堅物同士の恋心(傭兵)


20220214大作戦ネタ
オ名前

この日の為に。
男性サバイバーから、ありとあらゆる情報を集めた。
女性サバイバーからは、アドバイスを沢山教授願った。
ずっとずっと好きだった。
最近ではサバイバーの数も増えたのもあって、サベダーさんと挨拶する事も無い日だってあった。
彼は貴重な救助職のため、色々な人とゲームの作戦を立てたりするし、傷を癒すために早々に部屋に帰る事も。

たまたまバレンタインデーはどうするのか聞かれ、まだ何もと答えると、
マーサさんが呆れ顔で貴方達まだだったの?信じられないわー。と言い、可愛い子が荘園に増えて来たわよ……。早く気持ちを伝えないと……ね?と頬を撫でられたのがきっかけ。
みんなの事は好きだけど、目の前でサベダーさんの彼女になったら嫌いになりそう。
後悔する前にやれる事はやろうと思った。

うん。……あんまり重くない方がいいよね。
普通の箱に普通のチョコレートを入れた。
まだ見ぬ彼女に嫉妬していた割には、逃げ道を作る私は情けないと思う。
分かってはいるけど……。仲間以上の関係にはなれないとは言われたら正気を失いそう。
でも……サベダーさんからしても、気の無い女からプレゼントを貰っただけなのに、大泣きされたら困るよね……と自分を納得させた。

――――――――――――――――――

「はい、出来上がり。」

ナイエルさんから鏡を手渡されて、いつもとは違う顔に驚いた。

「……変じゃないですか?」

「ええ、勿論。とっても可愛いわ。これで据え膳なら奴にはブツは付いていなかったとでも思って頂戴?」

「据え膳?ブツ?って……?」

「ふふふ、帰って来たら教えてあげる。……あ、忘れていたわ。」

シュッと香水をふってくれた。

「さあ、行ってらっしゃい?[#dn-1#]さん。」

と化粧をして貰い、甘い匂いをまとって温室に向かっていた。サベダーさんはいつも寝る前に温室に寄ってから寝てるらしいので、待ち伏せる事にしてどこで待とうか考えながらドアを開けた。

「……[#dn-1#]?」

「あ……、サ、サベダーさん、こ、こんばんはっ。」

「っっよう。」

サベダーさんはドアを開けたすぐの階段に座っており、頭の中が大パニックを起こしていた。

「あ……、あの。……チョコレート受け取って下さい。」

恥ずかし過ぎて色々言おうと思っていた言葉な無くなり、無難に包んだチョコレートを座っていたサベダーさんにそのまま差し出した。

告白とか無理っ、そんな度胸ないしっ、やっぱり無理っっ。

「こ、高エネルギーを身体へ補充する点においてチョコレートはとても優秀な食べ物だ、から、
それを俺にくれるとは有り難い。」

「……高エネルギー?補充……?」

「と、とりあえず有り難い……って事だ。」

「受け取ってくれるんですね、……嬉しいです。」

そんなものいらないって言われなくて良かった。
安堵したも束の間、なんとも言えない空気にいる事に気が付いた。

「……………………。」

「……………………。」

「…………あの、戻りますね。お時間取らせてしまってすみません。温室でどうぞごゆっくりされて下さい。」

「……?[#dn-1#]がここに呼んだんじゃないのか?アユソから子猫ちゃんが呼んでいると聞いたんだが?」

「いえいえいえ。私は、サベダーさんは寝る前に温室に寄るから、ここで待っておこうと思ってたんです。」

「………………そこかっ。」

手軽な石ころを急にサベダーさんが低木の方に投げたかと思うと「あっぶねっ」と聞こえた。

「……いやーすまねえなー。たまったま温室に居たら2人がはいってくるんだもんなー。」

エリスさんを筆頭に、ズラズラ数名のサバイバーが低木から出て来て素知らぬ顔で温室から出て行っていた。
マーサさんが凄い剣幕でサベダーさんの胸倉を掴んでいて向かおうと思っていたらダイアーさんが肩を叩いてきた。

「[#dn-1#]さん、深呼吸よ。この気持ち、このタイミングをみすみす逃したら後悔するわ、きっと。」

ダイアーさんはニコリと微笑み皆が退出したところで、私は深呼吸していた。

「……すまない。」

「……え?……あ、いえ、私こそすみません。」

あ……、謝られた?反射的に私も謝ったが、瞳には涙が滲んできた。

「あ、気にしないで下さい。私、戻りまっっ。」

けたたましい心音と体温を感じて、勢いが良かったためか少しだけぎゅっと押さえ付けられてるかのように痛い。
…………私、サベダーさんに抱き締められている?

