2.
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「──ざっとこんなものですかね。」
「そうですね。」
ヘルメッポ君には「2時間はかけてこい」と言われたけど、2人で探したおかげで早く探し終えた。話していたことを考慮しても実際は1時間もかからなかったんじゃないだろうか。何か言われるかな、と一瞬思ったけどヘルメッポ君の魂胆はなんとなく分かった。よって何も言われないだろう。そんなことを考えて軽くため息を吐く。
「それにしても……、なぜかヘルメッポさんからは2時間はかけてくるよう言われたんです。アレ、どういう意味なんでしょうか?」
一方で、未だに嵌められたことに気が付いていないコビー君はそんなことを言いながら疑問符を浮かべている。これには思わず二度目の苦笑いをしてしまったものの、私のこの苦笑いの意味をわかっていないコビー君は今度は私の顔を見ながら疑問を浮かべた。
まあ、もうこれには触れない方がいいだろう。そう思った私は「さあ?」と適当に流しながら集めた資料の中でも重たそうな物から順に手に取っていく。だけど、突如として持っているはずの重たさが消えてきょとんとした。バッとコビー君の方に顔を向けると、相変わらずヘルメッポ君の件が腑に落ちないのかう~んとうなりつつも持っている資料の上に更に資料を積み重ねているコビー君の姿が目に入る。もちろんその資料たちは、元々私が選りすぐり持っていた重たい資料たちなわけで、私は思わずぎょっとした。
「コ、コビー大佐!? 何してるんです!?」
驚き焦ったあまり声が裏返る。だけど、そんなこと気にしていないんだろうコビー君は呑気にも「ん?」と声を漏らしてこちらに視線を向けた。
「【名前】さん、別にこんなところまで気を遣ってくれなくていいですよ。今となっては僕の方が力持ちである自信があるし!」
「いえ、そうではなく。上官に重たい物を持たせるのはいかがなものかと……」
「でも、女性に重たい物を持たせる方がいかがなものかと……。」
そう言ってきょとんとしているコビー君に、なぜかドキッと胸が高鳴った。
今、コビー君は私のことを「女性」として扱ってくれた……ということだろうか……? それを再認識してしまうと、なぜか心臓がまた高鳴った。
「あ!もしかしたら全部持てるかも!」
なぜこうも心臓がいつもより大きく音を鳴らしているのか──、私がそれを理解できなくて戸惑っている内に、当のコビー君は資料を全て持とうと試みていたらしい。それに気が付いてハッとした。
「ぜ…っ、全部はさすがに申し訳ないです!」
「気にしなくっていいのに。」
そう言いながら笑うコビー君の笑顔が眩しく感じる。一体どうしたのだというのだろうか私は。そう思いながらも「まさか」という心当たりはあった。だけど……、それはきっと違う!絶対に違うから!そう自分に言い聞かせながら数点の資料をコビー君から受け取った。
ああ、よかった部屋が薄暗くて。続いてそんなことを考えながらコビー君の後に続いた私は資料室を後にする。だけど、薄暗い廊下を横並びで歩くことになった際には、なんだか気まずかった。だって未だに心臓はいつもより少し大きな音を鳴らしているのだ。おまけにコビー君も何もしゃべってくれないからだんだんと気まずくなる。
何か振れる話はなかったかな──、焦るあまりぐるぐるとし始めた頭をフル回転させて話題を考える。すると、ふいに浮かんできたのはコビー君が昔話してくれたシェルズタウンの「リカちゃん」の話。もうすっかり焦りに焦っている私は何も考えていなかった。
「リカちゃんには会えましたか?」
そう言いながらコビー君の顔を見た瞬間、目をぱちくりとさせたコビー君とばっちり目が合ってしまう。その目を見ながら冷や汗を一筋垂らした私は、心の中で泣きべそをかきながら「違う!!」と自分を叱責した。
いや、だって、「リカちゃん」の話は好きだったけど!今や「海軍の英雄」と言われており忙しいコビー君が“東の海”に行く時間なんてまずないわけで。なんでこんな話を振ったんだ!? もうちょっとちゃんと考えるべきだった──!!
そう後悔したけれど、コビー君はやっぱり優しかった。
「懐かしいですね~!今は海軍の給仕として働いているって話ですけど、なかなかシェルズタウンには行く機会がなくて……。リッパーさんや皆さんも元気かなァ? ……って、よく覚えてましたねこの話!」
こんな雑な話の振りにもちゃんと答えてくれるコビー君が優しすぎる──。密かにじーんと心打たれながらも表面上は取り繕って笑顔を浮かべる。
「リカちゃんのお話、とても好きだったんですよ。ほっこりするというかなんというか……」
「そう言ってもらえるととてもうれしいです。」
「へえ。なんだか置いて行かれた気分です。僕たち2人ともコーヒーが苦手だったのに。でも、【名前】さんが淹れてくれるならチャレンジしてみようかな?」
「ああ~…。やめといた方がいいですよ。私が淹れるコーヒーはゲテモノなので。」
「またまた~。そんな謙遜しなくっても──」
そこまで言ったコビー君は突如として持っていた資料をバサバサと床に落とす。これには思わずビクッと体を震わせた私はコビー君を見ると、コビー君は笑顔のままながらも大量の汗をかいて固まっていた。これに再び体を震わせたものの、慌ててコビー君に駆け寄った。
「ど、どうしたの!? 大丈夫!?」
「【名前】さん…、失礼なことを伺いますが……、もしかしてその……、「上手に淹れてくれる方」って……、こ…、恋人………?」
我ながら器用にも顎で資料を支えながらハンカチを取り出し、コビー君の大量の汗を拭おうとした──その瞬間にこんなことを聞かれてきょとんとする。でもしばらく経つと思わずクスっと笑ってしまった。だって、あのコビー君もついに恋愛とか興味持つようになったのかと思うとちょっと面白いと思ってしまったのだ。まあ、失礼だろうから口には出さないけれど。
「いませんよ恋人なんて。」
そう言いながらコビー君の頬や額の汗を拭う。……まあ、実のところ、汚い私には恋人なんてできやしないだろう──。同時にそんなことを考えて顔が曇りそうになる。だけど、取り繕うように微笑みを浮かべておいたため、コビー君には心の内がバレずに済んだらしい。コビー君は安心の笑みを浮かべながら、は~…とため息を吐いている。