い込んでいたい私はもう一度カーテンを開いてみた。
「目が覚め──」
……また、持ち得る限りの速さでシャッとカーテンを閉めた──
──けれど!
「【名前】さん!大丈夫ですか!?びっくりさせてごめんなさい!開けてもいいですか!?」
“剃”で来たんだろうか? 一瞬にしてこちらへ移動してきたコビー君が無情にも閉められたカーテンの向こうから話しかけてきた。
ああ、思い出してきた。コビー君とヘルメッポ君のことを思い出していた矢先、2人がこの支部に来たこと。それから2人が当分この支部に滞在するんじゃないかってなって動揺のあまり気絶してしまったこと──。
そこまで思い出すとなんだか頭が痛くなってきて、片手で頭を抱えながら大きなため息を吐いた。だけどこのままこの中にいるわけにもいかない……。そう悟った私は頭を押さえながらカーテンを開けた。
「大丈夫ですか【名前】さん? まだ気分が悪いですか?」
「……いえ、大丈夫です。ところで、お二人はなぜここに?」
「倒れた【名前】さんが心配だったので。基地長への挨拶も終わりましたし駆けつけてきました。」
「まあ、基地長への挨拶の前にお前をここに運んだのはコビーだけどな。あ、そうそうよかったなァ【名前】。お前、昔『お姫様抱っこされてみたい』って言ってただろ? 今日その願いが叶ったぞ。なんせコビーがお姫様抱っこでお前のことをここまで運んできてたんだからな。」
「ヘルメッポさん!!」
うわあぁぁ……、マジかぁ…。
まるで追い打ちをかけてくるかのようなヘルメッポ君の発言に顔が赤くなるよりも冷や汗が再び滲んできた。というかヘルメッポ君……、私でも忘れていたようなそんな話よく覚えてたね。その話のせいで私の気まずさは最高潮だ。「もう!」と軽く怒ってるコビー君も顔が真っ赤だし…。
もうここは一刻も早く2人から離れるべきだ。そう結論付けた私はおずおずと口を開いた。
「お手数をおかけして申し訳ございませんでしたコビー大佐。」
「いえいえ!とんでもない!何もないのなら本当によかったです。」
「ご心配おかけしました。では、私はそろそろ……その、仕事も残っていますのでお先に失礼させていただこうと思います。」
「え? でも、今起きたばかりなのに無理はしない方が……」
「いえ、だからこそ遅れを取り戻さないといけませんので。」
「だけど、それでまた倒れたら元も子もないですよ!」
仕事を理由にすればどうにか脱出できると思っていた。だけど……、存外に手強い……!
予想外の展開に心の中で「ひえ~!」と悲鳴を悲鳴を上げていたその時、「ん~」と怪訝そうな声をわざとらしく漏らしたヘルメッポ君がおもむろに口を開いた。
「【名前】、お前見た目も随分と変わったけど、中身も随分変わったなァ。昔は敬語なんて全っ然使えなくってボガードさんによく怒られてたのに、すっかり使えるようになっちまって。……なんか距離感じるなァ。」
この瞬間、私は思わず目を見開いた。
……そうか。2人にとって“私”とは、敬語が苦手で2人と一緒にいたあの私のままなのか。
でも、もうすっかり敬語も使えるし、2人に会うのは気まずくなっているわけで。あの頃の私なんて今はもうどこにもいない。
そんなことを考えるとなんだか悲しいような切ないような……そんな気分になって胸がズキンとした。
「……と、とにかく私、失礼しますね。」
その痛みのようなものを感じてからはなんだかもういたたまれなくなって。2人の顔もろくに見ないでくるりと身を翻すと、まるで逃げるような気持ちで出口に向かおうとする。だけど──
「待って!」
──コビー君に
この瞬間、私は恐怖して全身から血の気をひかせた。
実は私、背後に立たれることが大の苦手だ。……否応なく、数々の嫌な夜を思い出してしまうからだ。