「違う……言葉が……その。チョコレートは嬉しかった。[#dn-1#]からもらうチョコレートは嬉しかった。
……それに、今日は、その、可愛くして、俺に会いに来てくれたと思ったら、……その、すまない。」

「私は……今のこの状況が嬉しいです。あ、あのっ。」

「待て。……俺から言わせてくれ。……[#dn-1#]、ずっと好きだった……付き合って欲しい。」

「っっっ私もっ、ずっとずっと、ずっと好きでしたっっ。」

とめどなく溢れる涙を慌てて拭ってくれる無骨な指は、震えながらも優しく、そして温かかった。


(終)



女子会に呼ばれて参加したはいいものの、この話題は避けられなかった。

「[#dn-1#]はナワーブとどこまでいったの?喧嘩とかしてない?困ってることある?」

マーサさんはニコニコしながら聞いてきたのに対し、私は言葉を濁すことに集中していた。

「あの、えっ……と。……喧嘩とか困ってることはないです。」

「そう?どうせナワーブの事だから恋人らしい事してないと思ってたんだけど……。[#dn-1#]?」

「ううっっ、ご、ごめんなさいっ。」

平静を装っていても、心配で心配で堪らなかった。
バレンタインデーの日に抱き締められたっきりスキンシップも愛の言葉もない。
デートをした訳でもないし、お互いの部屋にすら行き来した訳でも、2人だけの時間を過ごした訳でも……。

「あんの肉壁野郎っ。あの時訳わかんない言葉言ってたからもっと気持ち込めて優しく接しろと怒ったのに……。」

先程までのにこやかな女子会は背筋が凍るほど、怒りが感じ取れて、申し訳なさも加わり涙が止まらなくなっていた。

「やっぱり据え膳を食べなかったしブツが不能なのかもしれないわねー?確かめるためにも、[#dn-1#]さんのお手伝いをみんなでしてあげましょう?」

ナイエルさんの一言で、一番ドーヴァルさんがいい顔で笑っていた。

「その手のものは私はよく知っているから、みんなは協力して欲しいのだけれども。」

不安でいっぱいだったものが、少しだけの心配と、みんなが力を貸してくれたので元気が出た。

「仲間でしょ?水臭い事言わないでよね。」

マーサさんは私をギュッと抱き締めてくれた。



次の日から私はナワーブさんを避けていた。

「いい?押してだめなら引いてみるの。」

「押されてもない場合は……。」

「とにかく引いてみる!やってみるの!必ず誰か女子と一緒にいるのよ?」

「マーサさん、わかりました。頑張ってみます。」

女子とぺったりついて、話しかけられそうになったら自然な流れでトイレや部屋に向かったり、
やたらとご飯にはタンパク質が鬼のように出て来て、謎の飲み物(ドーヴァルさん作)は毎日みんなに配られていた。
疲労回復の効果が期待できる調合に成功したと言っていたので気にせずみんなは飲んでいた。
「鹿の角が……断罪狩人……少しくらいなら……。」と独り言が聞こえたのは流石にとめた。
あとはナイエルさんから化粧を毎日してもらい、いい匂いに毎日包まれて生活していた。

ナワーブさんとは目が合う回数も増えた気もする。
困った事は、嫌われないかとかの心配と、隣で女子が守ってくれるものの、やたら男子から声をかけられる事が増えて、なんならハンターからも声をかけられたりする事も増えた事。
何とかホワイトデーが明日に迫り、私達は最後の女子会を開いた。

「[#dn-1#]、良く頑張ったわね。さぞかし肉壁は[#dn-1#]の良さを噛み締めたと思うわ。
何人かは[#dn-1#]がメロメロにしていたからね。」

自信満々に言うマーサさんにやはりずっと心配だったのでオロオロしていた。

「え?……でも嫌われ……てないですかね。」

「そこは大丈夫でしょう。据え膳を食わない恥が話しかけれなかっただけで別れるだなんて

そんな事許されないわ。」

後ろから肩を叩かれたが、怖くてナイエルさんの顔は見ることが出来なかった。
……そう言えば、据え膳って何なんだろう。

「これは皆から。明日の勝負服。……ああ、安心して。明日は[#dn-1#]さんゲームないから。
皆で話し合って選んで決めたから……着て貰えるととても嬉しいし、[#dn-1#]さんの想いが伝わる事を願っているわ。」

ニコリとジルマンさんが微笑みながら紙袋を手渡してきた。
じわじわと瞳に涙がたまってきた。

「み、皆さん、ありがとうございます。わ、私、頑張りますっ、皆さんの協力を、無駄にしないように、頑張ります。」

「もー、[#dn-1#]は水臭すぎ!ほら涙拭いて、乾杯しましょ?明日の成功を祈って乾杯しよう!」

カチンとグラスがなり、私は温かい気持ちに包まれて明日を迎えた。

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朝起きてシャワーを浴びて、紙袋に手を伸ばすと…………。下着までご丁寧に入っていて服は胸元がざっくり開いたドレスで、スリットまで開いていた。

「こ、これ……私着るの?」

いつものブラウスとスキニーに目をやったが、みんなの気持ちが込められているのに……反故なんて出来ない。
さっと勢いで着替えて、ドーヴァルさんから貰った緊張を和らげる為の小瓶にはいった液体を飲み干した。

……よし。

その後すぐにナイエルさんが部屋に入ってきてお化粧と髪の毛をセットしてくれて、最後にシュッと香水を振りかけてくれた。

「ふふ、この香水は私が作ったの。差し上げるわ、[#dn-1#]さん。」

「ありがとうございます。」



朝ごはんを食べに恥ずかしいけど、マーサさんに手を引かれ食堂に着くとみんなの視線が刺さった。

「あ……変ですよね。」

「っっそ、そ、そんな事ない。……綺麗だ。」

キャンベルさんが俯きながらポソリと呟いていた。

「勿論よ、なんせ今日はホワイトデーだし、ハンターの的になってもらおうって魂胆なのよ。[#dn-1#]を狙いたくなるでしょ。こんなに可愛いくて、優しいのに、セクシーな格好でゲームに参加するんですもの。
……もしかしたらハンターから愛を貰っちゃうかもね?」

マーサさんの言葉に一気に男性サバイバーから怒号が飛び交っていた中ですぐ近くで声が聞こえた。

「子猫ちゃん、……今日は一段と……そのすごくセクシーだね。」

いつの間にか隣にいたカヴィンさんに声をかけられていた。

「あ……ちょっと恥ずかしいですけど。」

急に頭がフワフワしてきて、ポーっと身体が熱い。……変かも。

「スリットが何処まで入っているのかな?」

ツゥっと指が太ももをなぞり、私は変な声を漏らしていた。

「っっっあん……だめぇですっ。」

「行くぞ。」

聞きたかった声が聞こえたと振り返ろうとしたが叶わず、私はそのままナワーブさんに担がれて食堂を出ていた。

「……[#dn-1#]は今日はゲームないし、ナワーブとは恋人よ?…………不潔ね。」

数名前かがみになっていた男達を哀れみは感じるものの、不潔に変わりないとマーサはその様子を睨みつけた。
…………まあ毎日性欲を促進させるような食事、飲み物、匂いを提供していたから被害者なのではあるけど。



「サベダーさんとお話するのはなんだか久しぶりですね。」

フワフワする脳をフル回転させて話しかけた。
確かに緊張は解されている気もする。

「避けるのは我慢出来るが……他の男に色を使うのは許せない。」

「サベダーさんは、私の事本当に好きなんですか?私は好きで好きで堪らなくて、もっとお話したい、もっとスキンシップとって欲しいと思ってたのに、サベダーさんは私の事、嫌いだからっふにゃああ。」

無機質な部屋はサベダーさんの部屋だと気が付き、私はベッドに投げられていた。

「……どれだけ大切に我慢していたと思うんだ?それなのに胸の谷間やブラチラさせて、この白い太ももを他の男に見て欲しかったのか?
それとも……ハンターに襲われたかったのか?」

「違いますっ、サベダーさんに見てもらいたくてっっ、……触って欲しくて……襲って欲しくて…。」

「っっ後悔するなよ、[#dn-1#]。もう別れたいとは言えないからな?

ナワーブって呼んだら……襲ってやる。」

もう既に私に覆いかぶさり、今にも襲い掛かりそうなほどの様子なのに、私の言葉を待ってくれていた。

「……ナワーブさん、……きてっ。」

(終)
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